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メジャーリーグがポスト・ステロイド時代にあると言われて久しい。
100年を超えるメジャーリーグの歴史において最大の汚点とも言うべき禁止薬物の乱用。かつてホワイトソックスにも所属したホゼ・カンセコは、その著書に現役時代に自分が使用していたことを激白するとともに、使用した選手を実名で暴露した。96年のナ・リーグMVPを獲得したケン・カミニティは引退後に蛋白同化ステロイドの力を借りてプレーしていたことを公表し、そして、3年前に41歳の若さでこの世を去った。
05年には、カンセコが実名で挙げた中の一人、ラファエル・パルメーロ(当時オリオールズ)が、下院議員での公聴会に召還された際に“無罪”を断言しながら、その後の薬物検査で陽性反応。その1カ月前に達成したメジャー23人目の3000本安打達成の記念式典が延期されたばかりか、その年を最後に同選手は表舞台から姿を消した。
ジャイアンツのスラッガー、バリー・ボンズの筋肉増強剤使用疑惑で一気に世間に知れ渡ることになったこの問題。サンフランシスコの地元紙記者が著した本によれば、ボンズが薬物に手を染める引き金になったのは、97年のカブスのサミー・ソーサとカージナルスのマーク・マグワイアのホームラン王争いだった。メディアが2人の1打席、1スイングを追いかけ、ファンもその結果に一喜一憂。マグワイアが70本塁打の大リーグ記録を打ち立て幕を閉じたシーズンは、日本でも大々的に報じられた。ボンズはそれに嫉妬したのだという。そして、01年に73本のアーチを放ち、メジャー記録を塗り替えたのだった。
華やかな舞台の裏に存在した暗い影。マイナス・イメージを払拭すべく、大リーグ機構は昨季から1度目の違反者には50試合の出場停止、2度目は100試合、3度目は永久追放という厳しい罰則を選手会に認めさせるとともに、国の協力を得て撲滅運動を大展開している。しかし、今なお、選手(特にマイナー選手)の違反は後を絶たない。ただ、それも、言い換えれば、現在プレーしている選手はみなクリーンだということ。クスリに頼らない真の実力者だけがフィールドに立っているということだ。
そんな中、今季打ちまくっているのが、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスだ。 00年オフに史上最大となる10年2億5200万?の長期契約を結んだ選手として知られているスーパースター。その彼が今季21試合の出場(4月27日現在)で、4月の月間最高となる14本塁打を放ち、34打点をマーク。02年に残した自己記録の57本塁打&142打点どころか、メジャー記録を樹立しそうな勢いなのだ。
高卒後の94年にメジャーデビュー。初めて1年間をメジャーで過ごした96年に36本塁打&123打点を記録して一躍、リーグを代表する強打者の仲間入りを果たした。7月で32歳。メジャー通算本塁打数は478本。史上最年少で450本を通過している。
ボンズがハンク・アーロンのもつ通算最多本塁打755号にあと14本に迫っている。かつてカブスの人気選手だったサミー・ソーサ(現レンジャーズ)は2年ぶりに大リーグに復帰し、歴代最多となる44球場で本塁打を放って注目を集めた。
しかし、悲しいかな。彼らがどんなにクリーンな体だったとしても、どうしても暗い陰はつきまとう。大リーグがポスト・ステロイド時代と呼ばれなくなる時。それは、その種の問題とは無縁な打者がシーズン最多本塁打記録、そして、通算最多記録を塗り替えた時なのだろう。ロドリゲスへの期待は大きい。
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