第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はUSAの初優勝で幕を閉じた。
3月6日から同22日までの16日間のイベント。試合はアメリカ(マイアミ、サンディエゴ、ロサンゼルス)、日本(東京)、韓国(ソウル)、メキシコ(ハリスコ)で開催され、全39試合で108万6720人を動員し、初めて大台を突破した。決勝戦を中継したMLBネットワークやESPNスペイン語放送の視聴者数も過去最多の310万人に達した。
数字上は成功を収めたが、不穏な空気があるのも事実。昨年12月のことだ。主にスペイン語圏のメディアで活動するクリスチャン・モレノ記者がツイッターで「今回で十分な収益を得られなければ、WBCは終了する可能性があると情報筋から聞いた」とつぶやくと、「WBC消滅」のニュースが日米を中心に瞬く間に広まった。ただし、報道内容のほぼすべてが、ツイート以上の確度の高い情報が入っていなかったこと。同記者のツイートを引用し、過去に報じられたネガティブな要素を肉付けしたものばかりだった。
WBCを主催するのは、メジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会が立ち上げたワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)。世界野球ソフトボール連盟が公認する野球の世界一決定戦だ。目的は「野球を世界に普及させるため」だが、主催者の構成から「メジャーリーグ(MLB)を世界に普及させるため」という金儲け≠ェ常につきまとっているのが現状だ。
とはいえ、世界最高峰にあるMLBの選手の出場なしには成立しないイベント。大会前には出場するメンバーが大きな注目を集めた。「侍ジャパン」の呼称をもつ日本代表は、結果的にヒューストン・アストロズに所属する青木宣親外野手が唯一のメジャーリーガーだったが、それでも1次ラウンド、いや、大会前の強化試合から日本列島は大きな盛り上がりを見せた。
他国を見渡しても、前回大会の覇者、ドミニカ共和国はオールスター級の豪華メンバーが名を連ね、開催地のマイアミ、サンディエゴはいずれもヒスパニック系が多く住む地域とあって、どの試合もホーム球場と化し、日本に匹敵する熱気があった。
USAは過去3大会同様、登録メンバー全員がメジャーリーガー。さらに、ニューヨーク・ヤンキースを4度のワールドチャンピオンに導いたジョー・トーレ氏をゼネラルマネジャーに、97年にフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・―)でチャンピオンとなり、最優秀監督賞3回のジム・リーランド氏を監督に招へいし、今大会に懸ける意気込みを見せた。
ところが、USAの試合は日本やドミニカ共和国ほどの熱量はなかった。その最たる例は、1次ラウンド突破を懸けたカナダ戦。観客数が2万2303人だったのに対し、前日のドミニカ共和国戦は超満員の3万7446人。その差は歴然だ。
その試合でUSAは勝ち、2次ラウンド進出を決めたが、試合後の記者会見場は空席だらけ。アメリカの報道陣の数は日本のそれとほぼ同数だった。温度差を実感する出来事の一つとなった。
その原因として考えられるのは、出場メンバーの中身だ。投手では、ロサンゼルス・ドジャースのカーショー、ワシントン・ナショナルズのシャーザー、サンフランシスコ・ジャイアンツのバムガーナーが参加を見送っている。野手では、ロサンゼルス・エンゼルスのトラウトやナショナルズのハーパーが入っていない。
つまり、今回もUSAは、みんなが見てみたいと思う「ドリームチーム」ではなかったということになる。1992年のバルセロナ五輪の男子バスケットが好例。裏を返せば、WBCにはまだまだのびしろ≠ェあるとも言える。
WBCは、同じく4年ごとに開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)と比較されることが多い。1930年にウルグアイで第1回大会が行われたW杯。第2次世界大戦をへて再開された1950年の第4回大会(ブラジル)で観客動員数が初めて100万人を突破した。前回、2014年の第20回大会(ブラジル)は342万9873人を記録した。
開催国持ち回りシステムがない点、野球が東欧やアフリカに普及していない点、参加国数が少ない点など、W杯との違いは多々あるが、USAが初めて世界一となったことでアメリカ国内でのWBCへの認知度、注目度が上昇したのは間違いない。次回大会は2021年。「ドリームチーム」が飛躍を遂げるためのカギとなる。
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