大リーグは7月13日のオールスター戦を境に後半戦に突入する。各球団は10月から始まるプレーオフを見据えて戦力補強を行うのだが、最も大きな動きを見せるのがオールスター戦前後のこの時期なのだ。
「トレードは自分の仕事の中で最もエキサイティングなことの1つだね」。以前そんな話をしてくれたのがアスレチックスのビーンGMだ。毎年のようにアッと驚くトレードを成立させ、ピンポイントで戦力補強。スモールマーケットながら昨季まで4年連続でプレーオフに進出している強豪チームの選手運営をする統括している。
その〔トレードの魔術師〕が動いたのは6月22日のこと。オフにFA契約したローズ投手が抑えの器でないと見切るや、アストロズの抑えだったドーテル投手を獲得し、代わりに若い有望選手2人をロイヤルズへ放出。ロイヤルズは主力のベルトラン外野手をアストロズへ出す三角トレードを成立させたのだ。
ここで興味深いのは各球団の狙いだ。ア・リーグ西地区で優勝争いをしているアスレチックスにとって安定感のあるクローザーは不可欠な存在。ナ・リーグ中地区でカブスやカージナルスと首位攻防を繰り広げているアストロズにも外野守備強化のため走攻守がそろったベルトランはどうしても欲しい選手だった。その直前に高給取りのヒダルゴ外野手をメッツへ放出するという布石も打っている。
では、ロイヤルズはどうか?トレードが発表された時点で成績は27勝40敗。ア・リーグ中地区首位のツインズとは10ゲーム差。チームの中心選手で高額のベルトランとの引き換えに若い選手を獲ったのは、今季のプレーオフ進出を諦めて来季以降を見ているということ。いわゆる〔白旗トレード〕だ。さらにその裏にはベルトランが今季終了後にFAとなり、いずれにしてもチームを去るという計算もあるのだ。
それと似たようなトレードが5日後にも起こった。マリナーズがエース格のガルシア投手とデービス捕手をホワイトソックスへ放出し、若いオリーボ捕手と内外野の若い有望選手2人を獲得したのだ。マリナーズはア・リーグ西地区の最下位を独走中。ガルシアは先発ローテに入っている主力選手だが、ベルトラン同様、今オフにFAになることを考えると、シーズン中に出しておく方が〔得策〕というわけだ。
一方のホワイトソックスはア・リーグ中地区の2位ながらツインズと熾烈な首位争いを演じている。バーリーとロアイザの左右両先発に加え、もう1枚しっかりした先発が欲しかったという事情がある。開幕では抑えだったものの精彩を欠いたコッチ投手をマーリンズへ放出し、高津投手を守護神に抜てきしたのは後半戦を見据えての動きでもある。
シーズン途中の選手の大きな移動も大リーグの醍醐味の一つ。トレードが発表された時、各球団の裏事情を探ってみるといい。新たな面白さが発見できるはずだ。