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スタッフド・ピザについて
どの店がオリジナルなのかには色んな説があるが、1940年頃に生まれたと言われている。その特徴はドウ(生地)を薄く伸ばしてクルクルまわす普通のピザと違い、底の深いパンにドウを入れ、丁寧に伸ばすところにある。そこに野菜やソーセージなどの具をギッシリと敷き詰めるのだ。普通のピザはソースの上にチーズをのせるが、スタッフド・ピザの場合はソースの下にモッツォレラ・チーズをたくさん入れて(店によってはもう一枚パイ生地をのせて二層にするところもある)オーブンで焼いて出来上がり。『スタッフド』とは英語で「詰め込む」という意味。別名「シカゴ・スタイル・ピザ」、「ディープ・パン・ピザ」。因みに満腹になる事をI
am stuffedとも言うが、それにかけているのかと思うぐらいかなりボリュームのある食べ物だ。
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シカゴの有名な食べ物と言えばなんと言っても「スタッフド・ピザ」。そして「スタッフド・ピザ」と言えばやっぱり『ピッザリア・ウノ』。日本から友達が来るとどうしても一度は連れて行ってしまう人も多いはず。しかしながら実はこの「ウノ」、積極的なフランチャイズ活動のおかげでアメリカの大都市なら結構色んな所にあるのだ。サンノゼから来た人に「ウノ?そんなもん地元にあるよ」と言われた人もいるのでは?それに確かに「ウノ」は有名だけど、本当に味も一番なのだろうか?そんな疑問を解決する為に我々取材班は「スタッフド・ピザの食べ比べ」という素晴らしい企画を立案し編集長に持っていった。ところが、「面白いけど、昼飯代浮かせる為の企画じゃないよね」と痛いところをグサリ。まさかバレているとは。やはり日ごろの行いか。「そ、そんな事ないですよ〜。イイ記事にしますから、お願いしますよ〜」と必死で口説き落としてやっとOKをもらった。とにかく汚名挽回の為にも気合を入れて食べなくては!!エヘッ
ルー・マルナッティース Lou Malnati's
まず我々が一番最初に訪れたのは、地元のアメリカ人に絶大な人気を誇るルー・マルナッティース。創始者のルー・マルナティーさんはもともと「ウノ」の姉妹店「デュー」のマネージャーだった人物で、彼のお父さんのルーディーも「ウノ」のマネージャーだったそうだ。このルーおじさんが独立して郊外につくったのがこのお店というわけ。薄いシンクラスト・ピザもメニューにのってはいるが、やはりこの店の自慢のピザはスタッフド・ピザ。今回はその中でも特にウエイトレスのお薦めであった、その名もズバリ「LOU」というピザをオーダーした。このピザの特徴はサクサクとした焼きたてのクラストにある。意外と薄いのだが、一口食べてみると普通のクラストと全く違うのに気付くはずだ。バターとガーリックの味が口の中にとろけるように広がる。これがこの店自慢のバター・ガーリック・クラスト(ヒネリのない名前(笑))だ。他のピザもバター・クラストにしてもらう事は出来るのだがこのバター・ガーリック・クラストは「LOU」の時だけに使われるらしい。このクラストのうまさが人気の秘訣なのだろう。肉が一切入っておらず野菜が駄目な人にはキツいかも知れないが、野菜好きにはこたえられない。マネージャーの話によるとこの店のドウ(生地)は作ってから使用するまでに2〜3日発酵させているらしい。また、カマドにも気を配ってあり、ウッドストーン社というメーカーの石窯を厳選使用している。この石窯の特徴は何といっても蓄熱性の高さで、高温が一気に行き渡り、クリスピーなピザが理想的に焼き上がるのだ。また、窯は別々の温度のものが幾つかあり、出来上がるまでに何度か違う窯で焼くのだそうだ。なかなか手間が掛かっているのだ。ウノと違い、創始者のマルナティー氏の意向でシカゴ以外にはフランチャイズを開かない事になっていると言うし、これこそまさにシカゴのオリジナル・ピザと言えるのではないだろうか。手作りの為に時間がかかるので(30分程度)来店前に電話でオーダーをして、つくっておいてもらう事も出来る。
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ルー・マルナッティース
Lou Malnati's |
ルー・マルナッティース Lou Malnati's
UNOの元マネージャー、ルーディー・マルナティーの息子ルーが開店したレストラン。ローカルの固定ファンが多い。冷凍した自家製ピザを全米に発送もしている。
ホームページ:www.loumalnatis.com
ロケーション:シカゴに現在8店舗(詳しい住所はホームページをチェック) |
ジョルダーノース Giordano's
そして、次に訪れたのが「シカゴ・スタイル・ピザの源流はウチのお母さん(ジョルダーノーさん)だよ」と言って一歩も譲らないエフレン・ボグリオ氏がはじめたジョルダーノース・レストラン。CHICAGO
MAGAZINEやNBCテレビをはじめとする色んなメディアの賞を総なめにしてきたジョルダノースにも固定ファンが多い。1974年に自分達のお母さんが故郷のイタリアでつくってくれたディープ・パン・ピザをベースにしたというボグリオ氏の自慢のピザはダブル・クラスティッド・ピザと呼ばれ、ドウが二層になっている。その中にストリンギーなモッツォレラ・チーズなどの具がぎっしり詰め込まれているのだ。そして一番上にはガーリックのたっぷり効いた酸味のある秘伝のトマトソースがのっている。我々取材班はマネージャーお薦めの「スペシャル(ピザ屋の人達は味にはうるさいけど、名前はテキトーに決めてる感じネ)」というソーセージやマッシュルーム、ピーマンとオニオンの入ったピザをオーダーした。こちらも焼きあがるまでに30分ほどの待ち時間。早速出てきたピザにナイフを入れてみると、なるほどドウが二層になっているのが分かる。下のクラストがサクサクしているのに比べ、上の方は粘りがあってチューイーな歯応え。見かけによらず油っぽくなく、結構あっさりしているので最初のスライスはぺロリと食べてしまった。なんと言ってもこの酸味のあるソースがこの店の売り物で、トマトが大好きな著者には最高の味だったが、同行してくれたアシスタント嬢にはちょっと酸っぱすぎたようだ。この辺が好みの分かれるところかも知れない。
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ジョルダーノースの清潔で明るい店内 |
ジョルダーノース Giordano's
お店の数ならシカゴ・ナンバー1。ジョールダーノー・ママの味に拘ったダブル・クラスティッド・ピザは歯応えの違う2枚のレイヤーがトレードマーク。パーティーなどにも良く使われる。
ホームページ:www.giordanos.com
ロケーション:シカゴ周辺に36店。フロリダに2店(詳しくはホームページをチェック) |
ジーノース・イースト Gino's East
お次は店内中に溢れるグラフィティー(落書き)で有名なジーノース・イースト。こちらは1966年にミシガンアヴェニュー脇に最初の店が出来て以来現在11店目まで増えている。ご多分にもれずジーノースも自分達が最初のシカゴ・スタイル・ピザを考案したと言って譲らない(もう勝手にやってくれ)。実は一昨年、ダウンタウンにあった一号店は昔プラネット・ハリウッドのあった場所に引越したのだが、この引越しの際にもオリジナルの店からブースやイスはもとよりなんとグラフィティー満載の壁ごとはずして持ち込んだというほどジーノースはイメージにこだわっている。だから11店あるどの支店に言っても同じような「暗い店内」と「店一杯の落書き」、そして「開店以来変わっていないオリジナルのピザ」の味を楽しめるというのがこの店の『売り』だ。我々の訪れたローリングメドウス店も平日の夕方などは待たされる事もしばしばらしい。ブースに通されると、なるほどイスにも壁にも所狭しと落書きがしてあり、隣のテーブルでは男の子がクレヨンで一生懸命自分のお母さんの名前を書いていた。確かにファミリーで来るならピザを待つ間のお絵かきも楽しいだろうが、我々はこのクレヨンの匂いにちょっとグッタリ。それでも負けずにオーダーしたのはウエイターが薦めてくれたSPINACH
PAN PIZZA。エドワルドズといい、ほうれん草は人気の素材のようだ。待つ事25分、出てきたピザのクラストは何故か黄色い。ウエイターに聞くとコーンミールで出来ているという。毎朝フレッシュなドウを作って焼いているというこのコーンミール・クラストのおかげで、油っぽくなくアッサリした仕上がりになっている。ほうれん草の量はエドワルドズに勝るとも劣らない。それ以外にもタマゴやガーリックがミックスされており、スパイスがよく効いている。新鮮なトマトをそのまま使っているというソースはやはり新鮮なだけにちょっと酸っぱめ。大喜びで食べる著者をアシスタント嬢が恨めしそうに見ていた。野菜が駄目な人には「ソーセージ・ピザ」も有名なので併記しておく。また、今回はディープパン・ピザの取材なので食べなかったがこのお店ではシンクラストの方が美味しいという定評がある。特にシュリンプ・スキャンピー・ピザは保証付きの味なので是非試してもらいたい。
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壁一杯に落書きがしてあるジーノース・イースト |
ジーノース・イースト Gino's East
落書き(グラフィティー)で有名なピッザリアはソーセージ・ピザが人気。ダウンタウンのお店は観光客で賑わい、有名人と遭遇する事もしばしば。シュリンプ・スキャンピーはマジウマ。
ホームページ:www.ginoseast.com
ロケーション:シカゴ周辺に11店(詳しくはホームページをチェック) |
エドワルドズ・ナチュラル・ピザ・レストラン Edwardo's Natural Pizza Restaurant
三店目に訪れたのは自然素材を使っているというのが売りのエドワルドズ・ナチュラル・ピザ・レストラン。エドワルドズもピザ・ランキングでは必ず上位に選ばれる有名店だ。特に数々の賞にも輝いたフレッシュ・スピナッチ・ピザはほうれん草がギッシリ詰まっていて、賞を取ったと言うのも頷ける。肉好きな人には「エドワルドズ・スペシャル・ピザ(またも安直なネーミング)」がお薦めだ。この店でも色んなトッピングを追加できるのだが、ブロッコリーやハラペーニョなどといった面白い食材まであるのには驚かされる。ここでもスタッフド・ピザはオーダーしてから30分ほどかかった。ここのピザもジョルダーノースと同じく二層になったダブル・クラスティッド・ピザだ。他の店よりもクラストが分厚い。測ってみるとなんと2インチもあった(ものさし持参でレストランに行っちゃ悪い?)。味の方はというと、トマト・ソースがジョルダーノースの酸味の利いたソースに比べて酸っぱさを抑えているだけでなく、チーズが他の店よりも随分多いので、全体的にマイルドな仕上がりになっている。案の定ジョルダーノースのソースが「酸っぱい」と口を細めていたアシスタント嬢は「ここのはオイシイです〜」とご満悦。ソースの上にまぶしてあるバジルの風味が非常に印象的な店だった。
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ナチュラル素材が売りのエドワルドズ |
エドワルドズ・ナチュラル・ピザ・レストラン Edwardo's
Natural Pizza Restaurant
自然素材を使用しているエドワルドズは清潔な明るいお店。毎年行われるピザのランキングでは必ず上位に入賞するほうれん草のピザがお薦め。
ホームページ:www.edwardos.com
ロケーション:シカゴ周辺に8店。州外に5店(詳しくはホームページをチェック)
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シカゴ・ピッザ&オーブン・グラインダー Chicago Pizza
& Oven Grinder
そして、今回スタッフド・ピザとしては最後に行ったのがシカゴ・ピッザ&オーブン・グラインダー(以下CPOG)。ダウンタウンのクラーク通り沿いにあるCPOGのポットパイ・ピザはコンセプトこそ他のディープパン・ピザに似てはいるが一味違った変り種。この店のピザはまず丸いお椀のようなポットにホームメードソースやソーセージ、チーズなどの具を入れてその上にパイ生地を被いかぶせる。それをチキン・ポットパイのようにオーブンで焼き、サーブする時にウエイトレスがお客の前でクルリとひっくり返す。こうする事によって中の風味がギュッと凝縮される仕組みになっているのだ。オリーブ、ガーリック、オニオン、グリーン・ペッパー、そしてプラム・トマトが入っているとい
聖バレンタインの大虐殺
時は1929年大恐慌の真っ最中。禁酒法を逆手に取り密造酒で大もうけをしていたギャング達の間では利権のもつれから抗争が絶えなかった。そんなギャングの一人であったアル・カポネは対立するモラン一家のメンバー7名を「安い密造酒を売りたい」というガセネタで誘い出した。モラン一家が指定の場所に赴いてみると、そこにはカポネの手下が偽の警官に変装して待ち受けていた。偽警官は摘発を装いモラン一味をガレージの壁に一列に立たせ、機関銃の乱射により一斉に射殺してしまったのだ。この日が折りしも2月14日だった為に、この事件は『聖バレンタインの大虐殺』と呼ばれている。事件がカポネの指揮によるものである事は明白だったが、当日フロリダにいたカポネは捕まらなかった。 |
うホームメード・ソースはオニオンの甘味が出ているのかトマトソース特有の酸味が無く、まろみがある。味の方はどうかって?それは日曜日の12時に開店するとわずか30分で店の外に列が出来るほどの人気だと言えば分ってもらえるだろう。微妙に甘味のあるパンのようなソフトな口当たりのクラストとホームメード・ソースの相性は絶妙だ。あっという間に平らげてしまう事請け合い。店内は家具も壁もパイン・ツリーで統一されており、テーブルは殆ど全てがプライベートなブース式。店内の照明が暗い事もあってかどこか『隠れ家』的な雰囲気を醸し出している。実はこの店の直ぐ向かいは、あのアル・カポネが、1929年に敵対するギャングの手下7人をマシンガンで撃ち殺した、「バレンタイン・デーの大虐殺(St.
Valentine's Day Massacre)」の現場なのだ。どうやらオーナーはその辺の歴史に因んだイメージでお店をつくったらしい。味といい、話題性といい、ここは新しいシカゴの名所といえるだろう。
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エクステリアもインテリアもとってもお洒落なCPOG |
シカゴ・ピッザ&オーブン・グラインダー
Chicago Pizza & Oven Grinder
お洒落な雰囲気と新しいスタイルのシカゴ・ピザを提供しているCPOGはいつも長蛇の行列が出来ている。ボリュームたっぷりのサラダもいけるゾ。お昼のデートにもお薦めのスポット。
ホームページ:www.chicagopizzaandovengrinder.com
ロケーション:2121 NORTH CLARK STREET CHICAGO, IL 60614
773-248-2570
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総評:
今回訪れたスタッフド・ピザの店はどこも甲乙つけがたい出来であった。それもそのはずで色んなメディアが今まで「シカゴのナンバー1ピザ」を紹介しているが、そのたびに順位は入れ替わるが、これらの店がいつも上位を占めている。その中でも、今回取材班が食したピザを基準にランク付けをすると、オリジナル・スタイルのシカゴ・ピザの中ではルー・マルナッティーの「LOU」がイチオシだ。そしてその「LOU」よりも更に美味しかったのが、スタイルこそ純粋なシカゴ・ピザとはいえないかも知れないが、CPOGのピザであった。郊外からだとちょっと遠いがその価値は充分にあるので是非訪れてもらいたい。この二つのピザを食べないでウノ・ピザを食べただけでは「シカゴのピザ」を極めたとは言えない。しかし、今回はよく食べた。いや〜、満足、満足。さ〜て、次は何を食べる企画を立ててランチ代を浮かそうかな〜(笑)。
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