スポーツ観戦の醍醐味。それは、歴史的快挙に自分が立ち会えることにある。これほどまでにメディアが発達した時代に「生き証人」は少々オーバーな表現だが、実際に観客席から自分の目でその瞬間を見届けた時の興奮はテレビで見るそれとは比べものにならない。地響きのような歓声やフィールドを包む空気は絶対にそこでしか味わうことができない。
今季で言えば、7月23日のシカゴ・ホワイトソックス対タンパベイ・レイズの一戦。ホワイトソックスの先発、マーク・バーリ投手が完全試合を成し遂げたのだ。こちらでは「パーフェクトゲーム」と呼ばれるこの記録は、ヒットはもちろん、四死球などでも走者を出さずに3アウト×9イニング=27人の打者で試合を終えて勝つことを意味する。前回は5年前の2004年5月18日にランディ・ジョンソン(当時アリゾナ・ダイヤモンドバックス)が成し遂げているが、100年を超える歴史をもつメジャーリーグにおいてバーリは17人目という極めて珍しい記録となった。
もちろん、スポーツ観戦の醍醐味はそれだけではない。後世に名を残すような選手のプレーを目の当たりにできるのもその一つだ。
後世に名を残す。その基準は、引退後に野球殿堂(HALL OF FAME)に入るかどうかが大きく関係してくるが、このほど、老舗スポーツ総合誌「スポーティング・ニューズ」が発表した「この10年のベストプレーヤー」は、殿堂入り確実、もしくは、その可能性の高い選手たちが選出されている。ポジション別でピックアップされた次に記す11人は、いずれも2000年から今季までの10年で際立った成績を残してきた球場に足を運ぶ価値のある選手たちだ。
◆捕手・・・ジョー・マウアー |
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(ミネソタ・ツインズ) |
◆一塁手・・・アルバート・プホルス |
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(セントルイス・カージナルス) |
◆二塁手・・・ジェフ・ケント |
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(ロサンゼルス・ドジャース、08年引退) |
◆三塁手・・・アレックス・ロドリゲス |
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(ニューヨーク・ヤンキース) |
◆遊撃手・・・デレク・ジーター |
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(ニューヨーク・ヤンキース) |
◆外野手(3人)・・・バリー・ボンズ |
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(サンフランシスコ・ジャイアンツ、08年以降プレーせず) |
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・イチロー・スズキ(シアトル・マリナーズ) |
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・マニー・ラミレス(ロサンゼルス・ドジャース) |
◆指名打者・・・デービッド・オーティス |
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(ボストン・レッドソックス) |
◆先発投手・・・ランディ・ジョンソン |
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(サンフランシスコ・ジャイアンツ) |
◆中継ぎ投手・・・マリアノ・リベラ |
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(ニューヨーク・ヤンキース) |
* 注・チーム名は今季もしくは最後の所属先
この中から「この10年の最優秀選手」として選ばれたのはプホルスだ。01年にデビューして以来、ここまで残した数字は素晴らしいの一語に尽きる。メジャー史上ただ1人、デビューから9年連続打率3割&30本塁打&100打点をマークし、生涯打率・334は現役選手ではイチローを抑えて堂々の1位(9月27日現在)。パワーヒッターでありながら確実性も兼ね備えた21世紀最強打者と言っていい。
将来性を買われたのは捕手のマウアーだ。今季6年目ながら、06、08年に続いて早くも3度目の首位打者を手中に収めようとしている。その非凡な打撃センスが決め手となったわけだが、ニューヨーク・ヤンキースのホルヘ・ポサダやボストン・レッドソックスのジェイソン・バリテックら、リーグを代表するベテランを抑えての選出は異例とも言える。
ここにイチローが入っているのは同じ日本人として誇らしい限り。01年に新人王&リーグMVPの同時受賞、04年は年間262安打のメジャー新記録樹立、今季は史上初の9年連続200安打達成。今回の選出は打撃成績が重視されている中、優れた守備力をもつ者に与えられるゴールドグラブ賞を昨季まで8年連続で獲得しているのはイチローだけ。走攻守を兼ね備えた唯一の存在でもある。
メジャーリーグは10月からプレーオフに突入するため、今年はここに挙げた選手たち全員のプレーを見ることは難しい。しかし、来年は野球に興味のない読者もぜひ彼らのプレーを生で見て欲しい。後世に語り継がれる『伝説』になる可能性をもった選手たちには、きっと人々を魅了する“何か”があるはずだから。
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