●バンフ・アッパー・ホットスプリングス
カナディアンロッキーは温泉の宝庫。レイクルイーズや、大氷原など見る所も盛りだくさん。そんなロッキー国立公園観光の拠点となる一番の繁華街といえば、やはりバンフです。そう、あの大橋巨泉さんのお店もあるあそこです。ロマンティック派の女性にはたまらないお城のようなバンフ・スプリングス・ホテル、マリリンモンローの映画「帰らざる河」に登場するボウ河。そんなバンフにもあるんですねぇ、温泉が。しかも街からほんの10分ほどの距離に。
実はカナダの国立公園制度というのは、このサルファー(硫黄)山で温泉が発見された時から始まったらしい。100年以上も昔の事、カナディアン鉄道会社の職員だったマッカーデルとマッケイブの二人が「おーい!温泉を発見したぞー!」と主張。これが国中の注意を引き、1885年にカナダ最初の国立公園として「バンフ国立公園設立」につながったというわけ。しかしながら、このおじさん達が主張するず?っと前から、カナダの原住民さん達はこの温泉を神聖な水として利用していたそうですが。どちらにせよ、この温泉は長い間たくさんの人に愛され続けているというのは事実。
入り口で入場料(夏は$7.50)を払い、ロッカールームへ向かうと、なかなかきれいな内装。タオルも水着もレンタルできる。が、この水着がなんとも興味深く、なぜか1920年代の古いデザインの水着。つなぎの重量挙げ選手のようなアレです。そりゃ着るのははずかしいでしょう、だーれもこのレトロ水着を着ている人はいませんでした、、、まぁ、もしよろしければ思い出話のひとつにどうぞ。思い出といえば売店では「バスソルト」なる物が売っていて、まぁ温泉のもとのような感じです。おみやげにどうぞ。
温泉、といえども温水プールといった感じ。20メートルくらいのプールに世界中からの観光客が集まり、みんなで肩までつかっている。聞こえてくるのは英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語、ほんとにインターナショナル。泳ぐ人はほとんどなく、小さな子供が遠慮がちにぱしゃぱしゃするくらい。しかし、眺めはいい!いやぁ、最高!温度は低め(35度?39度くらい)、温泉の水は無色透明で匂いもなく、サングラスをかけてぼーっと浸かっているとなんだかもう眠くなっちゃいそう。プールの一部は浅~い作りになっており、横になる事ができる。20センチくらいの深さなので、ゴローンとした時に、あなたの体の線がしっかり浮かび上がり・・・自信のない方はやめときましょう。
温泉からあがって、着替えるともう体もぽかぽか、心もぽかぽか。そんなに熱いとは感じない程度の温度でも、しっかり温泉効果は出ているようで、お肌もすべすべだし、なんとも気分がいい。ゲストハウスにあるデリで冷たい飲み物を買って飲んでいたら、アラ、店番してるのは日本人の男の子でした。「ワーキングホリデーなんですよ。スキーが好きなんで」というかわいい少年。いいですねぇ、若いって。そういえばバンフはスキーヤーにも人気のある街。ゲレンデで疲れた身体を温泉で癒す、青春だなぁ。
●ミエッテ・ホット・スプリングス
バンフ国立公園とならび、カナディアンロッキー観光でたくさんの滞在者を魅了するジャスパー地区。ダウンタウンから1時間ほど北に運転し、かなり狭い山みちをどんどんのぼって行くと、そこがミエッテ温泉。途中たっくさん登場する「熊に注意」のサインが気になります。そうなのです、ジャスパーはロッキー内でも一番多く熊に遭遇する場所。ハイキングなどには、熊避けベルやペッパースプレーは必需品。しかし筆者は熊には会わず、そのかわりにたっくさんの野生の山鹿たちに出会う事に。彼等も温泉が好きなのか、温泉ロッジの近くにながれるあたたかいお水をすすっていました。
ミエッテも水着着用の温泉。お金を払う($6・25)とすぐに「裸足になって」と言われる。床を汚さないため、らしいけど、女性のみなさん、ストッキングは履かないでいった方がいいですよ。ロッカールームは市民プールの脱衣所という感じ。消してお洒落ではないけど、なんだかそこがまた日本のしなびた温泉にいるようで味がある。温泉プールはふたつ。35度くらいのぬるめと、40度くらいのあつめ。いったりきたり、の〜んびりとできる。ちょっと身体をびっくりさせたかったら、少し離れた所にある冷水プールへ。いや〜、これがほんっとに冷たい!よくロシアや北欧のおじさん達が、サウナに入ってたっぷり汗をかいた後、凍るように冷たい湖に飛び込んで「なにが楽しくてそんなに自分を責めるの?」という事をしているが、それとまったく同じ原理。ミエッテ温泉でも、この冷水プールを利用しているのは、そんなおじさん達でした。何語だかわからないけど「しびれる!
さむい!」と叫びながら、跳ねるように温泉プールへと戻っていく。そんなおじさん達をみるのは、ひょっとして熊に遭遇するより楽しかったかも。
バンフのアッパー・ホット・スプリングより贅沢さはないが、それなりに温泉気分を満喫できるミエッテ温泉。ロッキー山脈内では最も熱く、最高水温は摂氏59度まで達するらしい。硫酸塩やカルシウムといったミネラルも豊富で、やはりこの地域の原住民達が最初の発見者だったらしい。その後山脈を行き来する毛皮商人や炭坑夫達によって名を知られるようになり、それからはもう大変。馬か徒歩でしか入れなかった山道を切り崩し、宿泊用ロッジ、キャンプ場を作り・・・というわけ。温泉の歴史は、カナディアン・ロッキーの歴史、たっぷりと溢れ出てくる熱いお湯に感謝、感謝。
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