日本からお客さんが来るとステーキ店に連れていって欲しいとお願いされる事も多いですよね。確かにサイズは大きいですし、お値段も日本に比べるとボリュームのわりに安いので、喜んでもらうのには良いのですが、時々、『アメリカのステーキってなあ。。。』と思う事、ありませんか?アメリカにだって日本人好みの美味しいステーキはあるんです!今回の特集では先輩とたまちゃんがシカゴ郊外のステーキ屋さんを日本人の視点で紹介します。
たま:先ぱ〜い。おはようございます。毎度のことなんですが、先輩に質問があるんですよ。
先輩:お、たまちゃん、今日も朝から元気だね。で、質問ってなに?
たま:実は今度親戚が日本から来るんですけど、今回はステーキが食べたいって言うんです。アメリカって分厚いステーキが日本よりも安く食べれるのはいいんですけど、結局日本のステーキの方が美味しいとか言われちゃうことも多くって。。。せっかくだから美味しいステーキを食べさせてあげたいんですけど、なかなかピピッと来るお店がないんですよね。
先輩:なるほどね。日本人はサシの多い霜降り肉のステーキが好きだけど、アメリカでは赤身が主流だもんね。
たま:そうなんですよ。だから脂身の多いリブアイを食べさせるのが妥当だと思うんですが、先輩のアドバイスを聞いておきたくって。
先輩:そっか〜。たまちゃんもChicago
Chop Houseとか、Morton'sみたいな有名店には行った事があるんだよね?じゃあ今回はそうした有名なお店ではなく、ちょっとめずらしい所を、郊外中心にピックアップしてみよう。
Sullivan's
Steakhouse |
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Sullivan's
of Chicago |
415
North Dearborn Chicago |
312-527-3510 |
Sullivan's
of Lincolnshire |
250
Marriott Drive Lincolnshire |
847-883-0311 |
Sullivan's of Naperville
|
244
South Main Street Naperville |
630-305-0230 |
先輩:さて、まず最初はSullivans。ここは今年の座談会でも紹介したので覚えているかも知れないけど、他のステーキ店に比べて一回りお値段がリーズナブルなのにも関わらずとっても美味しいお店として人気があるんだよ。
たま:今回来たのはリンカンシャイア店ですが、木曜日の夜なのに駐車場も車でいっぱいですね。でも、店内はカジュアルな感じの人が多いです。
先輩:うん、もともとステーキ屋さんってどこもカジュアルな所が多いけど、ここもそんな感じだね。
たま:バーエリアではジャズのライブパフォーマンスもやってましたね。で、肝心のステーキですけど、どれを頼むんですか?
先輩:このSullivan'sではBone-In
KC Strip Steak とBone-In
Rib Eyeがオススメなんだ。どちらもミディアムレアでオーダーしておいたよ。
たま:了解です。でもKCストリップって私初めて聞きました。Tボーンとかリブアイは有名ですけど。たまにシカゴカットとか、デルモニコなんてのも聞きますよね。
先輩:うん。KCはカンザスシティーの略だよ。KCストリップは日本でサーロインと呼ばれる部位のことで、アメリカではNYストリップと呼ぶのが一般的かもね。諸説あるんだけど、骨付きがKCストリップで、骨無しがNYストリップだという人も多いね。
たま:へ〜。そうなんですね。
先輩:ただ、解釈はお店によって違うのでオーダーする時は確認した方がいいよ。骨付きだと思ってオーダーしたのに骨が付いてないとガッカリするからね。その他にもシカゴで良く耳にするお肉の部位を表にしておいたので、読者の方々には参考にしてもらいたいな。
お店に忘れずに持っていこう! お肉の部位ガイド |
■ PORTERHOUSE
真ん中に骨があって、NYストリップとフィレの両方が付いている部位。とにかく大きい!
■
T-BONE
T字形に骨のついたステーキ。Porterhouseと基本的には同じ場所だが、サイズが一回り小さい。
■ FILET
MIGNON (別名 Tenderloin)
日本語だとヒレ肉。テンダーロインとも呼ばれる。丸くて小さく、骨が無くて柔らかな部位。
■ BONE-IN
FILET MIGNON (別名 Chicago cut)
ポーターハウスからストリップを除いた部位。骨が付いている分、微妙な甘さと食感が特徴。
■BONELESS
RIB EYE (別名 Delmonico)
リブ(肋骨)の外側の部位で、ジューシーかつ脂肪質が多く、日本で言う霜降り肉になりやすい。
■BONE-IN
RIB EYE (別名 Cowboy Steak)
骨の残ったリブアイ。 骨からも水分がしみ出し、よりジューシーである。
■
NEW YORK STRIP (別名 Kansas City strip,
sirloin, strip steak, strip loin)
日本ではサーロインと呼ばれる部位。やわらかく甘みがあり、ジューシーな霜降りが多いのが特徴。
■
BONE-IN NEW YORK STRIP (別名 bone-in
Kansas City strip, Delmonico, bone-in
top loin, New York strip loin)
骨付きのNYストリップ。骨がある分、風味がより芳醇。骨付きのNYストリップだけをKCストリップと呼ぶお店も。
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たま:へ〜。シカゴカットってボーンインフィレのことなんですね。
先輩:ちなみに、日本語でロースって言葉があるよね。英語のLoin(ローイン)、つまりNYストリップの事だと思われがちなんだけど、必ずしも同じというわけではないので注意が必要だよ。
たま:あと骨付き肉と骨なしでは、そんなにお肉の味に違いがあるんでしょうか?
先輩:牛肉は、骨に近ければ近いほど柔らかくって微妙な甘さがあると言われてる。その理由は、骨に近いほど運動をすることが少なくて動かないからなんだ。
たま:確かに骨付きカルビって柔らかいですものね。
先輩:そうだね。さて、もうそろそろステーキが出てくると思うけど、ここで一つアドバイスがある。いつもたまちゃんはお肉のどこからナイフを入れる?
たま:やっぱりお肉の左側ですよね。昔テーブルマナーで教わりましたよ。
先輩:そうだよね。確かにフレンチなどでは左から切る事を推奨してるんだけど、ここは是非セオリーを無視してとにかく真ん中にドカンとナイフを入れて食べてみて欲しいんだ。
たま:真ん中ですか。
先輩:うん。アメリカのステーキ屋では適度に表面を焦がしているお店が多いので、端っこは焦げてる部分が多い。重ねて、お肉は熱々が一番美味しいので、テーブルに出てきた瞬間からドンドン劣化が始まっていると考えていい。つまり、本当に幸せを感じられるのは最初の2〜3切れなんだというのが僕の持論なんだ。それを端っこから食べてたら、一番大きくて美味しい所に行き着く頃にはお腹が一杯になっちゃうだろう?
たま:なるほど。
先輩:ただし、最初に真ん中を切る時は出来るだけ大切な肉汁が出てしまわないようにゆっくりと切るように心がけたほうがいいよ。
たま:おっ!まずはリブアイステーキの登場ですね。うーん、焼き具合最高で、美味しそう〜。どれどれ、先輩の言うとおりに真ん中からっと。うわ、とっても柔らかくって肉汁がジュワっと出てきます。
先輩:どう?このリブアイ、美味しいだろ?こんな身近なお店でこれだけのステーキが食べられるのは嬉しいよね。
たま:そうですね。リブアイに関しては私も絶品だと思います。とってもジューシーですし、フレーバーもたっぷりあります。ただ、次に出てきたKCはちょっとこげ具合が気になりますね。あと、お肉が少し筋っぽいような気がしないでもないです。分厚さは凄いですけど(笑)。
先輩:なるほどね。確かにこの二つを比べると完全にリブアイに軍配が上がるかな。
たま:それと、確かに先輩の言ってた通り、どんなに美味しいステーキもやっぱり本当に感激するのは最初の2〜3口ですね。5切れ目くらいまで来ると美味しさが半減してしまいます。
先輩:あと日本人ってシェアする人多いよね。どうせなら二人で別々のをオーダーすれば2倍楽しめるし。そういう場合も、お店に頼んで10分出すタイミングをずらしてもらうってのも手だよ。
たま:そうそう。友達が美味しい!って叫んだお肉を後でもらっても、そこまで感動できない事ってありますよね。
Tramonto’s
Steak & Seafood
(閉店、残念っ!) |
847-777-6575
|
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601 North Milwaukee
Avenue Wheeling |
たま:ここはまた郊外にしてはお洒落なお店ですね。
先輩:ウェスティンホテルの敷地内にあるし、周辺のコーポレート客も多いからね。
たま:ダイニングエリアは2階まで吹き抜けになっていて、とってもゆったりとしています。
先輩:このお店は二階がRT
Loungeというスシバーになっていて、そっちがまた寛げるようになってるんだ。ソファーなんかもあって、なかなかいいよ。
たま:さっきトイレに行ってきたんですけど、トイレまでの通路がワインセラーになっててとっても素敵でした。
先輩:そっかぁ。さて、肝心のステーキなんだけど、このお店では10oz.
Center Cut Filet Mignonにパルメザンチーズのトッピングとレッドワインソース。それからPeppercone
Crust のBone-In Rib Eye Steakを頼んでおいたよ。
たま:トッピングとステーキソースも選べるんですか?
先輩:そうなんだ。ここだけじゃなくって、最近のステーキ屋さんはコンテンポラリースタイルの所が増えたよね。料理自体も一手間、二手間かけたものが多いしね。
たま:確かにそうですね。他のお店でもKeefer'sとかDavid
Burke's Primehouseみたいな例もありますしね。なるほど、そういう意味でここはちょっと変わったおステーキ屋さんなんですね。あ、早速出てきましたね。ここも最初はリブアイですね。これはシーソルトとペッパーのクラストがたっぷりのっていて、焼き具合も表面の味付けもちょうどよいです。
先輩:とってもジューシーでフレーバーがたっぷりだから、サイドに付いてくるアルグラサラダとの相性もいいよね。やっぱり日本人にはこういう霜降りで脂ののったステーキの方が相性がいいのかもなあ。
たま:こちらのフィレミニヨンは分厚くてお肉もすごく柔らかいんですけど、私はこのパルメザンチーズのトッピングはいらなかったかな、という感じですね。
先輩:そっか〜。ちょっと裏目にでてしまったかな。こういうのは、もしも乗せてもらうなら、別々に持って来てもらって自分の好みで乗せた方がいいのかも知れないね。
たま:そうですね、トッピングに関してはそう思ったんですが、この赤ワインのステーキソースはこのお肉とバツグンに相性がいいです。このソースのおかげで、今までに食べた事のないようなフィレミニヨンの味が引き出されていてビックリさせられました。こういう食べ方があるんだな、っていう感じですね。
先輩:なるほどね。
たま:こういうお店なら、ちょっと違った雰囲気を楽しんでもらえそうです。
先輩:ちなみに、このお店にはデザートにスフレがあるんだって。
たま:先輩、さっき、まだステーキ食べてる途中にウェイトレスさんにオーダーしてましたね。
先輩:そうなんだよ。何故か分かんないけどステーキ屋さんってスフレがデザートにある事が多いよね。でも、あれはオーダーしてから出来上がるまでに時間がかかるので、ステーキを食べ終わってからオーダーしてたんじゃ出てくるのが遅くなっちゃうんだ。
たま:そういえばMorton'sなんかもスフレ有名ですものね。
先輩:気の効いたサーバーさんだとステーキを頼む時にスフレの事を教えてくれるんだけど、そうじゃない事も多いからね。自分でチェックいれとかなきゃ(笑)。
たま:あ、おかげでベストタイミングで出てきましたよ。う〜ん、このチョコレート味は甘さが控えめでなかなかコクがありますよ。
先輩:どれどれ。ここのはバニラアイスとココナツが添えられてるんだね。これはかなり濃厚だね。端の部分はサクッとしていて中がふんわり。一緒に添えられたバニラアイスクリームやココナツと食べて美味しいね。
Gene
& Georgetti |
(312)
527-3718 |
|
500 North Franklin
Street Chicago
|
たま:このGene
& Georgettiはシカゴのステーキレストランのランキングには必ず出てくる老舗ですよね。
先輩:そうそう。古びた店内が何となくノスタルジックな気分にさせるお店だよね。今回は郊外を中心に選んできたけど、こういう雰囲気のお店もきっと案内された方にとっては嬉しいんじゃないかと思ってね。それにこのお店は見せかけだけじゃなくって、その味にも定評があるし。
たま:クラシックなインテリアは、どこかしらマフィアが闊歩していた30年代の雰囲気がありますね。
先輩:ははは、そうかも知れないね。でも、実際には1941年に創業したんだそうだよ。それ以来ずっと同じ場所でファミリー経営をしている生粋のシカゴ・ステーキハウス屋さんだね。
たま:さっき、オーダーを聞いていった店員さんもなんだかイタリアからの移民っぽいおじいさんで、なんだかボソボソ喋ってました(笑)。で、結局何を頼んだんですか?
先輩:Broiled
Strip Loin Steak Bone-In のミディアムレアと、Broiled
Bone-In Rib Eye Steakのミディアム。ブロイルド・ストリップロイン・ステーキというのは一般的に言うところのNYストリップのことだね。
たま:あ、出てきましたよ。うわあ、とっても分厚いステーキですね〜。表面は結構焦がした感じで香ばしいです。
先輩:うん、このかなり焦がした感じがこのお店のシグネチャーなんだ。そうする事でフレーバーが増すんだね。でも、真ん中から切ってみると肉汁がジュワーッと出てくるだろ?
たま:おお、確かに凄く出てきますね。おまけにフレーバーもかなりのものですよ。この感じがもしかしたらイタリア風なのかも知れませんね。ただ、どちからというと、やっぱりこのリブアイの濃厚なお肉のフレーバーの方が日本人の口には合うかなと思います。
先輩:確かにストリップロインの方は赤身のお肉の味がすごく分かるのでお肉を『食べる』というよりは『食ってる』というインパクト感があるよね。アメリカ人にとってはこっちの方がステーキの醍醐味なんだと思うけどね。たまちゃんの言うとおり、リブアイの方が脂がしみこんだフレーバーがたっぷりで、やっぱり霜降りにこだわる日本人にとってはこっちの方が好まれるのかな。実際たまちゃんもここまで全部リブアイが良かったみたいだもんね。
たま:そうですね。このリブアイの風味には本当に惹かれるものがあります。
先輩:なるほどね、さすがはシカゴ中の批評家がウェットエイジングのステーキの中ではこのお店をシカゴのベストだと言って推す人が多いわけだ。
たま:ウェット。。。なんですか、それ?
先輩:うん?まあまあ。ウェットエイジングについては次の店にいって説明することにするよ。
Capital
Grill
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Rosemont店 |
5340
N. River Road, Rosemont |
(847) 671-8125 |
Lombard店 |
87
Yorktown Center, Lombard |
(630)
627-9800 |
Chicago店
|
633
North St. Clair Street, Chicago |
(312)
337-9400 |
先輩:このCapital
Grilleは東海岸を中心に全米展開しているんだけど、ステーキだけでなくシーフードも美味しい事で知られているんだ。シカゴにはダウンタウンとLombard、それから今日来たこのローズモントに3店ある。
たま:名前は聞いた事あったんですけど、なんとなく来た事なかったです。特別シカゴに所縁があるって感じでもないですしね。
先輩:そうなんだよ。やっぱり日本からお客さんが来たら、Chicago
Chop Houseとか、シカゴが発祥の地であるMorton'sに連れて行くのが無難だもんね。ところが、どちらの店もお肉はウェットエイジングで熟成させているんだよね。
たま:ウェットエイジング?先輩さっきもその言葉を仰ってましたけど、なんですか、それ?
先輩:エイジングというのは熟成方法の事でね、大きく分けてドライエイジング(乾燥熟成)とウェットエイジング(湿式熟成)の二つがあるんだ。
たま:お肉って熟成しなくてはいけないんですか?
先輩:お肉は寝かせた方が美味しいって聞いた事ない?お肉には、それぞれ適した熟成期間があって、例えば鶏肉は新鮮な方がいいんだけど、豚肉や牛肉は寝かせることでアミノ酸が増加して、肉の旨みが増して美味しくなるんだ。
たま:なんだかワインみたいですね。で、ウェットエイジングというのは?
先輩:ウェットエイジングっていうのは真空パックに入れたお肉を冷蔵庫で熟成させる方法のこと。そしてドライエイジングってのは、お肉を熟成庫内に吊るして、扇風機で風を当てながら熟成させるもの。この方法は温度管理をはじめ、メンテナンスがとっても大変だし、熟成にも長い時間がかかる。しかも熟成を完了したお肉は外側は乾燥してカビだらけになったのを、外側だけ切り落とした内側の美味しい部分だけを使用するので、かなり小さくなってしまうのが全体的にコストが高くなってしまうんだ。
たま:カビ!なんか不味そうですけど。。。
先輩:いやいや、チーズなんかと一緒さ。外側が風にあたってカビだらけになることで、中が熟成されていくんだ。ドライエイジングは主に赤身のお肉の美味しさを引き出すのに使われる手法なんだよ。
たま:でも、さっき先輩はメジャーなお店でもシカゴではウェットエイジングを使っていると言ってましたよね。
先輩:うん、そうなんだ。実はアメリカでも中西部では昔からウェットエイジングが主流で、ドライエイジングはどちらかというと東海岸で主に行われてきた手法なんだ。つまり、シカゴでは殆どのステーキ屋さんがウェットエイジングだという事を知っておいた方がいいだろうね。
たま:そんなシカゴでもドライエイジングのステーキを食べられるお店の一つがこのCapital
Grilleだというわけですね。
先輩:うん。このお店はドライエイジングにかなり拘っていて、とにかくその熟成法が群を抜いているんだ。シカゴ周辺ではここの他だと
Harry Caray'sやChicago Firehouseなんかでもドライエイジングのステーキを扱っているよ。全ての肉がドライエイジングというわけじゃなくって、肉の種類によって使い分けているんだけどね。
たま:なるほど。でもなんで他のお店はドライエイジングをしないんでしょうね。
先輩:勿論、それぞれウェットエイジングの技術に自信があるという事もあると思うんだけど、やっぱりコストもその要因の一つだろうね。手間がとてもかかるしね。だけど、ドライエイジングの赤身肉を一度食べると、その違いが分かると思うよ。
たま:いやあ、楽しみですね。お店もとってもエレガントな雰囲気ですしね。ダークマホガニーがシックだし、シャンデリアも豪華〜。
先輩:うん、確かに豪華だけど、小さな子供づれでも全然臆することはないよ。お店にも確かめておいたけど、お子さん大歓迎だって。それでも心配なお母さんは、出来ればブース席をリザーブすれば安心して楽しめるんじゃないかな。
たま:子供を中に押し込んじゃうわけですね(笑)。あ、そうこうしている間にステーキのお出ましみたいですよ。
先輩:うん。最初にきたのはPorcini
Rubbed Delmonico with 12 year aged valsamico
だね。実はデルモニコ・カットのステーキはウェットエイジングなんだ。次に出てくるドライエイジングングのDry
Aged Sirloin Steak 14 ozと比較してもらうためにオーダーしておいたんだ。
たま:では早速。う〜ん、霜降りの脂がお肉に染み渡っててこれはこれでとっても美味しいです。焼き方はなんですか?
先輩:今回はミディアムにしておいた。
たま:私、何でもミディアムレアでオーダーしちゃうんですけど、このお肉の場合はミディアムで正解かも。焼き方もいいし、お肉は限りなく柔らかくて、本当にフレーバーがたっぷりです。
先輩:そうだね。確かにミディアムなのにこのジューシーさはすごいね。
たま:あと、この脂身がメチャクチャ美味しいですよ。う〜ん。先輩が薦めるだけの事はありますね。
先輩:うん。せっかく比較するのであれば、最高のもの同士を比較させないと意味がないでしょ?このステーキはバルサミコビネガーの奥の深い味わいがポイントだよね。全体的にはアッサリというよりも濃い目の味付けかな。
たま:いやあ、これもレベルの高いステーキでしたよ。それだけにドライエイジングのステーキが楽しみです。
先輩:うん。それではキャピタルグリルのシグネチャーメニューであるドライエイジのサーロインステーキを味わってもらいましょう。
たま:お、分厚い!これかなりの高さがありますよ。それでは真ん中をぐっさり切りますね。う〜ん、美味しそうな香り〜。では一口。。。おおおおおおっっ!これがドライエイジングのステーキなんですね。ジュワッ〜とお肉に閉じ込められいたウマミ成分が口の中を駆け巡ります。
先輩:厳密に言うとキャピタルグリルのドライエイジだけどね。ここの熟成法はやっぱりすごいと思うよ。
たま:いやあ、これは本当に今まで食べてきたステーキと全然違います。まさに新感覚です。
先輩:そうだろ。最近は日本でもドライエイジングのお店が少しづつ増えてきたそうだけど、やはりまだまだ定着はしていないみたい。
たま:お肉って、こんなにもフレーバーがあるものなんですか!ドライエイジングというくらいだから、かなり脱水してるはずですよね。それなのにこのお肉は限りなく柔らかくてとってもジューシーです。
先輩:よく、アメリカ人が日本の松坂牛なんかを食べた時に、これは別の食べ物だ!って言うっていうだろ。それもそのはず、乾燥熟成した赤身肉を食べている人たちにとっては、脂身でジューシーさを出している霜降り肉は別物に映るんだよ。どちらがイイということではなくってね。
たま:でも、お肉の本当の美味しさはやはり赤身の肉の方が味わえる気がしますね。勿論霜降り肉も美味しいんですが、フレーバーの種類が全然違います。
先輩:気に入ってもらえて良かった。
たま:濃い目の味のデルモニコもいいですが、あっさりしていてもお肉がとっても柔らかい赤みのお肉は肉本来の味を満喫することができますね。あ、私わかりました。先輩の今回のアドバイスは、お肉の特性を充分理解した上で、日本ではなかなか食べる事の出来ない『ドライエイジング』の肉を親戚に薦めたらどうかってことですね?
先輩:うん。日本でも最近では『霜降り肉の神話』が崩れてきていて、赤身のお肉の美味しさが見直されてきてるんだって。焼き肉業界なんかでもちょっとした話題になってるそうだよ。でも赤身のお肉を食べるならやっぱりドライエイジングされたものが美味しいと僕は思うんだよね。
たま:そうですね。で、日本から来たお客さんには『今、日本でも注目されてるドライエイジングで熟成されたステーキを食べに行きましょう』って言ってあげれば、単に日本のステーキとの比較ではない、贅沢感のあるステーキを食べてもらえるというわけですね。
先輩:喜んで貰えると思うんだけど。
たま:それ、とってもいいアイデアだと思います。それに、このステーキなら絶対気に入ってもらえると思います!
エイジングについて
エイジングとはお肉の熟成方法のこと。大きく二つに分けるとドライエイジングとウエッとエイジングがある。ドライエイジング(乾燥熟成)は、牛肉のブロックや半身などを、完全な温度と湿度の制御をした乾燥熟成庫内で貯蔵して熟成させる方法。約21日程度の熟成期間の間に肉の中にある酵素などのはたらきで、肉がゆっくりと柔らかくなっていき、フレーバーも濃厚になる。表面を覆うカビのような部分を含む乾燥した部分を削ぐと、中から最高の状態の肉が出てくる。ただし、温度と湿度管理が難しく、乾燥した部分を切り取ると熟成前の6割以下になるために、相対コストがかなり高い。その為、一部の高品質な肉にのみ行われる熟成方法である。
もうひとつの熟成方法であるウェットエイジングは切った肉を直ぐに真空パックに入れて冷凍保存をしながら熟成させる方法である。
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Wildfire
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Chicago店 |
159
W. Erie Chicago |
(312)
787-9000 |
Oak
Brook店 |
232
Oakbrook Center Oak Brook |
(630)
586-9000 |
Lincolnshire店 |
235
Parkway Drive Lincolnshire |
(847)
279-7900 |
Schaumburg店 |
1250
E. Higgins Rd. Schaumburg |
(847)
995-0100 |
Glenview店 |
1300
Patriot Blvd. Glenview |
(847)
657-6363 |
たま:あれ?てっきりCapital
Grilleのドライエイジングのステーキを絶賛して今回の記事は終りだと思ったんですが、もう一軒紹介していただけるんですか?
先輩:うん、このWildfireには、ちょっと変り種のステーキがあってね。これがとにかくビックリするくらい美味しいので、最後に是非たまちゃんを連れていきたいんだ。
たま:でも、Wildfireは私も来た事ありますし、それなりに美味しいですけど、決して一流店というわけではないですよね。
先輩:うん、その通り。実際、他のお肉はだいたい20ドル台なんんだけど、僕が紹介したいWildfire
Bone-in Filetだけは40ドル近くしてる、このお店では一番高いステーキなんだ。
たま:へ〜。確かに値段が全然ちがいますね。ポーターハウスでもないのになんでなんでしょう?あ、出てきましたね。うわ、大きい。大きいと言っても背が高いですね。これ5センチくらいあるんじゃないですか?おいしそう!それでは早速。うん、うん。。。あれ?確かに美味しいんですけど、薦めてくださった先輩には悪いんですが、そこまでプッシュするほどでは。。。
先輩:え?本当に?ちょっと見せてみて。うむむ、あ!これは焦がしすぎだよ。裏側を見てごらん、真っ黒になってるよね。中もセンターはいいけど、その周りに火が通り過ぎだよ。これはミディアムレアじゃないな。失敗だ。焼きなおしてもらわないと。
たま:え〜?!そんなグルメみたいな事をするんですか?話には聞いたことはありましたけど、実際に焼きなおしてもらうなんてした事ないですよ。
先輩:僕も許容範囲内だったらスルーしちゃうこともあるけど、これは見逃すわけにはいかないな。実際にちゃんと焼かれたものが出てきて食べ比べてもらえば、なぜ僕がこだわるかが分かってもらえると思うよ。
(サーバーさんを呼んで、焼きなおしてもらう)
先輩:たまちゃん、さっきから大人しいけど、クレーマーみたいで気が引けてるのかい?
たま:いえ、そういうわけじゃないですけど、なんせ初めてなので。
先輩:これだけ大きなお店になると、料理を用意する方もどうしても一瞬気が抜けてしまったり、目が行き届かなかったりしてしまうこともあると思うんだ。でもやっぱり応援しているお店だからこそ、そのポテンシャルに達していない時は、それを伝えてあげるのも時には消費者の役目だと思うんだよね。
たま:確かに先輩はいつも美味しい料理に出会うと、食後に何が美味しかったかとか、どんな風に美味しかったかって事をちゃんとサーバーに伝えてますよね。でも文句を言ってるのはあまり聞いたことが無かったので。
先輩:美味しいものを出してくれた人たちにはそれなりの賛辞を伝えるのもマナーだからね。お、今度はマネージャーが仰々しく持ってきたぞ。今度こそちゃんと気をつけて焼いてきたはずだよ。さ、たまちゃん切ってみてごらん。
たま:うわ、なんですかこれ?全然中が違うじゃないですか。赤い部分の大きさがまるで違いますよ。
先輩:だろ?で、食べてみてよ。
たま:これはさっきのと焼き味が全然違いますね。なんて言うんでしょう。このお肉は「ナイフで切る」というよりも、「ナイフを入れている」って感じですね。ナイフがス〜っとはいっていきます。まるでバターみたい。
先輩:うん。でも決して肉の種類が違うわけじゃないと思うよ。これがこのお肉に適した焼き方なんだ。たま:うわあ!この味は、さっきとは比べ物になりません。舌の横の部分がお肉の風味をジュワ〜っと感じてます。熟成された美味しさが口の中でいっぱいになります!幸せ〜。
先輩:お肉の味もそうなんだけど、このステーキはコンソメスープを浸したフレンチブレッドの上に乗ってるだろ。それも一緒にお肉と食べてごらん。また味がしまるよ。
たま:本当だ。お肉だけでもジュワッとしてるのに、このコンソメのせいで味に深みが増しますね。う〜ん。先輩が焼き直しをしてもらったのが完全に理解できました。これはさっきのとは全くの別物です。
先輩:こういう事があるとレストラン取材の難しさを再認識するね。誰がいつ行っても同じものが食べられるようにするのはレストラン側の責任なんだけど、やはり相手も人間だし、その辺の管理が出来てない事もある。
たま:分かります。私も知り合いに「あの店美味しいよ!」って薦める時には内心ドキドキしています。「ちゃんと美味しいのを出してくれよ〜」って(笑)。
先輩:ははは(笑)。でもこのステーキはそれに値する味だと思わない?
たま:ええ。これは本当に満足のいく逸品です。
いかがでしたでしょうか?出来るだけシカゴ郊外のステーキ屋さんの中でオススメできるところばかりを集めてみました。取材の際には他にも数件訪問しているのですが、オススメできない所は勿論掲載していません。そういう意味では、今回ご紹介したお店ならどこに行って頂いても(ちゃんとお店が調理してくれたら!)ご満足頂けるのではないかと思います。皆さんも美味しいステーキ屋さんをみつけたら是非ご連絡ください。
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