|
プロ・スポーツ、とりわけ、メジャーリーグでは、強いチームの条件の第1に挙げられるのが、監督とゼネラル・マネジャー(GM)の良好な関係だ。
監督とGM。前者の仕事は試合の中で選手に的確な指示を出すことであり、後者のそれは、監督の駒となるべき選手を傘下のファームで育てたり、トレードやFAで補強することだ。両者の良好な関係、綿密な意思疎通なしには、強いチームを作り上げることは不可能と言ってもいい。
ところが、実際は、監督が選手の補強を訴えても、GMが聞く耳をもたないこともあれば、ある主力選手がスランプに陥っても大枚をはたいて獲ってきたとの理由でGMが監督に起用を強要することだってある。さらには、両者の間に上下関係があって気を使い過ぎたり、逆にリスペクトを忘れてメディアに不満をぶちまけてしまうこともある。それを理由にチームが空中分解したケースは数え切れないほどある。
監督とGMが一枚岩となったチームは強い。それを実感した出来事が10月に入って立て続けに起こった。
■10月3日、カージナルスのウォルト・ジョケッティGM解雇
■同11日、ブレーブスのジョン・シューホルツがGM職を退き、球団社長就任
■同16日、エンゼルスのビル・ストーンマンGM辞任
■同18日、ヤンキースのジョー・トーリ監督退任
いずれも一線から退くという寂しいニュースだが、ここに記した4球団に共通するのが、同じGMと監督が長期に渡ってコンビを組み、プレーオフの常連になっているという点だ。
カージナルス。言わずと知れた昨季のワールドシリーズの覇者だ。監督は現役最多の2375勝を挙げているトニー・ラ・ルーサで、ジョケッティとは96年以来、11年間コンビを組み、その間に地区優勝7回、ワールドシリーズには2回進出している。
ブレーブス。ボビー・コックス監督とシューホルツは91年以来のコンビで今季はメジャー最長の17年目。95〜05年の11連覇を含む14度の地区優勝を誇り、ワールドシリーズには5回出場。95年に世界一になっている。
エンゼルス。ストーンマンとマイク・ソーシア監督の歴史は浅く、今季が8年目。しかし、今季を含め地区優勝は3回、02年には球団創設42年目で初のワールドチャンピオンになっている。
ヤンキース。メジャー最年長67歳のトーリ監督がブライアン・キャッシュマンGMとコンビを組んだのは98年から。10年目の今季は地区2位に甘んじたが、昨季まで9年連続地区優勝を果たし、98〜00年には3年連続世界一に輝いている。
また、シーズン中に今季限りの退任を発表したツインズのテリー・ライアンGMは緊縮財政の中、02年に就任したロン・ガーデンハイア監督とのコンビでこの6年間で地区優勝4回を誇っている。
メジャーの中には、マーリンズのように監督やGMだけでなく、オーナーまでもが目まぐるしく代わりながらも97年と03年にワールドチャンピオンになった例もあるから、正解は1つではないが、監督とGMの関係が5年続けば、そのチームの強さは本物と言っていい。
メジャー史に残る一時代を築いてきた“名コンビ”がいなくなってしまうのは悲しいもの。メジャーリーグの勢力図が変わろうとしているのかもしれない。
|