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シカゴの学校・教育・お稽古・英会話:継承語としての日本語について

継承語としての日本語について

「継承語としての日本語を考える母の会の集い」報告
時 2003年12月10日 1時――3時
場所 ミツワ商店多目的ホール

I. はじめに
継承語とは親の話していることばを次の世代、子供達に伝えることです。アメリカ人の中には日本語を習う人々が少なくないがその場合の日本語はビジネスのためとか、日本の文化(漫画なども含めて)を習うための目的をもっていますが、「親の言葉を継承する」とは言いません。親が日本語を話すときに子供が日本語を習うときに継承語教育といいます。日本語に限らず、ほかの言葉でも次の世代に伝えるときに継承語とよびます。

日本に住んでいたら日本人の日本語(国語)教育はそのまま継承語教育となっています。外国にいると現地語が日本語以外の言語なので、たとえば英語なので、放っておくと日本語は消滅して、子供の使用言語は英語だけになる可能性が大なのです。かつてはアメリカに在住していた日本人の中には、積極的に日本語を忘れて英語だけにして、言葉も文化も徹底的にアメリカに同化する道を取った日本人もおられました。

自分の世代だけで日本語を終わらせていいのだろうか、日本語を教えておいた方が自分や日本の親戚と話すときに都合が良いのではないだろうか、会社に就職するとき便利かも知れないし、日本の文化を学ぶときに役立つかもしれない、などといろいろな思惑があるでしょう。普通の親なら日本語を失うよりも日本語をできるならキープしたいとおもう方が自然ではないでしょうか。もし日本語を子供に残したいならどのような方法とかがあるのでしょうか。

II.「継承語としての日本語を考える母の会の集い」
これらの問題と取り組んでおられる方々が中心となって、周りの人々に呼びかけ、18人の人々が12月10日(水)午後1時から3時までアーリントンハイツのミツワ商店の「多目的ホール」に集まり、講師の安納恵子さんと質問と答えという形で「継承語としての日本語を考える母の会の集い」を持ちました。18人の内の大部分は国際結婚家庭の主婦の方でした。将来継承語を引き受けるはずの子供達も近くで遊んでいてかわるがわるベビーシッターをしながらの継承語教育現場直結の会でした。

質問は10個もあり、紙面の関係でここで一つ一つは取り上げられませんので、いくつかに限ります。第1に私達は「育児」に熱心で、子供達を叱咤激励しますが、子供達から見て、尊敬できる親の言語なら学ぶ気にもなりますが、親が尊敬できないとき、親の言語も尊敬できるはずがないのです。まず尊敬される親となるために「育児」だけでなく自分を育てる「育自」に心がけることが大切です。たとえばアメリカの文化、政治などを子供たちよりも知らないようでは、子供の尊敬を勝ち得ることはできないかもしれません。第2に現在の2つの言語の環境を積極的に捉えること。英語が悪いとか日本語が悪いとか言わず、この環境の中で継承語教育を考えていく。協力に不足な夫がいてもその中でどうしたら教えていけるかを考える。第3に継承語の受け手である子供達はひとりの人格であるから親のやり方を押し付けない。子供にあったやり方を考える。第4に自然に日本語習得ができるような雰囲気をつくりあげる。たとえば、日本語の本を読み聞かせる、日本語のビデオテープを一緒にみて感想を話す、日本語のプレイグループに参加する、身近なものを日本語で言ってみる、とか工夫すればいくらでもあるのです。第5に同じ問題をもつ人々と交流して、情報交換、問題解決のヒントをつかむ。この一つが当日の目的だったのです。第6に昔の国際結婚の妻や長期滞在の家庭の主婦とくらべると、現代の母親は配偶者と比較して負けない教育も能力もあるので、日本語や日本文化を伝える意欲だけでなく、夫の協力が多少不足していても自分でやっていこうとする強さももっていることが強く感じられました。

もっとたくさん話し合いましたが、自分だけが問題にかこまれているのではなく、たくさんの仲間がいるのだ、ということがわかっただけも、この会はとても有意義でした。このような会を計画、実行してくださった方々のおかげで、大変有意義な会となりました。

III. 感想
  セミナー後、ふたりの方が感想を書いてくださいましたので、合わせて報告させていただきます。Aさんはアメリカに来て初めての方です。「米国に来て1年です。息子の教育について悩んでいたところでした。アメリカにいるので、英語を身につけさせたいと考えていましたが、日本語を基礎とした教育も必要ではと感じました。子供に日本語を教えつつ、私は英語を身につけるという課題があります。」 Bさんは学校の先生です。「日本の文化、伝承遊びを伝えることはとても重要だと考えています。このセミナーからも、その重要性がわかり、広くクラスの意義を見つけることができました。」

文責 安納 義人

 
     
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