日本は国民皆保険制度によって、国民健康保険、健康保険組合、共済組合、社会保険などの分類がありますが、全ての国民が何らかの健康保険を持ち、その掛け金は収入額に応じて負担します。そして、その補償は全国一律で、保険で医療を受けることに不安を感じる日本人はほとんどいないでしょう。
しかし、米国は全く違います。米国の医療保険は、原則的にメディケアとメディケイドという高齢者や低所得者を対象とした公的保険を除いて、一般市民は民間営利企業である保険会社から医療保険を契約して購入することになります。これは、日本で任意自動車損害賠償保険を契約し、購入するのに似ています。掛け金が高い程、補償が良いのも似ています。
免責額(ディダクタブル)が設定されていて、病院など医療機関に受診した場合にも免責額に達するまでは保険は全く補償せず、患者(被保険者)が診療費を全額支払わなければいけません。そして免責額に達した後も、補償は80%や70%といった具合に契約によって違います。しかもその80%などの割合は保証されていません。医療機関が保険会社に診療費の請求を出した後、保険会社からの補償内容明細(EOB)の書類が患者に届いて初めて実際の補償の内容が判ります。
大規模調査の結果、米国人の41%が医療費の支払いに問題を抱えていると報告されています。そして米国の個人破産の60%以上が医療費が原因であり、医療費が原因で破産した人のうち75%は医療保険に加盟していた事が判明しています。医療保険を持っていて保険で医療を受けても、保険会社が必要な補償を履行しない場合は患者の医療費支払い額が増加し破産するのです。
USA TODAYによると、2010年の米国の家庭の医療保険の年間費用は平均1万5千ドル(178万5千円:$1=119円)となっています。月額1250ドル(14万8750円)です。ディダクタブル1000ドル、カバー率80%といった一般的な保険だと、夫婦と子供1人の家族で月額2000ドル程するのが現状で、異常に高額です。補償は恣意的なのに、こんなに高額な医療保険の掛け金はどこに行ったのでしょうか。
2013年度の調査で6社の保険会社のCEO(最高経営責任者)の年収が公表され、aetnaのCEOは年収が30.7ミリオン$(約36億5千3百万円)で、1日の給与が9万ドル(約1071万円)でした。ウエルポイント社は17ミリオン、センテネ社は14.5ミリオン、シグナ社は13.5ミリオンと6社中5社のCEOが米国平均年収$35,239(約419万3441円)を超える金額を1日で受け取っています。
米経済誌ビジネスウイークに掲載された「何故、保険業者は勝つのか」という記事で、保険会社が政治的活動へ出資した金額が紹介され、2007〜2008年の金額は、Blue
Cross/Blue Shield: $3,125,921、UnitedHealth
Group: $1,568,634など億単位の金を使っていることが判明しています。
貴方や貴方の会社が支払った医療保険の掛け金の大半は、保険会社の役員や社員の給与、施設や設備の費用、政治活動費、広告宣伝費、その他の経費に加え、保険エージェントの取り分などに消え、一部が補償の為に運用されているのです。
社会保障として国が管理し、税金を投入しても医療費を補償してくれる日本と違い、米国では一般営利企業である保険会社が運営しており、彼らの第一の目的は自社の利益ですから、被保険者・患者の補償は蔑ろにされているかのようです。
米国医師会(AMA)倫理委員会の委員長Matthew Wynia氏らが、米国の医師700人に「保険の決まりがあるために、患者に役立つ医療サービスを提供しなかったこと」があるかを調査した結果が発表されています。結果は、ときどきある:23%、しばしばある、または、非常にしばしばある: 8%でした。合計すると31%の医師が、患者の保険の補償範囲を根拠にして、患者に提供する情報やサービスを制限しており、患者は意思決定プロセスの機会を奪われ、最善の医療を受けていない可能性があるのです。
それ故に、米国では優秀な医師の多くは保険会社のネットワークに入らず、保険会社の恣意的・一方的な補償に囚われずに質の高い医療サービスを必要に応じて提供できる環境を整えています。米国は医療費が高額ですから、病院に行く時はネットワーク内の方が経済的負担は少なくて済むかも知れません。しかし、それは医療の質という点ではマイナスなことに繋がる事もあり、保険頼みで医療機関を選択することは賢明とは言えないのがアメリカなのです。
カイロプラクティックが一般的な医療保険で補償されることは、米国の医療保険の数少ない利点ですが、カイロは西洋医学と比べて安価で費用対効果が優れており、保険のネットワーク内に拘る必要性は低いといえます。また、保険の補償が悪い場合は、自費治療にした方が保険を使うより安く済むこともあります。