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サッカーの元フランス代表、ジネディーヌ・ジダンのヘッドバットを歌った曲が世界各国でヒットしているという。
今さら説明するまでもなく、これは7月にドイツで開催されたワールドカップの決勝戦、フランス対イタリアでぼっ発した事件に便乗したものだ。
この試合を最後に現役引退を発表していたジダンは後半戦終了間際にイタリア代表のマルコ・マテラッツィの侮辱発言にぶちギレ。怒りに任せて相手の胸に頭突きを叩き込み一発退場。支柱を失ったフランスはPK戦の末に敗れ、波紋を広げた一戦となった。
全世界のメディアは連日のようにその問題シーンを報道。ネット上には、その映像を使った「頭突きゲーム」なるものが登場したかと思えば、ある中国人貿易商は頭突きシーンをシルエットだけのデザインに加工して国内で商標登録するなど、大きな社会現象となったのだった。
ここでふと考える。
あそこでジダンが頭ではなく、手を出していたらここまで注目されていただろうか、と。
例えば、大リーグ。両軍入り乱れての大乱闘は日常茶飯事で、先日のエンゼルス?レンジャーズ戦で死球を巡って選手たちが大立ち回りを披露した。突進してきた相手打者にサイドスローの投手が下からパンチを突き上げるアッパーカットで応戦したシーンに妙に関心されられたが、
”名場面“の1つとして人々の記憶に残っているのは昨季までホワイトソックスでプレーしていたカール・エベレットの頭突きだろう。こちらは球審のストライク判定をめぐってのひと騒動。顔と顔をつき合わせた猛抗議の最中に勢い余って?頭をゴチン。即退場となった。以来、
”頭突き男“として知られるようになった。
今年7月下旬にはこんな事件もあった。
場所はイギリス・ロンドンの競馬場。ポール・オニール騎手が自分を振り落とした馬に対し、ヘルメットをかぶったままヘッドバットをかましたのだ。前代未聞の
”動物虐待“。非難の嵐に同騎手は「ごめんなさい。もうしません」と謝罪したのは言うまでもなかった。
頭蓋骨は人間の肉体の中で最も硬い部分。それを戦いの武器として使う手はないが、その姿は独特でどこかユーモラス。失礼な話だが、なぜか笑ってしまう。プロレスラーの大木金太郎やボボ・ブラジルが単調な頭突き攻撃だけで人気を集めた理由と無関係ではないだろう。
サッカーはゴールキーパー以外の選手は手を使えないスポーツ。怒りが沸点を超えたジダンの頭突きは自然な反応と考えられるが、舞台は世界最大規模のスポーツイベント、ワールドカップ。しかも決勝。手か、頭か。インパクトが強いのはどっちか。
”悲劇“の裏にスーパースターのしたたかな計算があったとしてだれも驚きはしないはずだ。
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