うわさ通りの明るさだった。昨年11月にホワイトソックスの第37代監督に就任したオジー・ギーエン監督がいよいよ開幕を迎える。キャンプでは精力的に動き回り、選手たちと笑顔でコミュニケーション。「HAVE
FUN」を合言葉に40歳の青年監督が4年ぶりプレーオフ進出を目指す。
新しいシーズンに向けて戦力を整える3月。ホワイトソックスがキャンプを行うアリゾナ州ツーソンのクラブハウスに笑いが起こった。掲示板、食堂のドアなど、至る所に張られていたのは「OUR
TRUE LEADER(我らの真のリーダー)」と題したモノクロのビラ。その写真の中にいたのは、ロングヘアのカツラをかぶり、胸元あらわのセクシー衣装を身に着けたギーエン監督だった。
「HAVE FUN」
ギーエン監督の野球に取り組む姿勢はこの2文字に凝縮されている。2月20日。キャンプ初日。取材陣を前にして新人監督は熱弁を振るった。
「選手たちと会話をする。これが私の哲学なんだ。みんなで野球を楽しむことによってチームが一丸となる。自分を監督ではなく、友達と思ってほしい。そうすれば気兼ねなく色んな話ができるんだから。選手とのコミュニケーションはとても大事なこと。それがキーとなる。いつも笑顔でいるつもりだよ」
ベネズエラ初のメジャー監督としても注目されているギーエン監督は1964年1月20日に生まれた。メジャーデビューは1985年、21歳の時だ。その年は150試合に出場して打率・273の数字を残し、ア・リーグ新人王を獲得した。以来、97年までホワイトソックスの一員として球団歴代5位となる1743試合に出場し、1608安打(同6位)、693得点(同9位)を記録。13年連続で開幕戦の先発遊撃手を務め、歴代ショートストップでは最高の守備率・974を残した。まさにホワイトソックスの看板選手だった。
98年にオリオールズに移籍してからは、ブレーブス、デビルレイズを渡り歩き、現役を引退したのはわずか4年前の00年。その翌年にエクスポスのコーチ、02年からはマーリンズのコーチを務めた。昨季のマーリンズはワイルドカードながらジャイアンツ、カブス、さらにはワールドシリーズでヤンキースを撃破。戦前の予想を大きく覆し、ワールドチャンピオンに輝いた。
マーリンズにとっては97年以来となる2度目の世界一。その話題に及んだ時だ。突然、ギーエン監督が
”愚痴“をこぼし始めた。
マーリンズの本拠地、プロ・プレーヤー・スタジアムはNFLのマイアミ・ドルフィンズのホームでもある。マーリンズのチームカラーはブルー、シルバー、黒なのに、球場内の配色はドルフィンズ・カラーのオレンジと水色。「スタジアムは中も外もオレンジと水色ばっかり。それに、ドルフィンズのロゴがデカデカとあるのに、マーリンズのはこーんなに小さい。2回もワールドチャンピオンになってるのにだよ」。「F」ワード連発のトークに周りの記者からは大きな笑いが起こった。
一時が万事がこの調子だからチームが明るくならないはずがない。見た目は大雑把だが、実は気配りの人。昨季まで6年間指揮を執ったマニエル監督の時には度々あったチーム内のもめ事も全く見当たらない。
ギーエン監督の ”デビュー戦“は4月5日のロイヤルズ戦。メジャー30球団の中で2番目に若い青年監督がどんな戦いをするのか見ものだ。