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ラマダン、という言葉を耳にされた事があるかと思います。頭の中で「ラマダン=断食」と思われている方も多いと思いますが(筆者もそうでした)、実はこの期間、断食だけではなく、イスラム教徒の皆さんが守り推奨される様々な行動があるようです。そして残念ながら「テロが多発し易い時期」というネガティブなイメージとはうらはらに、このラマダンの思想はとても平和的であたたかい。というわけで、今回のホクホクでは、ラマダンをよく知り、そして、イスラーム教徒の皆さんへの理解を深めるための内容をしるさせていただきます。
まず、このRamadanという言葉ですが、アラビア語で灼熱≠るいは乾燥≠ニいう意味のをRamidaから来ているそうです。イスラム暦にのっとって、毎年9月にあたる月の29日間あるいは30日間をラマダンと呼び、「聖なる月」という意味合いをもつのだそう。私達が日頃使っている太陽暦よりも、11日間短いイスラム暦(1年が354日)は、月の満ち欠けの周期に基づいた太陰暦。よって、各年(太陽暦からみて)の
ラマダンの期間が移動する理由はここにありますが。実際のラマダン開始&終了日は、その土地の指導者達が新月を自分達の目で確認して、「はい、ラマダン開始!」となるそうです。ちなみに、2019年度は5月5日が開始日となっていました。
さてさて、この29日あるいは30日の間、イスラム教徒達はどんなことをする、あるいは避ける、のでしょうか? その内容をお話する前に、まずは「五行」と呼ばれている、イスラム教徒達の基本義務となっている5つの行為をご紹介しましょう。
◆信仰告白(シャハーダ)…「アッラーフが唯一の神であり、ムハンマドは神の使徒である」と証言する。
◆礼拝(サラー)…1日5回、メッカのカアバ(聖殿)に向かってお祈りする。
◆喜捨(ザカート)…困っている人を助け、収入の一部を寄付する。
◆断食(サウム)…ラマダンの期間に、飲食や性行為、喫煙を慎む。
◆巡礼(ハッジ)…イスラーム暦12月(巡礼月とも呼ばれる)に、メッカに巡礼する。
といった内容です。この5行のうち、巡礼(ハッジ)以外を守り、自らの信仰を強化するのがラマダン期間の基本内容。この期間にコーランを全て読み返したり、様々なコミュニティ・サポートグループの寄付運動に参加したり。どうもこの「断食」というところが注目されますが、これは日の出から日没までの間、飲むことも食べる事も禁止、という内容です。ただし、お年寄りや、重い病を持つ妊婦や授乳中の女性、さらには何らかの理由で旅行中の教徒などには、断食自体が免除されるか、あるいは別の可能な時期を見つけて断食を行う、というオプションがあるそうです。
日没後のアザーン(礼拝の合図)が始まると、それは断食終了の合図となります。この時の最初に口にする食事は「イフタール(Iftar)」と呼ばれていて、1日頑張った身体に、まずは水やローズシロップの入ったジュース、そしてスープなどを入れましす。そして忘れてならないのが「デーツ(ナツメヤシ)」です。この柔らかく甘く、栄養の高い果物は「神様から与えられた食べ物」と理解されているそうで、まずは3つほど口に入れてイフタールをお祝いします。その後は、ハラルのお祈りを捧げたお肉を使った豪華な食事を、家族や友人たちと囲むのだそう。ちなみに、翌日の断食前に口にする夜明け前の食事は「サフール(Suhur)」、人によっては、イフタールからサフールまで、飲み食いしながら過ごす方もいるとか。意外や意外、このラマダン期に体重が増えてしまうイスラーム教徒が多いのも理解できますね。
断食をする理由として挙げられるのが1.教徒同士の仲間意識を高める、2.忍耐強い自己を作る、3.食べ物への感謝の気持ちを高める、4.貧しい人やコミュニティーへの理解を深める、などです。こういった理由は、イスラーム教徒やラマダン期間だけでなく、私達一人ひとりがいつでも心に持っていたい、守っていきたい内容だとは思いませんか? ところで、ラマダンが終了する日は、大きなお祭り・祝日となり、「イド・アル・フィトル
(Eid Ul-Fitr)」と呼ばれます。この日はプレゼント交換をしたり、親戚まわりをしたり、そうそう、子どもたちは日本の「お年玉」のようなお金をもらったり。食事にでかけたり、遊園地にいったり、ととにかく待ちに待った日となるわけですね。
最後に、コーランの中にかかれている文章の一説をご紹介して、今回の「ラマダンを知ろう!」テーマを終了させていただきます。家族に、あるいはお知り合いにラマダンを守っている方がいらっしゃるようでしたら
”Ramadan Mubarak!” や “Ramadan Kareem!”(良いラマダンを!)と挨拶されてみてくださいね。
ラマダンの月こそは人類の導きとして、また導きと識別の明証としてコーランが下された月である。それであなたがたの中、この月にいる者は、斎戒しなければならない。アッラーはあなたがたに易きを求め、困難を求めない。これはあなたがたが定められた期間を全うして、導きに対し、アッラーを讃えるためで、恐らくあなたがたは感謝するであろう。
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