筆者が調べて見つけた「一般の皆さんの役に立つ」と思われる研究報告の中から、子供に関するものを集めてシリーズで紹介している第5弾です。
■中耳炎の子供は増加傾向
親が子供をエマージェンシールーム(ER)に連れて来る理由の第一位は「耳の炎症」であり、耳の炎症で医師のオフィス(医院)を訪れる件数は、1975年は990万件、1985年は1830万件、1997年には3000万件と著しく増加する傾向にあることが判明しています。(National
Hospital Ambulatory Medical Care Survey,
conducted by the National Center for
Health Statistics, Centers for Disease
Control and Prevention.)。
■医療の見直しが必要
「The People’s Doctor, A Medical Newsletter
for Consumers」1981年8月No.5に掲載された論文では、「栄養失調の子供を除いて、単純な耳の炎症に対して行う抗生物質、抗ヒスタミン、チューブ挿入手術、扁桃腺摘出術などの一連の医学的処置が果たして効果的かどうか真剣に考える時期が来るであろう」と述べ、治療効果に疑問を呈しています。
現代医学は中耳炎を改善せず 医学誌「Lancet」1981年10月に掲載された研究によると、「投薬や手術などの医学的処置は中耳炎の治療として無益」と報告しています。この研究では、二重盲検による171人(239患耳数)の小児の急性中耳炎に対し、1.
鼓膜切開手術を受けた群、2. 抗生物質を受けた群、3. 手術と抗生物質の両方を受けた群、4.
何の治療も受けない群の4群に分けて追跡しました。
その結果、「痛み、体温、膿の出た期間、耳鏡検査、聴力、再発の可能性に関して4つの群で全く差がない」ことが判明しました。
子供の中耳炎に抗生物質は無効 医学誌「英国医学ジャーナル」で1990年、2001年、2002年と3回も「子供の中耳炎に抗生物質は殆ど有効性が無い」という結果の論文が複数の研究者から報告されています。(BMJ,
1990; 300. BMJ, 2001; 322. BMJ,2002;
325)
■中耳炎へのコルチコステロイド投与に効果なし
医学誌「英国医学ジャーナル」2009年339号に掲載された研究によると、「滲出性中耳炎へのコルチコステロイド鼻腔内投与、プラセボとの有意差なし」と報告されています。
2004〜2007年の間 に、過去1年間に滲出性中耳炎などの耳疾患を複数回発症した既往歴を有する小児217名(4〜11歳)に対して、コルチコステロイドの有効性を二重盲検無作為化プラセボ対照試験で検討。モメタゾンフランカルボン酸エステルスプレーを両前鼻孔に1日1回3カ月間適用したが、治癒率にプラセボと有意差がみられなかった。
今回は、子供の耳の炎症・中耳炎に関する研究を紹介しましたが、これらの7つの研究結果からも、子供の中耳炎が近年増加傾向にあり、また西洋医学による医学的な治療が効果を上げていないことが判明しています。 そして、こういった研究結果が医学誌に掲載されているにも関わらず、いまだに子供の中耳炎に対して効果の無い抗生物質の投与や、不要な手術を行う医師が散見されます。
次回は、親御さんの知りたい子供の耳の炎症・中耳炎に関する他の研究を紹介し、解決法の参考を掲載します。