筆者が調べて見つけた「一般の皆さんの役に立つ」と思われる研究報告の中から、子供に関するものを集めてシリーズで紹介する第2弾です。
■ 子供の風邪に抗生物質の使用は有害無益
日本小児呼吸器疾患学会と日本小児感染症学会がまとめた小児呼吸器感染症診療ガイドライン2004には、普通感冒には「抗生物質の使用は有害無益で適応がないとする報告が多い」と明記され、他のかぜについても「抗生物質は原則不要」とされた。
このガイドラインは肺炎の解説に重点を置いているが、かぜ(上気道炎)についても普通感冒(鼻咽頭炎:いわゆる鼻かぜ)、咽頭炎・扁桃炎(発熱やのどの痛み)、クループ症候群(犬の遠吠えのような咳、声枯れ)に分類した。
子供の風邪(普通感冒)に対しては、ウイルス性なので抗生物質は効果がないばかりか、骨や歯の形成を妨げたり、関節障害を引き起こしたりする恐れもあり、また不要な抗生物質の乱用によって「抵抗菌」をつくる原因になるなど有害無益。
咽頭炎・扁桃炎やクループ症候群など他の風邪も多くがウイルス性であり、溶連菌感染や一部の細菌感染を除き抗生物質の使用は不要。
■6歳以下の子供に風邪薬を投与すべきでない
米疾病管理センター(CDC)の「Morbidity
and Mortality Weekly Report」2007年1月号では、「2歳未満の小児に鎮咳薬や感冒薬を投与するのは危険な場合があり、死に至る可能性すらある
」と報告しています。
ペンシルバニア州立大学医学部小児科助教授のIan Paul, MDは、「乳幼児の両親は薬剤によって症状がそれほど緩和されない可能性があることも知っておかなければならない」と述べ、「2歳未満の集団における感冒薬および鎮咳薬の安全性および有効性を実証する研究はない」と指摘しています。
2008年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)の諮問機関が、有効性と安全性の科学的根拠がないとして、「6歳以下の子供に、市販の子供用風邪薬を投与すべきでない」という勧告を出しています。
日本小児呼吸器疾患学会と日本小児感染症学会がまとめた小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは「風邪には抗生物質の使用は有害無益」、米疾病管理センター(CDC)のリポートでは「2歳未満の小児に鎮咳薬や感冒薬を投与するのは危険」、米食品医薬品局(FDA)の諮問機関による勧告でも「6歳以下の子供に風邪薬を投与すべきでない」などと、子供に対する抗生物質や風邪薬の投与を厳しく戒めています。
近年の複数の研究で「風邪に抗生物質は有害無益で原則不要」と判明していることを根拠とし、逆に「感冒薬や鎮咳薬の安全性と有効性を実証する研究はない」という科学的根拠が無いことを基にして、これらの薬の子供への使用に警鐘を鳴らしているのです。
医薬品の服用は、よく医師と相談し、効果と副作用を認識した上で、本当に必要な場合に限って使用するように心掛けるとよいでしょう。