大リーグのミネソタ・ツインズがアメリカン・リーグ(ア・リーグ)中地区で3年連続の優勝を決めた。9月20日、シカゴ・USセルラーフィールドで行われたホワイトソックス戦に完勝しての祝杯。4年ぶりのペナント奪回を目指したホワイトソックスにとっては本拠地で敵の歓喜の声を聞くという残念な結果に終わってしまった。
ツインズの地区3連覇は、ナショナル・リーグ東地区13連覇のアトランタ・ブレーブスやア・リーグ東地区7連覇を目指すニューヨーク・ヤンキース(9月24日現在)には及ばないが、大きく評価されているのは、厳しい財政の中で高いチーム力を維持しているという点だ。
01年には大リーグの ”お荷物“ として削減球団の対象にもなったツインズの今季開幕時の総年俸は大リーグ30球団中19位に当たる5358万5000ドル。メジャー1の金持ち球団、ヤンキースの1億8419万3950ドルとは3倍以上の開きがある。
いかにお金を使わずにチームを強化するか。これは、スモールマーケットの球団にとって永遠の課題だが、ツインズに負けず劣らずそれを実践しているのが、オークランド・アスレチックスだ。強豪がひしめくメジャー最激戦区のア・リーグ西地区において、昨季の総年俸はメジャー23位、2年前は同28位ながら2年連続優勝。プレーオフには00〜03年まで4年連続で進出し、その間の勝率・606(392勝255敗)は大リーグ最高の数字だ。今季も総年俸5942万5667ドル(同16位)ながら3連覇を目指して首位を走っている。
その節約の工夫は、先発投手陣を見れば一目瞭然だ。今季は ”ビッグ3“と呼ばれているマルダー、ハドソン、ジトに、ハーデンとレドマンが加わった先発ローテションは、すでに5人全員が10勝以上。その顔ぶれは、レドマンを除く4人が大学出身の生え抜き選手なのだ。選手運営に携わっているビーンGMは説明する。
「大学生は即戦力となる可能性が高いし、ドラフトの年までじっくりとその投手の能力を見極めることができる。結果として高校生よりもリスクが小さいし、それに安い。」
大学生が高校生より安いというのは、有望な高校生はプロ入りと奨学金付きの大学を天びんにかけるため、契約金が高騰する傾向にあるが、大学生は卒業後はプロ以外に選択肢がないため、球団側が交渉を有利に進めることができるからだ。マルダーら4人は97年から99年にかけてプロ入りした投手。個々の能力を見極め、自らの手で育成するシステムが浸透している証拠だ。
ドラフト後の方針も徹底している。若い選手がメジャーである程度の力を発揮し始めると、すぐに長期契約をオファーするのだ。1年ごとの契約だと、好結果を残したシーズンの後に年俸が跳ね上がる可能性があるが、低年俸の段階で複数年契約を結ぶことで ”上げ幅“を抑えることができるからだ。そして、好結果を維持して契約満了しFAとなって高額契約を要求してきても、その頃には ”後継者“が育っている仕組みになっている。
例えば、テハダという選手は00年に23歳の若さで4年契約を結び、契約が満了した昨オフに球団に契約更新を求めたが、交渉は決裂。最終的にFAとなり、6年7200万ドルの大型契約でオリオールズへ移籍した。しかし、アスレチックスにとって大きな損失とならなかったのは、01年ドラフトで獲得した23歳のクロスビーがメジャーでやれるメドが立ったからだった。
経済的に苦しくてもメジャーで渡り合えることを証明しているツインズやアスレチックス。間もなく、プレーオフが始まる。 ”貧乏球団“の健闘を心から祈っている。