〜 意地悪から学ぶ優しさ〜
『せんせい〜!あー君が泣いてるよ〜』子ども達の声がします。今月から幼稚園へやってきた3歳のあー君。滑り台の手すりにつかまり、しくしくと大粒の涙を流しています。 『あー君、どうしたの?』泣く事に精一杯のあー君は答える事もできません。一部始終をみていた周りの子ども達が、『ゆう君が、あー君の帽子を取っちゃたんだよ!ゆう君、意地悪したんだよ。』と教えてくれました。年長さんのゆう君。いつも元気なやんちゃ坊主が、今は静かに私とあー君のやり取りを見ています。『あー君、嫌だったね。大丈夫?』と聞くと、あー君は、こくんとうなずき、はしごを上り始めます。私はゆう君の気配を背中に感じながらその場を離れました。すると、後ろで『あー君、ごめんね。』とゆう君の声。振り返ると、ゆう君はあー君の頭をずっとなでていました。
子ども達の毎日は、泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだりと大忙しです。しかし、この経験は子ども達の心を育てる大切な経験なのです。幼児期にしっかりお友達と遊んでいれば、いろんな感情を経験をする事ができます。泣いたり、泣かされたり、笑ったり、笑わせたり...でも、そんな経験があるから、相手の気持ちも分かるようになるのです。お友達を傷つけてしまった時、自分が経験した気持ちを振り返り、『嫌だっただろうなぁ..』と反省する。だから謝れるようになる。ゆう君はあー君が泣いてしまった時、『あぁ、悪い事しちゃったなぁ..』と自分で気がついていたのです。そんな子どもに向かって、『だめだよ!そんな事したら!ゆう君はお兄さんでしょ!』と、大人が責める必要は全くないのです。
ゆう君は、ケンカも沢山するけれど、お友達も沢山います。泣いたり、笑ったり、自分の気持ちを正直に伝える事ができるゆう君は、毎日が楽しそうです。失敗を沢山繰り返しながらも、ゆう君の心は、しっかりと強く、優しく成長しています。
子ども達には子ども達の世界があります。その中での大人の役割は、子ども達が自由に、そしてたくましく、遊びを通してお互いの気持ちを尊重し、考え、感じられる環境を用意する事なのです。 幼ければ幼い程、彼らの心は学びます。大人が教えるのではなく、彼らの心に本物の感情を沢山感じさせてあげる事で、彼らの心は育ちます。沢山泣いてもいいんです。失敗してもいいんです。『嫌だったね』と彼らの気持ちに寄り添いながら、おおらかに彼らの成長を見守ってあげてください。
大きく育て!子ども達!
元気に育て!子ども達!