ミシガン･アベニューを挟んで、ちょうどミレニアムパークの向かい側にある『The Gage』は、イギリス発祥のGastropubです。最近シカゴでも話題になってきている「ガストロ・パブ」とは、パブのようなカジュアルな雰囲気でありながらサービスの質は高く、様々な調理法と食材を駆使した、本格的な料理を味わうことができるレストランのことです。その立地条件の良さからビジネスマンや学生、そして観光客など様々な人でいつもにぎわっています。店名の由来はレストランが入っている建物をはじめ、シカゴ界隈にある数々のビルを1890年から所有していた豪富、「ゲージ・ファミリー」にちなんでつけられたそうで、店内には婦人帽子屋を営んでいたゲージ家の肖像画が飾られています。

店内は、工場を改築した古きイギリスのパブをイメージしていて、レンガ造りの壁やアルムニウム素材にみたてた天井、さらにライティングされた内窓など、インテリアにもこだわりを感じます。地下にはプライベート・バーを備えた、100人まで利用可能なゴージャスなパーティルームもあり、ミーティングやイベントなどを盛り上げてくれそうです。

初の美食パブメニューに期待を膨らませつつ、まずはアペタイザーからOyster Selectionをトライしました。ニューイングランド産とカナダ産、そしてシアトル産の3種の牡蠣が一度に楽しめるサンプラーは、アメリカ内陸部で食べられる牡蠣にしてはかなり新鮮です。特に、シアトル産の『Kumamoto』という小ぶりの牡蠣は、身がしっかりしまっていて牡蠣そのものの甘みを充分に堪能できます。オイスターはシーズンによって値段や内容が違うので、オーダ時に確認してください。

盛り付けが美しいTuna Tartareは、シラントロときゅうりのみじん切りが入っているサッパリ風味のタルタル・ステーキです。マグロの新鮮さを引き立たせるため余計なソースはかけずに、ガーリック・オイルとたっぷりのパルメザンチーズでシンプルに頂きます。上には黒いトビコをのせてあり、見た目はまさにキャビアのようでなんとも贅沢な気分にさせてくれます。パリパリのラボッシュと一緒にお召し上がりください。

メインに頼んだDuck Leg Confit and Roaster Breastの焼き加減は、ミディアムでお願いしました。適度に脂がのった胸肉は弾力がありジューシで、コクのある鴨肉の味わいがしっかりと楽しめます。モモ肉はホロホロと崩れるほど柔らかく、アップルシロップと玉ねぎを使ったキャラメルソースが良く合います。付け合せのSpring Squash Gratineeは、スクワッシュの自然な甘みを感じる優しい味付けのグラタンです。

オーナのジョンさんが一番に勧めてくれたMusselsは、インドのスパイスをブレンドしたVindalooソースで味付けしたムール貝です。貝の旨みと様々なスパイスがブレンドされたコクのあるソースは、後からジワジワくるスパイシーさがクセになりそう。薄めに焼かれたカリカリのバゲットは程よくガーリックバターがきいていて、ソースとの相性も抜群です。

Caramelized Lobsterもシグネチャー・メニューのひとつですが、こちらは珍しいLemon Quinoaという南米の穀物が使われています。キヌアはアメリカでも栄養食品として注目されていて、シトラスのような爽やかな風味とプチプチした舌触りが特徴です。甘辛いキャラメルソースを吸ったキヌアと、プリプリとしたロブスター、そこに爽やかなバジルのアクセントが加わり、甘さ、酸味、辛味、旨みなどの味覚をバランスよく刺激する奥深い一皿です。

パブメニューの代表ともいえるToday’s Fish and Chipsもお見逃しなく！ウォッカとビールを使った衣は、ふっくら＆サクサクの食感がたまりません。厚みのある白身魚はしっとりと柔らかく、酸味の効いたタルタルソースが良く合います。ビネガーを少し垂らすとサッパリ感がさらにアップして食べやすくなりますよ。新聞紙風のラッピングが雰囲気を盛り上げてくれます。

さて、デザートですが、可愛らしい鉄鍋で焼かれたBittersweet Chocolate and Beet Souffleは、アツアツのうちにスプーンで真ん中にチョコレートソースを流し入れます。砂糖がけのビーツと一緒に頂きますが、ビーツが苦手な方にはちょっと不思議な組み合わせかもしれません。残念ながらスフレはちょっと重ためで、チョコレートケーキに近い口当たりでした。焼きあがるのにオーダしてから少なくとも15分はかかるので、早めに注文しておくことをお勧めします。

肩肘はらない雰囲気の中で、美味しいお酒と食事を楽しむというガストロ・パブのコンセプトは、居酒屋に通じるものを感じました。斬新な味付けとこだわりの食材を使ったメニューの数々は、飽きのこないものばかり。「食」を楽しむ大切さを思い出させてくれるガストロ・パブは、日本人にぴったりのお店と言えるのではないでしょうか。

(12/22/08)

かなり新鮮な3種の牡蠣が一度に楽しめる、Oyster Selection	盛り付けが美しいTuna Tartareは、マグロの新鮮さを引き立たせるため余計なソースはかけません	コクのある鴨肉の味わいが楽しめるDuck Leg Confit and Roaster Breastと、グラタン
貝の旨みと、様々なスパイスがブレンドされたコクのあるソースがたまらないMussels	珍しいLemon Quinoaという南米の穀物が使われているCaramelized Lobster	パブメニューの代表ともいえるToday's Fish and Chipsは、ウォッカとビールを使った衣がふっくら＆サクサク
チョコレートケーキに近い、ちょと重たい口当たりだったチョコレート・スフレ	こんなに立派なパンが最初に運ばれてきます	サンドウィッチ・メニューも充実しています
工場を改築した古きイギリスのパブをイメージしている店内	テラスもあります。	プライベート・バーを備えた、100人まで利用可能なゴージャスなパーティルーム