感動を子ども達の心へ
沖縄の実家の近くに『ワイトゥイ』という高さ約20メートル、長さ150メートル程の岩山があります。その昔、村人はその岩山をよじ登るように越えてゆき、向こう側にある自分達の畑に通っていたといいます。しかし、それでは不便だと、村人達は石割棒を手にこつこつと岩山を削り始めました。3年の歳月をかけ、ついに岩山は半分に切り開かれ、村人達はその通りを『ワイトゥイ』(割って通る)と呼ぶようになりました。ワイトゥイは木に覆い茂られ、薄暗く、壁面には当時の苦労を物語るが跡形が今でも残されています。幼かったあの頃、ワイトゥイを通ると昔の村人達の声が聞こえてきそうで、ちょっぴり怖く、走るようにワイトゥイを通り抜けていったのを覚えています。小さな子どもの足で走る150メートルはなかなか長く、『ヒャ〜』と、どきどきしながら走りました。『もうちょい!もうちょい!』息をきらして通り抜けたワイトゥイを背中に、目の前にあるのは、深い緑色のさとうきび畑と、その向こうに広がる青い海。『ワァ〜』幼かった私の心に残る感動の瞬間でした。
子ども達と一緒に過ごしていると、私があの頃感じた感動を彼らが同じように感じているのだという事を実感する時があります。それは彼らが薄暗い森の中で、霧が消える瞬間を見た時の驚きだとか、雨が雪に変わる瞬間を見た時の喜びであったり、染め物をして、虹色に染まった布を初めて広げた時の嬉しさだとか、何日もかけて作った泥団子が彼らの手の中で光りだす瞬間だとか・・・。わくわく、どきどきの大きな体験から、小さな体験までいろいろです。しかし、彼らが美しい物を見た時、そして感じた時、小さな子ども達の心は感動で満ちあふれるのです。
美しい物を見たり、聞いたり、触れたりする時に『ワァ・・・と息を飲み込み、幼い子ども達でさえ、その美しさに言葉を失う時もあるのです。私達の大切な子ども達に本物の『感動』を与えてあげたい。その感動は、道に咲いているお花であったり、窓から見える虹であったり、お友達の優しい言葉であったり、既に私達の周りにある物なのかもしれません。幼児期に沢山の素晴らしい経験を彼らに与える事によって、感動する事を覚え、『すごいね!』とお友達と共感する事ができ、彼らの心は豊かに成長するのです。そしてその素晴らしい感動は彼らの心に残り続けるのです。
子ども達の心を動かす本物の体験。これからも探し続けていきたいです。
大きく育て!子ども達!元気に育て!子ども達!
●St.
Matthew's Lutheran Japanese School
聖マタイルーテル日本語幼稚園
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●シカゴ聖マタイルーテル日本語幼稚園の子ども達の成長日記
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