おもちゃがなくても遊べるんだよ!
先日、A男くんが、「おもちゃがなくて遊べない」「電車がないから、つまらない」と言いだしました。A男君のお母さんによると、今までは、プラレールをする、ビデオを見る、ブランコをする、既製品の戦隊ロボットで遊ぶ。など、家でも外でも何かを使って遊ぶことが多かったそうです。
子ども達って、実はおもちゃが無くても楽しく遊べる力を持っているのです。「おもちゃが無くても楽しく遊べるのかしら?」と、不安になるのは大人の方で、子ども達の回りには、おもちゃ以外にも、子ども達の想像力を発揮させ、楽しめる物が沢山あるのです。
今日、園児達が外遊びの時、一番最初に手とったのは、子供用のシャベルでした。園庭に敷き詰められたウッドチップを掘り返し、穴を掘ったり、道を作ったり、自分達の背丈ほどある山をウッドチップで作ったり。。。汗だくになりながら、「ここもほって!ほら、頑張って!こっちは道だよ〜!」と、みんなで声を掛け合いながら、道をどんどん作っていきます。 園庭のジャングルジムはトンネルに早代わり。 どんどん道を作っているうちに、年長さんが、「あ!ここは行き止まりだから、どの道を通ればいいか、コンピューターで調べて!」叫びます。すると、年中さんが、地面にチョークで、コンピューターを書いてそのボタンを押し、どんな道があるのか、検索してくれました。
このようにして、子ども達は毎日、自分達の想像力を使い、遊びをどんどん広げていきます。この遊びの中では、既製の玩具が何もない状態でも、子ども達の想像力が発揮されているのがよく分かります。子供達が夢中で遊べる環境を作るには、私達保育者は、そんな子供達の様子を観察しながら、遊びのアイデアが出たときにすぐに使えるような「道具」を提供してあげるだけでよいのです。
外遊びであれば、バケツ、スコップ、水などを使いたいときにいつでも自由に使えるように。中遊びであれば、はさみ、紙、新聞紙、のりや糸、空き箱などを準備してあげるだけで、遊びは十分に広がります。しかし、子ども達に道具だけを与えても、子ども達は何をしていいのか分かりません。ここで大切なのが、大人がどのようにして道具を使うのか、見本を見せて教えてあげる事なのです。
スコップで遊ぶときも、まずはスコップの使い方を教えてあげる。スコップの持ち方、力の入れ方、スコップの角度の調整など...一緒にスコップを使ってみる事から始めます。子ども達がスコップを一人で使える様になった時、その技術がいろいろな遊びに発展していくのです。テープを使うときも、テープの切り方、貼り方、使う分量など、大人が見本を見せてあげる事が大切です。大人は、子ども達の遊びが広がるように、「道具」とその道具を使いこなせる技術を教えてあげます。
ボタン一つで音がなり、ぴかぴか電気の光る既製の玩具は、子ども達を興奮させ、つかの間の楽しみを与える事が出来るでしょう。しかし、そのような玩具では、子ども達の想像力を十分に伸ばす事が出来ないのです。流行と共に、玩具もどんどん変わっていき、子ども達もすぐに新しい玩具へと心が流され、今まで遊んでいたピカピカ光る玩具は、素早く玩具箱の底に沈んでいくのです。
「遊び上手」の子ども達の家には必ずと言っていいほど、積み木や空き箱、紙やクレヨン,テープなどが、子ども達の手の届く所においてあります。遊び上手な子供達は、その道具を使い、何をしようか考え、遊びを自分で広げていくことが出来るのです。そして遊び慣れている子ども達は、玩具や遊具のない森や原っぱに遊びにいっても、枝はお箸で、葉っぱはお皿で、葉っぱのお皿の上にはお花のデザート。それをみんなで食べようよ。と遊びは無限に広がります。
子ども達の中にある想像力や発想力、考える力をどんどん引き出すには、まず大人の私達が子ども達と一緒に遊び、遊びの道具の使い方を伝授し、子ども達の遊びを見守る事なのです。この日、「電車がないから遊べない。」と言っていたA男くんは、箱をテープでつなぎ合わせた電車を、嬉しそうにウッドチップの道で走らせていました。既成のおもちゃや遊具がなくても、自分達で、楽しい遊びを考えだせるような子供達は本当に遊びの天才です。
大切な幼児期の今、子供達には少しの道具と、たっぷりした時間を与えてあげ、質のいい遊びを沢山経験させてあげたいですね。