〜卒園生へ贈る言葉〜
温かい春の日差しが教会堂に優しく差し込む3月。今日は幼稚園の卒園式。静かなはずの教会堂の空気が忙しいのか、それとも私の心が揺れているのか...嬉しく、切ない気持ちが心をいっぱいにします。
小さな小さな幼稚園で育った子ども達。今年の卒園生は1人。小さな彼女は小さな花を胸に飾り会場へと進みます。子ども達は列になり、入場の合図を静かに待ちます。年少から年長さんまで『今日は少し何かが違う...』小さな彼らの心は感じています。
卒園生へ贈る言葉で、グリム童話から『銀の硬貨』のお話をしました。こんなお話です。?昔、小さい女の子がいました。この子にはお父さん、お母さんもいませんでした。大変貧乏でしたので、住むにも部屋もないし、体につけた物の他には手にもったパンひとかけきりで、それも情け深い人が恵んでくれた物でした。
でも、この子は、心の素直な信心のあつい子でありました。この子は、優しい神様のお力にだけすがって、ひとりぼっち、野原の上を歩いて行きました。すると、貧しい男の人が現れ、「何か食べる物ををおくれ。おなかが空いてたまらないよ。」と、言いました。女の子は、持っていたパンひとかけ残らず、その男にやってしまいました。そして、「どうぞ神さまのお恵みがありますように。」と、祈り、また歩き出しました。すると、今度は、子どもが一人、泣きながらやって来て、「あたい、頭が寒くて凍りそうなの。なにかかぶるものちょうだい。」と言いました。 そこで、女の子は、かぶっていた頭巾をぬいで、子どもにやりました。それから、女の子がまた少し行くと、今度出て来た子どもは、着物一枚着ずにふるえていました。そこで、自分の上着をぬいで着せてやりました。それからまた少し行くと、今度出てきた子どもは、スカートが欲しいというので、女の子はそれもぬいで、やりました。 そのうち、女の子はある森にたどり着きました。もう暗くなっていましたが、また、もう一人子どもが出て来て、肌着をねだりました。女の子は、(もう真っ暗になっているから誰にもみられやしないでしょう。いいわ、肌着もぬいであげることにしましょう。)と、とうとう肌着までぬいで、やってしまいました。さて、女の子も持ち物がきれいさっぱりなくなってしまった時、たちまち、高い空の上から、お星さまがばらばら落ちて来ました。しかも、ちかちかと白銀色をした、銀貨でありました。そのうえ、肌着をぬいでやってしまったばかりなのに、女の子は、いつのまにか新しい肌着をきていて、しかもそれは、この上なくしなやかな麻の肌着でありました。女の子は、銀貨を拾い集めて、それで一生豊かに暮らしました〜 グリム童話より
いつかまたこのお話を子ども達が聞いた時、子ども達に思いだして欲しい事があります。愛する事の素晴らしさ。愛される事の喜びで子ども達の心がいつまでも溢れますように。幼稚園で過ごした彼らの出来事や思い出は、彼らがこれから大きくなるに連れて少しずつ薄れていくと思います。しかし、幼い彼らがお互いを通して感じた温かい心の触れ合いは彼らが大人になっても心に残ります。何でもない事で大笑いしたり、大粒の涙を流したり、仲間と一緒に過ごした沢山の日々。いつか彼らが振り返り『楽しかった。大好きだった..』と心温かくなる日が来ると思います。そんな時、また大きくなった子ども達と一緒に座りまたお話してみたいです。その日まで...
大きく育て!子ども達!元気に育て!子ども達!
聖マタイルーテル日本語幼稚園 子ども達の成長日記