今月は子宮頸癌を予防する予防接種についてお話します。
過去2ヶ月にわたって子宮頸癌、子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウィルス(HPV)についてお話ししました。
HPVは身近なウィルスです。2005年、CDC(米国疾病予防管理センター)では、米国内の2千万人の人がこのウィルスを持っていると推定しています。HPVには多数の異なる型があります。無害の物もありますが、それ以外は性器の疾患の原因となります。殆どの人でウィルスに感染しても、ウィルスは自然消滅します。しかし自然に消えない場合は、子宮頸癌、前癌状態の病気、性器イボを引き起こす事があります。
CDCでは、2005年に、性行為を行う人の少なくとも50%が一生のうちにHPVに罹患すると推定しています。どんな年齢の男女でも、性行為を行う人はリスクが高いと言えます。
HPVを保有している人の多くは、何の自覚症状も無く、知らずに他人にウィルスをうつしている事を意味します。
現時点で分かっている事は、子宮頸癌の発病が増加しており、その原因がHPVという性感染症から起こると言う事です。子宮頸癌を早期発見し、適切な治療をするために年に一度の子宮癌健診を行う事が今までの治療法でした。年に一度の子宮癌健診は今後も必要ですが、アメリカでは昨年6月に、このHPVに対するワクチンが認可されました。このワクチンが一般化されることにより、子宮頸癌の発病率の減少が予想されています。
現時点ではGardasilとCervarixの2種類のワクチンが使用されていますが、Gardasilのほうが一般的です。
Gardasilは注射で受けるワクチンで、ワクチンに含まれる型(6,11,16,18型)のHPVによって起きる以下のような病気を予防します。
子宮頸癌、子宮頸部の異常な前癌状態の病変、膣の異常な前癌状態の病変、外陰部の異常な前癌状態の病変、性器イボ
Gardasilは、これらの疾患を予防する事は出来ますが、治療する事は出来ません。また、Gardasilが原因でこれらの疾患にかかることはありません。
また、ワクチン接種は子宮頸癌の定期健診の代わりにはなりません。Gardasilの接種を受ける女性も子宮頸癌の定期健診を続ける必要があります。
それは、他の全てのワクチンと同様に、Gardasilでも接種した人全員で完全に病気が予防できるとは限らないからです。また、Gardasilは非ワクチン型HPVによる疾患は予防出来ません。HPVには、100以上の型がありますが、Gardasilは4つの型(6,11,16,18)を予防します、この4つの型は、子宮頸癌の約70%、性器イボの約90%の原因となるため、Gardasilの対象として選択されました。既に感染している場合は、その型のHPVには効果はありません。Gardasilは特定の型(6,11,16,18)のHPVに接触する前に接種を受けると最も効果があります。
現在Gardasilは9〜26歳の女性に認可されており、州によっては義務づける方向に向かっている州もありますが、現時点では任意です。
上記の年齢層の女性であれば、このワクチンに対しアレルギー反応を起こした事がある、免疫機能が低下している、妊娠中か妊娠を計画している、発熱を伴う疾患がある、等の症状が無い限り接種可能です。
接種の回数は計3回で、2ヵ月後、6ヵ月後に接種します。
副作用は少ないですが、一般的な予防接種にしばしば見られる、接種部の疼痛、腫れ、痒み、発赤、発熱、吐き気、めまい等があります。
Gardasilは原則として、HPVに感染する前に接種する物です。そのため現時点では若い年齢での使用のみ認可されています。
既にHPVに感染している場合は、予防接種を受ける価値はあるのでしょうか?現在の考え方では、HPVには多数の型があり、一つに感染していても、他の型には感染していないケースが多く見られます。Gardasilは4種のHPVの型に対して免疫を作りますので、有効性はあると思われます。
今後も治験が続けられ、その他の年齢層への接種も有効であると言う事が証明されればさらに幅広く使用されるでしょう。
現在HPV予防接種は日本では認可されていません。今後認可されるとは予想されていますが、目処はありません。予防接種を希望される方はホームドクターに問い合わせて下さい。