(掲載日:11/11/2024)
今回は「大人の遠足」と称して、以前から気になっていたロンググローブにあるワイナリー「Valentino's
Vineyard & Winery」へ行ってきました。ロンググローブのダウンタウンから車で約5分ほど東へ進むと、整然と並ぶ広大なブドウ畑が広がり、その丘の上にワイナリーがあります。ブドウ畑の風景はまるでカリフォルニアのナパバレーを彷彿とさせる美しさで、本当にちょっとした遠足気分を味わえました。
オーナーのルディさんは、ワイナリーを経営する前はデベロッパー(建設・地域開発者)として地域の土地を購入し、住宅を建てる仕事をしていました。彼はイタリアからシカゴに移住してきた祖父母のワイン作りを9歳の頃から手伝っていた経験もあり、いつかは自分のワインを作りたいという夢を持っていました。そこで、理想的な土壌を持つであるロンググローブの土地を手に入れ、この「Valentino's
Vineyard & Winery」をオープンしたそうです。カリフォルニア産のブドウを取り寄せて醸造する選択肢もありましたが、ルディさんの理想に見合うものがなかったため、ブドウの栽培から自社で始める決心をしたそうです。約20エーカーの広さのブドウ園には20種類以上のブドウが栽培されており、年間約60ガロン、約300本分のワインを生産しています。また、最高品質を目指して土作りにもこだわり、ウドンコ病の防止には牛乳を水で薄めて散布するなど、すべての工程で有機栽培を徹底しています。完熟したブドウはすべて手摘みで収穫され、丁寧に茎を取り除いた後、バレル(樽)で4から6ヶ月かけてじっくりと熟成させています。
住宅を改装してできたワイナリーは、まるで親戚の家にいるかのような親しみやすい雰囲気で、リビングルーム、そして奥には長テーブルが置かれた広いテイスティングルームが備えられています。今回の土日のみに開催されるバインヤード・ツアーに参加したのですが、小さなワイナリーにもかかわらず、約25名もの参加者がいておどろきました。
お客さんが揃うと、ルディさんが一行を外に案内し、ツアーの開始。植物の成長に最も大切な栄養素は窒素なのだそうで、この窒素を空気中から取り入れて土壌に供給してくれるのがクローバーなので、クローバーは土を肥やす上で重要な存在なのだそうです。そのため、クローバーが茂る芝生は青々としていて、そのおかげでブドウの木もさらに元気に育つのだと教えてくれました。そんなこだわりの土作りの詳細からブドウ栽培方法、ブドウの種類、醸造過程までを学んだ後は、いよいよお楽しみのワインテイスティングです。
テイスティングでは5種類のワインが用意されており、ルディさんの奥様がグラスに注いでくれます。早く飲みたいところですが、試飲を最高に楽しんでもらうために、ルディさんの説明をしっかりと聞いてから、「いいですよ」という合図があるまで待たなければならず、まさに“鍋奉行”ならぬ“ワイン奉行”ぶりを発揮していました。
今回のテイスティングは、Seyval Blancという白ワインから始まりました。アルコール度数は序盤からやや高めですが、梅酒のような親しみやすい味わいが特徴です。続くPort
Whiteは、深みのある黄色味がかった色合いで、ブランデーのような豊かな香りが印象的。ルディさんによると、この白ワインはエビなどの海鮮やチーズとの相性が良いそうです。3番目のChianti
Reserveは、柔らかな味わいの赤ワインで、パスタやきのこ料理にぴったりとのことでした。4番目のSignature
Labelは、数種類のワインをブレンドしたもので、鼻をくすぐるフルーティーなブドウの香りとほのかな甘み、ピリッとした辛味が絶妙に調和しており、肉料理に合いそうです。最後のPort
Redは、アルコール度数18%の甘めの酒精強化ワインで、デザートワインとしてチョコレートやチーズケーキとのペアリングが勧められました。
〈テイスティングの注意点〉テイスティングではワインのみの提供で、水やクラッカー、チーズなどは含まれていません。お水は別料金ですので、持参されることをおすすめします。チーズ&フルーツプレート(1人
$18)は、事前に電話での予約が必要です。実際に注文されている方もいましたが、一人では食べきれないほどのボリュームがあり、かなりの量でした。
ワインツアーやテイスティングで、情熱を持って丁寧に説明するルディさんの様子からは、彼のワイン作りへの深い愛情と誇りがひしひしと伝わってきます。あまりのワイン愛ゆえ、説明を聞いていない人がいると少し不機嫌になる場面もありましたが、職人としてのプライドと正直な人柄が垣間見え、微笑ましく感じるひとときでもありました。全体的にこちらのワインはアルコール度数が高めですが、手間をかけて熟成されているため、まろやかな味わいと豊かな香りを楽しめます。また、防腐剤である亜硝酸塩を添加していないため、ワインを飲んだ後にありがちな頭痛が起こりにくいのも魅力。気軽な日帰りアクティビティとしておすすめのスポットですので、気分転換やデートに訪れてみてはいかがでしょうか。