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人気と実力を兼ね備えたメジャーリーガーたちが一同に会するオールスターゲームが7月12日に行われる。76回目を数える今回の開催地は、ミシガン州デトロイトのコメリカ・パークだ。「ミッドサマー・クラシック」とも呼ばれている一大スポーツ・イベント。それは、野球ファンを第一に考えた“工夫の結晶”でもあった。
始まりはシカゴだった。1933年。シカゴ・トリビューン紙のスポーツ・エディター、アーチ・ウォード氏が同年開催のシカゴ博覧会の目玉イベントとして発案したのが、アメリカン・リーグとナショナル・リーグのスーパースターたちを集めたドリーム・ゲームだ。当時のア・リーグ会長、ウィル・ハリッジ氏に提案したところ、同会長は大興奮。ナ・リーグ球団のオーナーたちがシーズン中のスケジュール調整に難色を示したものの、ちょうど7月6日が両リーグとも試合がなかったことから開催日は決定した。
場所はホワイトソックスの本拠地、旧コミスキーパーク。4万7595人の大観衆を飲み込んだスタジアムで記念すべき初本塁打を放ったのは当時、38歳のベーブ・ルース。ファンの期待通りのパフォーマンスを披露した。
今でこそ、先発野手はファン投票により選出(投手は監督推薦)されているが、35年以降は監督が全メンバーを決定。47年にファン投票が復活するも、59年には再び廃止。70年に再度、導入されて現在に至っている。
楽しみたいのはファンばかりじゃない。62年からは勝利に最も貢献した選手をMVPとして特別表彰することを決定。選手たちの気持ちを盛り上げる“ニンジン作戦”も実施した。2002年からは大リーグ最後の4割打者の功績を称えて、テッド・ウィリアムズ賞と名称が変更されている。さらに、85年にはホームラン競争もスタート。今では本番前日の恒例行事として大きな注目を集めている。
これら工夫はすべてファンの興味をかきたてるものだが、予想外のハプニングから生まれたルールもあった。
02年、ウィスコンシン州ミルウォーキーのミラーパーク。試合は7対7の同点のまま延長12回に入ろうとしていた。ところが、両軍ベンチから両監督がスタンドで観戦していたバド・セリグMLBコミッショナーに向かって歩き出したのだ。
ア・リーグのジョー・トーリ監督とナ・リーグのボブ・ブレンリー監督、そしてセリグ氏。何が起こっているのか理解できない客席にざわめきが起こった。数分後、場内アナウンスにより発表されたのは、引き分けの裁定。両軍ともに選手を使い果たしたことがその理由だった。
引き分けは61年にもあったが、雨により試合継続が不可能と判断されたもの。天候に左右されることなく、ドローに終わったのは史上初のことだ。「決着をつけろ!」。フィールドに大ブーイングが起こったのも無理はなかった。
後日、新たなルールが発表された。勝利したチームには、ワールドシリーズのホームフィールド・アドバンテージが与えられるというものだ。つまり、勝ったリーグがワールド・シリーズの第1、2、5、7戦の開催権を獲得できるということ。それにより、これまでは出番を終えてさっさと着替えて球場を後にしていた選手たちは勝敗を見届けるようになり、選手たちは最後まで集中力をもって試合に臨むようになったのだった。デトロイトでのオールスターゲーム開催は34年ぶり、4回目。今年はどんなドラマが繰り広げられるだろうか。
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