元気に育て! 子ども達!
大きく育て! 子ども達!
『さよならぁ、僕達の幼稚園・・・』暖かい春の日差しの中、子ども達の可愛らしい歌声がきこえてきます。もうすぐ卒園式。お友達と一緒に沢山笑って、沢山泣いて、けんかして、仲直りして、素晴らしい経験を毎日の遊びを通して学んできた子ども達。たくさんの思い出を心に詰めて、幼稚園を巣立っていきます。
毎年、この時期になると卒園式の練習をするのですが、練習日一日目、卒園式のお歌を歌っていると、さっきまでにこにこしていたゆうこちゃんが、『うっうっ』と、声を上げて泣き出してしまいました。『先生、この歌歌うと、悲しくなっちゃうよ・・・』って、私の胸に顔をうずめて泣き出してしまいました。 ふと周りを見てみると、さっきまで歌を歌っていた子ども達も泣き出してしまい、『先生、幼稚園がいいよ・・・寂しいよ』って私の回りに集まってきました。お歌を歌っていると、これまでの思い出が心のなかから溢れ出し、涙となって子ども達のちいさな頬を濡らしていました。 涙でくしゃくしゃになった子ども達の顔から、子ども達の気持ちが痛いほど伝わってきました。幼稚園で毎日過ごしてきた日々、お友達との絆、小学校への大きな希望、新しい環境へ飛び込んでいく不安・・・いろんな思いが子ども達の心の中にあったと思います。泣きじゃくる子ども達を抱き寄せて、『大丈夫だよ。みんなこんなに大きくなったでしょ。もう、お兄ちゃん、お姉ちゃんなんだよ。だから大きい学校にいくんだよ。』と言う私の目をみて、『先生、大きくなるって本当にいい事なの?なんでこんなに悲しいの?』って逆に聞かれてしまって、私も言葉を失い、涙で子ども達が見えなくなってしまいました。その日は、長い時間、1人1人子ども達を膝にのせてみんなでいっぱい、いっぱい泣きました。
私達の幼稚園では、現地校に行く子ども達、帰国する子ども達、全日校へいく子ども達といろんな進路の子ども達がいます。 この子ども達にとって、『卒園式』というのは、学年を区切る為の行事ではなく、それ以上の意味があるという事を5歳、6歳の彼らが感じているのです。毎日泥んこになって遊び、一緒に笑い、涙を共にしてきた仲間達。時にはけんかもして、傷つけ、傷つけられても、お友達が大好きで、いつの間にか大切なお友達の1人となっていく。そんなお友達と離れていくのが辛く、その事を考えただけでも、涙が出てくるんですよね。『幼稚園大好き!お友達大好き!毎日が楽しい!』幼児期にこのような経験ができるという事は大切な事ですし、社会生活のスタートである幼児期だからこそ必要な経験だと改めて実感しました。この子達が、お友達と肩を寄せ合って無言で涙を一緒に流している姿をみて、『本当の友達ができたんだなぁ。いい幼稚園生活が送れたんだなぁ。』と嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
そんな子ども達の心境を考えていると、残り少ない園生活を、卒園式の練習に費やす時間がもったいなくなってきてしまって・・・『子ども達にとって、今大事な事って何だろう?』って、彼らを見ながら自分に問いかけたとき、『先生が指導する練習ではなく、お友達と泣いて笑って最後まで大好きなお友達との時間を大切にする。私の仕事はいつでも子ども達の成長のサポート役である』という気持ちが強くなり、その日以来、卒園練習は無くなり、卒園式当日まで子ども達を思いっきり遊ばせてあげる、いつも通りの保育をする事ができました。
たった一回の練習で挑んだ卒園式。 感動的でした。それは、卒園生1人1人の幼稚園に対する気持ち、思い出が園児達の瞳を通してが輝き映し出されていたからです。練習の時、涙で歌えなかったあの歌も、園児達、最後まで歌い終える事ができました。幼稚園での思い出を胸に笑顔で『先生、ありがとう。』って、元気に手を振って門をくぐる子ども達を見送りながら、『元気に育て! 子ども達! 大きく育て! 子ども達!』と、ずっとずっとこれからも応援しています。