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男社会と思われがちな大リーグの世界だが、昨今は女性の進出がめざましい。
それを象徴する出来事が、7月に行われたマイナーリーガーのオールスター戦「フューチャーズ・ゲーム」であった。同イベントはメジャーリーガーの球宴の“前座”として毎年行われているものだが、今回は三塁塁審を務めたのが、リア・コルテシオさんだった。プロ野球審判歴4年の29歳。現在はマイナーリーグ2Aのサザン・リーグに所属しており、今回はその実力を評価されての抜てきだった。
会場は、パイレーツの本拠地PNCパーク。将来有望な大リーガーの卵たちが顔をそろえる一戦が一際注目を集めたのは、コルテシオさんが女性としては史上初めてメジャーの球場で審判を務めたからだ。実は、米国には過去に5人の女性審判が存在したが、いずれもマイナーリーグ止まり。最も大リーグに近かったのは、80年代後半に活躍したパム・ポステマさん。開幕前のオープン戦で審判を務めたことはあったが、すべてキャンプ地の球場。大リーグ球場に立つことは一度もなかった。
開幕直後にはちょっとした事件もあった。4月22日、ニューヨークのシェイ・スタジアムで行われたメッツ対パドレス戦。TVカメラが捕らえたのは、パドレスのベンチ内で選手たちに混じって試合を観戦する女性だった。それを目にしたメッツ専属アナウンサー、元大リーガーのキース・ヘルナンデス氏が叫んだ。
「女性はキッチンにいるべきであって、ベンチにいるのはふさわしくない」。
その“批判”の的となったのは、女性では大リーグ史上初となる球団専属マッサージ・セラピストのケリー・カラブリースさん。今年で3年目を迎え、選手たちから絶大な信頼を集めている球団職員だ。大リーグに携わっている人間がそれを知らないはずがない。どんな理由があろうとも、ヘルナンデス氏の発言は明らかな女性蔑視。翌日、謝罪したのは言うまでもなかった。
大リーグには、代理人との契約交渉や、トレード、ドラフトなど、選手の運営に携わるゼネラルマネジャー(GM)という職があるが、その補佐的役割、アシスタントGMとして活躍している女性もいる。ヤンキースのジーン・アフターマン女史と、ドジャースのキム・アング女史だ。前者は03年に松井秀喜外野手の入団に際して来日するなど、日本でもよく知られた存在。後者は昨年オフにドジャースの新GM候補として名前が挙がり、史上初の女性GM誕生として大きな注目を集めた
人物だ(結局、ジャイアンツのネッド・コレッティGM補佐が新GMに就任した)。
試合中のフィールドで目にする女性と言えば、せいぜい、ファウルボールを集めるボールガールぐらいだが、こうして様々な形で女性が大リーグに関わっていることを忘れてはならない。今回、取り上げたのはそのごく一部。プレーする選手はみんな男性だから見落としてしまいがちだが、球団の広報担当をはじめ、多くの女性が大リーグを支えている。
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