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衝撃のニュース 2007年11月15日。この日は、大リーグ界のみならず、全米に大きな衝撃を与える日となった。
・大リーグ最多本塁打記録保持者のバリー・ボンズがステロイド使用に関する偽証罪で起訴
・大リーグの年間収入が過去最高の60億ドル(約6600億円)
・アレックス・ロドリゲスがヤンキースと史上最高の10年2億7500万ドル(約300億円)で基本合意
これら驚きのニュースが立て続けに報じられたのだ。
共通するのは「大リーグ史上最多(最大)」という言葉。しかし、3つの事象をさらに読み解いていくと、互いにリンクしていることが分かる。それが見えた時、僕の心の中にある感情が沸き起こった。
どんな感情なのか、を書く前に、まずは、これらがどうリンクするのかを説明したい。
ボンズの起訴。これは、栄養補助食品会社のバルコ社に端を発したもので、同社が提供した薬物の使用疑惑をかけられたボンズが03年12月に出席した連邦陪審院でその使用を一貫して否定したことが偽証に当たる、というもの。
ボンズと言えば、今年8月にハンク・アーロンのもつ755本塁打の大リーグ通算記録を更新した選手。疑惑の渦中にありながら、記録更新直前は全米中がその1球、1打席に熱狂したことは記憶に新しい。
ここで、1つ言えるのは、ボンズが今季の収入記録更新に大きく貢献していることだ。それは、ボンズがプレーしたジャイアンツの観客動員数を見ればよく分かる。
今季のジャイアンツが地区最下位に沈んだにも関わらず、ホーム、アウェーともに客の入りは好調だった。特に、敵地では球団史上3位となる284万6460人を動員。ファンが球場に足を運んだ目的はボンズのホームラン見たさ。それは、世界各国から集ったメディアも同じだった。
98年のマグワイアとソーサの世紀の本塁打王争いに嫉妬し、薬物に手を出したとも伝えられているボンズ。もしそれが事実なら、ボンズの行動は「オレもスポットライトを浴びたい」というエゴによるものでしかない。もちろん、僕は彼を擁護するつもりはないが、なぜボンズの起訴が新記録達成の直後だったのかを考えた時に、大リーグがボンズのパフォーマンスに乗っかった気がしてならない。ボンズのことを不憫にさえ感じてしまう。756本目のホームランを放ち、ホームベース上で愛息ニコライを抱き上げ、キスをした光景を思い出すと泣けてくる。息子の気持ちを思うとなおさらだ。
そこにA・ロドリゲスの契約がどう絡むのか。それは、1選手に10年2億7500万ドルという莫大な金を支払えるようになったのは大リーグの繁栄があったから。そして、年俸とは別に同選手はボンズの記録を更新した際には総額3000万ドル(約33億円)ものボーナスを手にすることになっている点も興味深い。自信があるからこそ付け加えた条項である。
今季終了時のA・ロドリゲスの本塁打数は517本。ボンズのそれは762本だから、年間40本ペースでいくと7年後に追い抜く計算になる。その瞬間、ボンズの存在は小さいものになってしまうだろう。大リーグ史上最大の汚点と呼ばれる可能性もある。
2007年11月15日に立て続けに報じられた3つのニュース。僕の心はせつない気持ちでいっぱいになった。
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