メジャーリーグの2008年プレーオフは、カブスとホワイトソックスが1906年以来、実に102年ぶりに“アベック出場”を果たしたが、結果はそろって地区シリーズ(1回戦)で敗退した。シカゴ勢同士のワールドシリーズ実現に淡い期待を抱いてが、しっかりと裏切ってくれた。特にカブスの戦いはあまりにもふがいなかった。
さて、先月号ではシアトル・マリナーズの日系4世のドン・ワカマツ新監督を紹介しつつ、史上初めて総年俸1億ドル以上(1億1700万ドル)の球団が100敗を喫する不名誉な記録についても触れたが、マリナーズに負けず劣らず屈辱的なシーズンを送ったのがニューヨーク・ヤンキースだった。
08年の総年俸はマリナーズのほぼ2倍の2億900万ドル。2位のニューヨーク・メッツに7000万ドルもの差をつける金額だった。シーズンの成績は89勝73敗と勝ち越したものの、タンパベイ・レイズの大躍進に押しのけられた格好で地区3位となり、プレーオフの連続出場記録は13年で途切れてしまった。
1998年から2000年にかけての3連覇を含む、ヤンキースの通算26度のワールドチャンピオンはメジャー史上最多。「常勝軍団」と呼ばれていたころが懐かしくなりつつある。03年を最後にワールドシリーズの舞台からも遠ざかってはいるが、観客動員数は4年連続で400万人を突破しているのはさすが。潤沢な資金にものを言わせた札束攻撃で大物選手をそろえる手法は決して間違ってはないのだ。
今オフもヤンキースの補強はえげつなかった。 来季に向けての補強ポイントは先発投手。シーズン途中で崩壊したローテーションを5人きっちりそろえることだった。アメリカだけでなく、世界中の経済が混乱する中で、ヤンキースの金遣いの荒さは異常にも見えるほどだった。
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たった二人で2億2千万ドルという大金を動かしたAJ・バーネット(左)とCC・サバシア(右)
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まず、ターゲットとして狙いを定めたのが、ブルワーズからフリーエージェント(FA)となったCC・サバシアだ。昨季の成績は17勝10敗、防御率2・70。シーズン途中にクリーブランド・インディアンスから移籍した後は破竹の9連勝でチームを26年ぶりのプレーオフに導いたのだった。
01年のデビュー以来、エースとしてチームを牽引する28歳にヤンキースが提示した条件は7年1億6100万ドル。投手では昨オフにメッツと6年1億3750万ドルで合意したヨハン・サンタナを上回る史上最高額だ。これだけでも十分驚きに値するのに、そのわずか2日後にはトロント・ブルージェイズからFAとなったAJ・バーネットを5年8250万ドルで獲得してみせたのだ。
締めて2億2000万ドル。今オフのFA投手トップ2の争奪戦をあっさりと制してしまったのだ。それでもまだ補強は完全ではないようで、12月17日現在、レッドソックスが8年契約(推定1億6000万ドル前後)を提示した報じられている一塁手のマーク・テシェーラ(前エンゼルス)、さらに、プレーオフでカブスを苦しめたマニー・ラミレス(前ドジャース)にも触手を伸ばしている。
ヤンキースには07年オフに10年2億7500万ドルのメジャー史上最大の契約を結んだアレックス・ロドリゲス、同2位となる10年1億8900万ドルの契約を00年に結んだデレク・ジーター、捕手の最高額となる4年5240万ドルの契約を手にしたホルヘ・ポサダもいる。現在、右肩手術からのリハビリを続けているポサダが順調に回復すれば、来季の開幕戦はサバシアと史上最高額のバッテリーを組むことになる。
来季は新球場をオープンさせるヤンキース。いつまでもレッドソックスの後塵に拝してばかりはいられない。勝利のためなら金の出し惜しみはしない。名門復活に燃えるヤンキースが09年シーズンにかける意気込みはすさまじい。
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