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全世界におけるワルドルフ・スクール学校数の推移 |
日本に負けず劣らず、英才教育や詰め込み教育が低年齢化しているアメリカの教育現場。テストスコアの向上を視野にマニュアル化されたカリキュラムの実施により、驚異的に高い進学率を誇る学区が、特に大都市近郊で増加しています。そういった優良学区では、周囲の不動産価格が上昇し、保護者のみでなく地元企業や商工会議所など、さまざまな方面からスコア向上への期待が高まり、子供の教育現場を取り巻く環境がどんどん複雑化する傾向にあるようです。
一方で、こういった動きと反比例するように、子供達の‘人間としての成長の場‘は、教育現場からどんどん脇に追いやられてしまっている感があります。進学率の高い人気の学校ほど、低学年から膨大な量の宿題が出され、スコア重視の学校の姿勢が、子供達へのプレッシャーにつながり、幼い身心への影響が深刻ないじめなどの形で表面化してきていることを指摘する、医師や児童心理学者も増えてきています。こういった、先進国ならではの学校事情を背景に、アルタナティブな教育法の一つの選択肢として、シュタイナー教育機関は今、全米規模で着実に広がりを見せています。
■ワルドルフ・スクールとは
シュタイナー教育とは20世紀初め、オーストリアの哲学博士ルドルフ・シュタイナーにより提唱された思想に基づく教育法です。子供の感情、思考、意志、体のすべてを、身心の発達の段階に応じてバランス良く育み、真に自由で自律的な人間を育成することを目指しています。
アメリカでは、シュタイナー教育校として認定された機関に対し、シュタイナー博士がドイツで最初に作った学校の名前を取り、「ウォルドルフスクール」という名称が使われています。数多くのウォルドルフスクールがユネスコのプロジェクト校に指定されていることからも伺えるように、地域制や人種など、生徒の様々なバックグラウンドを超えた普遍性のあるその教育効果は、全世界で広く認められるようになっています。
当校は1994年、ウォルドルフスクールがなかったシカゴ郊外において、より質の高い学びの場を作りたいという、母親達の熱心な運動からスタートしました。教師、スタッフ、PTAの協力のもと、一つ一つ手作りで、現在の3歳児の親子教室からミドルスクールまで11学年を擁する学校へと発展しました。
■シュタイナー式のカリキュラム
語学、数学、科学など基本的な科目において当校では、知識をただ教え、丸暗記させるという授業方法は行いません。また日本で言う「ゆとり教育」とも一線を画しています。
子供の「知りたい」という情熱を学習の機動力にするため、「言葉とは何か、数字とは何か」など、基本のアイデアから生徒と教師がともに考える形で、体験型の授業を進めてゆきます。リズムを使って単語を体得したり、図形を描くことで数字の基本を視覚的に理解したり、五感をフル活用する独特のアプローチが特徴です。各学問の基本アイデアを真に理解することで、高学年になり授業内容が複雑になったときにも十二分に対応できる、強い応用力が身についてゆくと私達は考えています。
豊かな情緒、感性を育むことを目的とし、音楽、美術、体育、工芸などの授業にも重点が置かれています。外国語教育は、1年生からドイツ語とスペイン語の専門科目を取り入れており、ネイティブスピーカーの教師との会話を通じ、子供達は耳から直接、第2言語を習得してゆきます。
■ナーサリークラスでの食育
3歳児からのナーサリーのクラスでは、食育にも力を注いでいます。各教室にコンロや流しを備えた本格的なキッチンを設け、スナックには、新鮮なオルガニックの野菜を使った先生手作りのスープや煮込み料理を用意。子供達も見よう見まねで、調理を手伝っています。まだ土のついた野菜を一から一緒に調理することで、栄養価の高い新鮮な食品に対する子供達の興味を鼓舞し、健康な食習慣が自然に身につくよう導いています。
また、無垢な幼児期の「触覚」を大切に考え、教室に用意されているおもちゃはすべて、手触りの良い木製のものだけになっています。
■家庭的で温かい環境作り
ウォルドルフスクールのもう一つの個性が、在校中、同じ担任同じクラスメートで1年生から8年生まで過ごすこと。教師はじっくりと時間をかけて生徒の個性を観察し、その子供の育ってきたバックグラウンドまで理解した上で接することができるので、生徒個々の成長に必要なニーズに、的確に応えてゆくことができます。教師と生徒の間に培われる信頼関係は、家族のように深いものになってゆきます。教室は、パステルカラーの淡色を使ってデザインされ、温かなイメージの生木の机や椅子、家具を使用。子供が安心し、安定した精神状態で過ごせるよう、一つの家庭のような温かい雰囲気作りがなされています。
学校の周囲を取り囲む広大な緑地も当校の自慢の一つです。自然の中での五感を使った体験を重視し、特にナーサリースクールでは外遊びの時間をたっぷりと取っております。暖かい季節には、緑地の中の自然道を散策し、草木や花、木の実に触れ、また野生動物についても学んでゆきます。雪の季節には、なだらかな丘を利用したそりすべり、高学年になるとスノーボードにも挑戦するようになります。
少人数制で教師の目がすみずみまで行き届き、テストスコアに対する過度なプレッシャーもない環境で、ストレスが原因の集団的いじめや差別などが起こらないことも、当校が誇る特徴の一つです。在校生の底抜けに明るい笑顔に、当校が子供達にとり、真に安全で居心地の良い学びの場になっていることをご理解頂けることと思います。
■クラス構成・対象年齢