ピッチャーを評価する指標の1つに「防御率」というものがある。「9イニング(1試合に相当)あたりの自責点」を表したもので、たとえば、あるピッチャーが6イニングを投げて味方のエラーなしに3点を取られた場合、防御率は4・50となる。
今季のメジャーリーグ全体の防御率は3・98(9月27日現在)。つまり、1試合平均4点近く取られるということになる。この防御率、先頭投手で言えば、3・50以下が一般的に『好投手』と言われており、勝利数も防御率に比例する傾向にある。シカゴ・カブスの7年ぶりプレーオフ進出の原動力となったジェイク・アリエッタ投手を例に挙げると、防御率はリーグ2位の1・82、勝ち星はリーグ最多の21勝だ。防御率2点台なら15勝以上、3点台前半なら10勝していても誰も不思議には思わない。
もちろん、例外もあるわけで、テキサス・レンジャーズのコルビー・ルイス投手は、リーグ平均を大きく上回る防御率4・36にもかかわらず、18勝も挙げている。理由は、強力打線の援護(Run
Support)。4点取られても味方が5点取ってくれれば勝てるというわけだ。
心は折れていないのだろうか―。記者席から投げる姿を見ながら、思わず、同情してしまったピッチャーがいる。アトランタ・ブレーブスのシェルビー・ミラー投手だ。防御率は3・00ながら戦績は5勝16敗。負け数は両リーグ最多という悲惨な状況だ。理由は、ルイス投手の逆で、Run
Supportがたった2・30点しかない。ミラー投手が投げると、なぜか味方打線が沈黙してしまうのだ。
16敗もすれば、普通なら先発ローテーションから外されるか、調整のためにマイナーに落とされるかのどちからかだが、いかんせん投球内容が良すぎるのだ。ここまで相手打線を0点もしくは1点に抑えた試合が14、2点以下に限ると21試合もある。チーム内で最も安定した投球を続けているのだ。
約6カ月間で162試合を戦う長丁場。好不調の波はあって当然だが、ミラー投手の場合は波≠烽ネいのだ。5月17日の時点で5勝1敗と絶好調だったが、その試合を最後に1勝もしていない。23試合に登板して0勝15敗。勝てない時期が4カ月も続いている。7回1失点と好投した8月31日のマイアミ・マーリンズ戦の後、担当記者たちにこんな話をしている。
「だれもがいい成績を残したい、最高の選手になりたいと思っていると思うけど、結局のところ、マウンドに立ち、相手を抑えることがすべてであって、数字はあとからついてくるものだと思っています」
5月を終えた時点で5勝2敗、防御率1・48。抜群の成績で7月に開催されたオールスターゲームに選出された。ところが、一転…。23試合連続勝利なし、15連敗は、いずれも球団ワーストとしてその名を残すことになった。
2009年にセントルイス・カージナルスから1巡目、全体19番目で指名された逸材。13年の成績は15勝9敗、防御率3・06。昨季は3・74ながら10勝を挙げている。昨年のオフにトレードでやってきた新天地で不運なシーズンを送っている。10月10日は25歳の誕生日。将来有望な若者が今季の経験がどう活きるのか。来シーズンのピッチングが今から楽しみだ。
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