（掲載日：02/17/2025）

　シカゴ・ダウンタウンの中心部に位置する「Russian Tea Time」は、2025年でオープン31周年を迎える老舗のレストランです。店内には、深紅のベルベットカーテンや半円形のソファ、重厚なマホガニーの家具が配置され、ブラス製のシャンデリアが温かな光を放っています。さらに、マトリョーシカやロシアを象徴する装飾品や人形も飾られていて、どこか懐かしいクラシカルな雰囲気が漂っています。

　席につくと、分厚いメニューが運ばれてきました。この日のお目当てのAfternoon Tea Serviceには、「Classic Tea Service（$44）」と「Queen Tea Service（$69）」の二種類があるので、まずはベーシックな「Classic Tea Service」を選びました。スタッフによると、ロシアやウクライナ地方の郷土料理を存分に楽しめる「Russian Tea Time Platter（$75 for 2）」もお勧めとのことでしたので、こちらも合わせて注文しました。通常、ティーサービスやプラッターは一人分ずつ提供されるのですが、サーバーさんに「皆でシェアしたい」と相談したところ、快く承諾してくれただけでなく、シェアしにくいアペタイザーは単品注文すると良い、などのアドバイスを親切にもしてくれました。

　ティーサービスでは、まず最初にお茶の種類を選びます。今回はお店のシグネチャーのハウスティーをお願いしたところ、ロシア風の素敵なグラスカップで提供されました。ハウスティーはふわっと広がるダージリンの香りが印象的なブラックティーで、渋みは控えめながらも深いコクがあります。まずはストレートでじっくりと味わい、その後ミルクを加えて楽しみました。しばらくすると、ティーサービスの三段トレーが登場。一番上のプレートにはアフタヌーンティーに欠かせないスコーンがのっています。スコーンは表面がサクサクで中はしっとりとしていて、ジャムとクロテッドクリームをたっぷりつけると、さらに紅茶と合います。二段目はチキンクランベリーとエッグ、スモークサーモンの3種類のサンドイッチ、それにザワークラウトのクレープがのっています。チキンクランベリーは、甘みと塩気のバランスが素晴らしく、卵サンドやサーモンサンドもそれぞれ具材のハーモニーが絶妙でした。一見、春巻きのようにも見えるザワークラウトを包んだクレープは、ふんわりとした生地に包まれた野菜の甘みと、ザワークラウトの酸味が見事に調和しており、今回の一番のお気に入りになりました。その下のデザートプレートには、オレンジシロップが染み込んだスポンジケーキや、栗のような濃厚な風味が特徴の胡桃型の焼き菓子、チョコレートケーキ、緑色のフロスティングがたっぷり乗ったカップケーキ、それにツリー型のバタークッキーなど、その時々の季節感たっぷりのラインナップ。どれも結構甘さがしっかりとしていますが、コクのある紅茶との相性も良く、つい手が伸びてしまいます。

　「Russian Tea Time Platter」は、最初にアペタイザーの盛り合わせが運ばれてきます。Beef Pelmeni（牛ひき肉入りの饅頭）は、炒めた牛ひき肉が詰まった手作りの饅頭で、サイドのキャロットサラダと合わせて食べるのがお勧め。Potato VarenikiとLatkesはどちらもジャガイモを使った料理ですが、Varenikiは茹でたジャガイモのもちもち感、Latkesはカリッと焼かれた香ばしさが際立っています。ビーツサラダは、まるでお漬物のようなさっぱりとした一品なので箸休めにぴったり。Chickpea PasteやTabouliは、色鮮やかで爽やかな風味があり、いくらでも食べられそうです。アペタイザープレートには、野菜を中心に8種類の料理がぎっしりとのっているので、正直、これだけでも十分な内容なのですが、さらにボリューム満点のメインの盛り合わせが運ばれてきました。しっとりと柔らかく仕上がったChicken Kebabは、驚くほどにジューシーで、Beef Stroganoff（ビーフストロガノフ）はマッシュルームの豊かな旨味の中にディルの爽やかさが効いています。Stuffed Cabbage（ロールキャベツ）もしっかりと煮込まれており、驚くほど香り高いKasha（そばの実のお粥）や、付け合わせのピラフが進みます。ティーレストランで、こんなに沢山のロシアやウクライナの伝統料理を堪能できると思っていなかったので、正直、期待以上の内容に驚きと嬉しさで一杯になりました。

　同店の料理やスイーツは、家庭的な温かみのある味わいで、どれもボリュームがあり、満足感がありました。また、東欧の家庭に招かれたようなフレンドリーなもてなしや居心地の良さが印象的で、長年この地で愛され続けている理由が、実際に訪れてみてよくわかります。オーナーはウクライナ出身のMuchnik親子。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった当初は、お店が誹謗中傷の対象となるなど苦しい時期もあったそうですが、訪れた際には、そうした困難があったとは思えないほど安定した賑わいを見せており、安心しました。ロシアやウクライナ地方の豊かな食文化と本格的なお茶を体験できる素敵なお店ですので、「Russian Tea Time」でその魅力をぜひ実感してみてください。

ロシア風の素敵なグラスでサーブされるシグネチャーのハウスティー。ダージリンの香りが印象的です	三段プレートで運ばれてきたClassic Tea Service	スコーンは表面がサクサクで、中はしっとり。ジャムとクロテッドクリームをお好みでつけます
二段目のプレートにはチキンクランベリーとエッグ、スモークサーモンのサンドイッチ、ザワークラウトのクレープがのっています	色鮮やかで、甘いケーキやクッキーがのった三段目のデザートプレート	Russian Tea Time Platterのアペタイザープレートには、8種類の前菜がぎっしりとのっています
単品でも頼んだBeef Pelmeni（牛ひき肉入りの饅頭）はサイドのキャロットサラダと合わせて食べるのがお勧め	Russian Tea Time Platterのメインのお皿にも様々な料理がたっぷり。ボリューム満点です	クラシカルな雰囲気が漂う店内には、ノスタルジックなロシアの装飾品がいたるところに飾られています