カイロプラクティックといういう言葉を聞いて、一般的な日本人は「あのボキボキするやつでしょ」とか、「揉んでほぐす整体のことね」とか、「聞いたことはあるけど、知らない」というような印象を持っていらっしゃる方がほとんどでしょう。それは、日本ではカイロプラクティックの身分法(医師法のような)が無く、資格も免許も制定されていないことで、正式な認定や普及がなされていないからです。
しかし、カイロプラクティックは、発祥の地アメリカは勿論、カナダ、英国、オーストラリア等の西洋先進諸国を中心に、南米のボリビア、中東のサウジアラビア、アフリカのボツワナ、アジアのフィリピンやタイなど45カ国で正式に認定され、世界90ヶ国以上で臨床されて、世界保健機構(WHO)からも世界3大医学に西洋医学・東洋医学・カイロプラクティックとして認められています。西洋医学の医師以外は認めない日本は、医学界も閉鎖的でカイロプラクティック後進国なのです。
日本の医師(MD)は、高卒後に大学の医学部で6年間の教育を受け、国家試験合格を経て医師免許が与えられますが、米国の医師は8年間です。カイロプラクティックも米国では、一般大学でカイロプラクティック予備課程と呼ばれる物理学、生物学、有機化学など定められた科目・単位を履修する学士号課程(4年)を修了後、カイロプラクティック大学でカイロプラクティック医師(DC)課程を大学院レベルで4年間履修し、合計8年間の教育を受けてDC学位を取得し、国家試験合格後、州の開業試験などを経て州政府から免許されます。
医師(MD)は、さらに博士課程を経て医学博士号(PhD)を取得できますが、カイロプラクティックには博士課程がありません。しかし、医師と同様に、認定医や専門医はあります。カイロプラクティック医師(DC)の学位を取得し、免許を取得すれば開業・臨床は出来ますが、更に認定医課程(1年以上)を経てスポーツ医学認定医や、専門医課程(3年以上)を修了して小児科学、神経学、哲学などの専門医になることも出来ます。
また、カイロプラクティックは何をするのか、という点ですが、「カイロプラクティックとは、自然の法則に基づく哲学・科学・芸術であり、病気の原因となる脊柱上の分節の不整列を、素手によってのみアジャスト(矯正)するシステムである」と、創始者のダニエル・デービッド・パーマー先生によって定義が定められているように、「背骨を素手でアジャスト(矯正)」するものです。
その目的は、人間の身体の全ての器官・臓器・組織を制御・統制している神経系の障害となる、「神経への圧迫や牽引」を起こす脊椎の不整列(サブラクセーション)を見つけ出し、その障害となる不整列を素手で矯正して取り除くことで、神経系の機能を整え、それによって自然治癒力を最大限に発揮させて健康を回復・維持・増進させることです。
アジャスト(矯正)は素手によってのみ行われますが、診察や検査は科学的に行います。カイロプラクティックは1910年にはX線写真撮影を脊柱の検査に取り入れました。これは西洋医学を含む全ての職業訓練教育機関に先駆けてのことです。また、温度計測機器を1923年に導入するなど、科学的かつ客観的なデータによって、神経圧迫を起こしている脊椎不整列の場所や状態を調べることで、触診などの経験的・主観的なデータを補い、正確な診断を得られるように発展してきました。
こういった、高い教育レベルと、科学的な診察、独自の哲学・理論に基づく手技などによって、カイロプラクティックは安全で効果的な医療として世界に普及してきました。日本でも、鍼灸・東洋医学を主とする手技療法専門誌「医道の日本」で、カイロプラクティックの特集号が発行され、カイロプラクティックを日本の医療従事者に紹介しています。
この医道の日本カイロプラクティック特集号は、2003年に第1号が発行され、筆者は国際日本人DC倶楽部会長として記者の米国取材に同行し、また論文を執筆しました。そして2016年春に第2号が発行されましたが、パーマー カイロプラクティック大学顧問を務め、専門医認定を持つ唯一の米国中西部の日本人DCとして論文寄稿の依頼を受け、「世界のカイロプラクティック事情」の論文を執筆しました。
もっと日本人の同胞にカイロプラクティックを知って頂き、その便益を享受して欲しいと思います。