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シアトル近郊温泉マップ |
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Gold Myer Hot Springs |
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Bonneville Hot Springs Resort |
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Olympic Hot Springs |
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Sol Duc Hot Springs Resort |
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今回のぷれ〜り〜は、その歴史の中でもっとも波乱に満ちた過酷な取材であった。
ワシントン州には現在、確認されているだけで約30の源泉があるが、温泉と呼ぶには程遠い、「温水のたまり場」と言ったものが多い。たとえば、州北部にあるマウント・ベーカーのふもとにあるベーカー・ホットスプリングスは、最近まで地元紙で紹介されるなど、人々に利用されていたが、今では水量が減り、衛生的にも好ましくないという。理由は、その温泉が商業目的ではなかったためで、メンテナンスをする人がおらず、野放しにしておいたことにより、縮小していったのだそうだ。
つまり、良くいえば、自然の温泉を楽しめるということだが、裏を返せば、冬に行くなんてとんでもない!!という所ばかりだったのだ。それに気づいたのがちょっと遅かった・・・。
というわけで、そんな中、初めに向かったのが、
■ゴールドマイヤー温泉(Gold
Myer Hot Springs)
「1日20人限定」。こんな頑固おやじが経営するラーメン屋のような温泉がある。ワシントン州東部、North
Bendにあるゴールドマイヤー温泉だ。
管理しているのはシアトル市内にオフィスを置くNorth Wilderness Program。1日の訪問者数を制限しているのは、自然を守るため。入浴料が$12〜と高めに設定されているのもそのためだろう。電話で予約を入れた際に伝えられたのは、まず車種はSUBなど大型車でなければいけないこと、宿泊したいのであれば寝袋持参、十分な食料をもっていくこと、携帯電話がつながらないなど、過酷な条件ばかり。そして、極め付けは、40フィート(約12メートル〜)の川を渡るためのシューズを用意すること、という一言。当日は雪があるかもしれないけど、何があっても「自己責任」と言われ、最後は「グッド・ラック」の言葉で電話は切れた。
雪山を越えて、川を横切る。文字通り、秘湯だ。
電話で指示された道を走り、小さな滝も通過した。でこぼこ道の行く手を遮る倒木を乗り越え、突き出した枝に車体を傷つけられながらも、温泉に肩までつかる自分の姿を想像して前進した。
ところが・・・。冒頭で「波乱万丈」と書いたのは、これから襲ったアクシデントによるものだ。雪の深さとともに傾斜角度も増す道。僕の車は4WDのスモールSUVだったが、とうとう、限界が来たのだ。雪にタイヤを取られて動けなくなった。約2時間の奮闘で脱出できたが、その直後に再び、身動き取れず。雪をかいて車を動かすたびにタイヤが急斜面に流れていく。落ちるかも。当然、携帯はつながらない。午後3時。冬の日没は早い。車を置いて歩いて下山することを決めた。
1時間、2時間、3時間、とにかく歩き続けた。その間、行き交う車はゼロ。電灯がなかったため、月や星、雪の明かりを頼りして歩を進めた。足先の感覚は麻痺し、足とくつ擦れの痛みは激しくなっていった。4時間ほど歩いただろうか。にわかにオレンジ色が視界に入った。火だった。足を引きずり近づいていく。驚く顔が見えた。ハンター2人だった。暖を取らせてもらい、シチューをご馳走になった。真っ赤に染まった靴下を取り替えてもらった。ライトもくれた。生き返った。熊に遭遇した時の対処法も教えてもらった。感謝しても感謝しきれなかった。
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夜明けまでいてもいいよ、と言われたが、下山することを選択した。さらに1時間ほど歩いたところで、ようやく携帯が通じた。911。30分ほどして地元警察署のパトカーがやってきた。「次は夏に来なさい」と言われた。(ちなみにレッカー代550ドル)
というわけで、いきなりの挫折。でも、温泉記事で温泉情報なしではいくら何でも読者の皆様から雪を投げられてしまうので、数年前の夏におとずれた人にインタビューをした。記者の体験記事をモットーとするぷれ〜り〜だが、今回はこれで勘弁してほしい・・・(泣)。
ノースベントから、1時間ほど走ると駐車場が出てくる。そこで、車を止めて、幅30フィートほどの川をわたる。夏でも水が冷たいので防水のくつを履いて渡ることをおすすめする。また、現地調達の杖も必要だ。川の水に足をとられないように渡りきると今度は4分の1マイルのトレイルが待っている。まるでトライアスロンであるが、ここをぬけると、岩の露天風呂が見えてくる。
3つの湯船と水風呂があるが、どれも2,3人入ればいっぱいになってしまう大きさ。だが、一番上にある湯船は洞窟の中にあり、深さも腰まである。真っ暗なトンネルから眺める大自然は格別だ。また、自然の作った打たせ湯の滝もあり、まさに秘湯という感じである。 そうである。このリベンジはいつかきっと・・・。
ゴールドマイヤー温泉
(Gold Myer Hot Springs) |
予約:206-789-5631 |
(予約受付は火、木曜日の午後のみ) |
■ボンビル・ホットスプリングスリゾート (Bonneville Hotsprings
Resort)
次に向かったのがボンビル温泉。 その地味な外観と内装のギャップに驚かされた。一見、何の特徴もなく、古びた感じさえする3階建てのホテル。しかし、一歩足を踏み入れると、「リゾート」と呼ぶにふさわしい温かなオレンジ色の光に包まれた空間がそこにはあった。フロントには笑顔の花、右手には石造りの巨大な暖炉の火。凍りついていた体が溶けていった。やっと温泉にはいれるー!!
実は、ここにたどりつくまで少し不安になっていた。こんな山奥に「リゾート」と呼ばれる場所があるのだろうか、と。空には灰色の分厚い雲が一面にびっしり張り付いている。これがワシントン州特有の冬の天候だと聞いていたとはいえ、3時間を越えるドライブに気が滅入った。
シカゴから空路でシアトル国際空港に到着後、オレゴン州ポートランドに通じるI〜5 SOUTHを、目的地へとひた走った。ワシントン州とオレゴン州のボーダーとなるコロンビア川の雄大な流れを右に見ながら車を進め、小さな住宅街を抜けたあたりから木が多くなり、キャンプ場を記すサインボードも目に付き始める。左手に岩がむき出しになった急斜面、右手に川。運転に細心の注意を払いながらくねくね道を走った。
しばらく進むと、シェブロンのガソリンスタンドに到着。ホテルから最寄りの店がここ。小腹がすいた時や、部屋で一杯やりたい時のための食料・飲料を買い込んでおくといい。ここまでくればゴールは目と鼻の先。数分で、石の門が目に飛び込んできた。
車から出て大きく伸びをする。深呼吸。冷たい空気がうまい。山々に囲まれた風景は、ミッドウェストではなかなかお目にかかれない絶景。日本の温泉地に来たような錯覚に陥る。
チェックインを済ませ、館内を歩く。ウッドで統一されていて清潔感が漂う館内は、どこを歩いてもほのかにいい香りがする。オープンしてまだ3年だというが、新しさ以上のゲストを迎えるホテル側の配慮を至る所で感じた。
館内は、暑からず、寒からず。温泉熱を利用した「天然空調」。心が和らぐ理由がここにもあった。
部屋は全78室、3種類ある。分かりやすく松・竹・梅とランク付けしよう。
松のHot Tub Suiteは、3階にあるスィート・ルーム。リビングルームとベッドルームの2部屋になっている。ベッドはキングサイズ。バルコニーには大人8人がいっぺんに入れる巨大プライベート・ジャクジーが付いているここから眺める景色はまさに絶景。竹のHot
Tub Roomは、ベッドルームに、バルコニーのプライベート・ジャクジーがついている。
梅のDeluxe Guest Roomと竹との違いは、ジャクジーがあるかないか。部屋の広さは全く同じ。バルコニーから見える景色は2階と3階、高さに違いはあるが、梅からでもテーブル・マウンテンとハミルトン・マウンテンが一望できるが、やはりお勧めはジャグジー付の部屋だろう。
ホテルの客層は、幅広く「妻の誕生日祝いに来ました」という老夫婦もいれば、エステを楽しむために女性同士で滞在する人も。もちろん、家族連れもいた。近くには2つのゴルフ場があり、ホテル内には会議室もあるので、ビジネスで利用するのもいい。1時間半ほど車を走らせれば、ポートランドにも行ける。タックス・フリーのオレゴン州で買い物三昧というのも一つの手だ。
● 温泉タイム
待ちに待った温泉タイム。水着着用が規則になっているが、館内の移動は部屋に用意されているバスローブを羽織るだけでOK。サンダル(必携品!)をひっかけ廊下を歩く。それだけでリゾート気分が一段と高まる。エレベーターで1階へ降りると、お目当ての室内プールが見える。扉を開けると湿気を含んだ空気が充満している。中を見回す。25メートルプールが中央にデンと横たわっており、奥にジャクジーやサウナ室、子供用のプールもある。
源泉温度は華氏97度(摂氏36度)と決して高くはないが、関節炎、美肌作用、更年期障害などに効果があるようだ。同ホテルはミネラル水プールでのリハビリやエクササイズのクラスも実施している。
これはアメリカの温泉地を訪れた時にいつも感じることだが、日本の温泉を知っているだけに、バリエーションの少なさに物足りなさを感じてしまったのは否めないが、ここの屋外にあるジャクジーは、石橋や小川、手入れの行き届いた植木をほどこした庭園を一望できる抜群のロケーション。僕が入浴した時刻は午後5時すぎ。
湯気がもうもうと立ちのぼる中、早くも山の向こうにぽっかり浮かんだ月を見上げながらの入浴は格別だった。
温泉の後は当然、マッサージだ。 ここのマッサージ・ルーム(個室)は9部屋。2人のエステティシャン、25人のセラピストが在籍する。もちろん、男女別になっていて、ヨーロッパ式のWater
Treatment用のバスタブ4つが並んだ部屋も3つある。
一口にマッサージといってもそのバリエーションは豊富だ。通常のRelaxation
Massageだけでなく、凝りや疲労の激しい方にはTherapeutic MassageやDeep
Tissue Massage、温めた石を用いたマッサージもある。
また、ここではBody Treatmentも充実している。ミネラルウォーターに、体に浸して、体をほぐした後、蒸しバスタオルを全身に巻きつけて老廃物を取り除くBath
and Wrap、アロエ入りオイルで全身を滑らかにするAloe Skin Soother、塩よりも刺激が少なく、肌の再生により効果を発揮するというブラウンシュガーを全身にすり込むHerbal
Brown Sugar Body Scrubなど。
入浴→マッサージときたら、今回の目的はほぼ達成されたも同然だ。部屋に戻ってしばらくベッドの上で大の字になる。すっかり暗
くなった外の景色を眺める。ただひたすら、ボーッとする。贅沢な時間の使い方。たまにはこういうのも悪くない。
食事は1階のレストランで。入り口を入ったところにあるラウンジでアルコールを口に運びながらワイワイやるのもいい。食事用テーブルはさらにその奥にある。
Tomato Basil PastaとStuffed Pork Tenderloinをを食べてみた。刻んだトマトとバジルをふんだんに使用したパスタはガーリック風味。素材のうまさを大切にしているのか、少々薄味だったが、ポークはとても柔らかく、ジューシー。グレイビー・ソースも濃厚で大満足だった。
大きく膨らんだおなかを抱え、再び、部屋に帰ってベッドでゴロン。うとうとしていると時間はいつの間にやら午後9時すぎ。しかし、寝るにはまだ早い。部屋を出ればワイヤレスが使用できると聞いていたことを思い出し、ホールにあるリクライニングチェアに身を沈める。バカルディを口に運びながらメールをチェックし、ネットサーフィン。時間は気にしない。これこそ至福の時だ。
深い、快適な眠りにつけた次の朝、窓の外を見る。空は相変わらず灰色だが、雨はない。冬は雨が降らない日の方が少ないとも言われているワシントン州。晴れ間がなくてもそれだけでOKだ。朝食を取った後、防寒対策をしっかりして、外へ出た。
●周辺観光
山々の間を縫うようにして流れているコロンビア川にはキャンプ場が点在し、州道WA〜14を走れば、何本ものトレイルの入り口を見つけることができる。その中でも、ひときわ見る者を圧倒しているのが、垂直に切り立った岩、ビーコン・ロックだ。高さ25メートル。モザイクの岩肌は自然が作り出したアートだ。ロッククライマーがよだれを垂らしそうな代物。
らせん状に登っていくトレイルは、頂上まで約45分。近所の住民がジョギングスタイルで上っていく手軽なコース。眼下に見えるコロンビア川や一面に広がる緑の大パノラマは必見。「ヤッホー!」と叫びたくなるのをグッとこらえて、しばしその絶景に魅了されてしまった。
小さな興奮を抱きながら引き返す。その途中、右側に興味深い看板が目に飛び込んできた。「FRESH SALMON」。とれたてのサーモンが食べられるの?小道を進んで行くと、キャンピングカーや小屋で集団生活をしているとみられる部落が見える。「すみません」と声をかける。どこから見てもネイティブアメリカンと分かる男が姿を現した。アメリカ人はイクラを好まないから安いと聞いたことがある。「イクラありますか?」「あるよ」。小屋の脇にあるオンボロ車のトランクを開けて袋を取り出す。「これだろ?」。日中でも氷点下に近い気温。天然の冷蔵庫だ。袋の中身を確認する。小粒だが、きれいな朱色をしている。こぶし2つ分の量で$5〜。$20〜札を出す。釣りがない。商売人の風上にも置けない。
だったら「サーモンは?」「あるよ」。再びトランクを開ける。バケツに3匹のサーモンが光っていた。目の前を流れるコロンビア川で捕ったという。一番小さいのも選んで値段を聞く。「1パウンド$3〜」。安っ!目方を量ると6パウンド。イクラと合わせて$23〜。$3〜おまけだ。サーモンを三枚に下ろしながら世間話。先祖代々が漁師だという。小さな家と冷蔵庫がわりの車。これも一つの生き方なんだなあ、としみじみ。
ホテルから3マイルほど東へ走ると、大きな橋が見えてくる。ワシントン州とオレゴン州を結ぶ鉄筋製の橋「THE
BRIDGE OF THE GODS」。かなり大げさな名称だが由来は、1000年前からネイティブアメリカンの間で語り継がれている伝説にあるそうだ。コロンビア川の流れを完全にせき止めるようにして崩れた巨大な岩。それが長年の歳月をかけて浸食、穴があき、石橋になったのだという。現在の橋は、ダム建設に合わせて1938年に作られたもの。コロンビア川に架かる橋の中では3番目に古いという。ビーコン・ロックから見た景色に負けない迫力があった。
後日談:$5〜で購入したイクラはしょうゆとお酒に漬け込んでから熱々のご飯にのせていただきました。めちゃくちゃうまかった!
ボンビル温泉
(Bonneville Hot Springs Resort ) |
要予約:電話1-866-459-1678 |
1252 East Cascade
Dr.
North Bonneville, WA98639 www.
bonnevilleresort.com |
■〜オリンピック半島の温泉〜オリンピック・ホットスプリングス(Olympic
Hot Springs)
僕は潮風を全身に浴びて海を渡っていた。目指したのは、シアトルの西に位置するオリンピック半島にあるポート・エンゼルス(Port
Angeles)という街の温泉だ。シアトルダウンタウンの南にあるピアからカーフェリーに乗り35分。 半島に着いたら、約1時間40分ほどのドライブで到着。
まずは観光案内所に飛び込み、温泉までのルートを入念にチェック。というのも、温泉はここから20分ほどのオリンピック国立公園の中にあり、2マイルほどのトレイルを歩いて行くところなのだ。ここで注意したいのが、道路の状態。降雪がなくても凍結していたらこれ以上は行かせてくれない。その日のなって突然、クローズされることだってある。細かく更新されているインフォメーション(360-565-3131)を出発する日の朝に確認したほうがいい。
ナショナルパークの入り口で入場料を支払い、さらに奥へと進んでいくと野生のシカが草を食(は)んでいた。思わず、あっと声を上げ、車を急停車。むこうも警戒しているのか、ジッとこっちを見つめる。しかし、近づいても逃げる気配もなく、悠然としている。さらに奥へと進む。かなりの傾斜。枝の先までびっしり苔がむした木々が山の深さを物語っていた。
ワシントン州のほとんどの温泉がそうであるように、ここも商業目的の温泉ではない。基本的には野放し状態だが、訪れる人たちのマナーもよいこともあって、今ではノースウェストエリアで最も美しい温泉という声も上がっている。夏には家族で自然を楽しみつつハイキングがてら、温泉に入るのもたのしそうだ。記者が行った冬のトレイルは、まさに寒修行だったが・・・(笑)。
トレイルを抜けると見えてくる温泉はまさに秘湯と呼ぶにふさわしい姿を見せている 滝の横にある橋を渡ると右側に湯気が立っているのが見えてくるのですぐにわかる。水底からは泡が沸いており、硫黄の香りがただよう。お湯の温度は37度から41度と本格的な熱さ。ゆっくりお湯を堪能しよう。水着着用の義務はなく、裸のままでも文句は言われない。歩いた体の疲れを取り除くには何よりのぜいたくだ。
オリンピック温泉
(Olympic Hot Springs)
情報提供:360-565-3131 |
■ソルダック温泉(Sol
Duc Hot Springs Resort)
リゾートと名がつくだけあり同じオリンピック半島の温泉でもこちらは2つの宿泊施設が建ち並んでおり、温水プールやジャクジー、レストランなども設置されている。日帰りでの利用も可能だ。多分、ワシントン州で最も知られている温泉だろう。夏には人でにぎわう。谷の奥まったところにあり、木々に囲まれ、風情がある。しかし、残念ながら5月〜9月(10月は週末のみ)の夏季限定で、冬季は道路が封鎖されている。
ソルダック温泉
(Sol Duc Hot Springs)
予約:360-327-3583
(5〜10月) |
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