先月はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)について、話しました。
簡単にまとめますと、
ウエストの周囲径が男性が 85cm以上、女性で90cm以上あると、内臓脂肪蓄積ありと判断されます。これに加えて、脂質異常(中性脂肪の上昇、HDLの低下)、血圧異常、高血糖のうち2項目以上が当てはまるとメタボリックシンドロームと診断します。
メタボリックシンドロームとは、食事の欧米化と運動不足による内臓脂肪の蓄積を基盤として、1人に複数の危険因子が集中する為に、
動脈硬化の進行が進み、心筋梗塞や脳卒中等の病気が起こる症候群の事を言います。
さて、このメタボリックシンドロームになってしまった場合、又は予防するのにはどうすれば良いのでしょう?短期的な目標としては内臓脂肪を減らす事、長期的な目標としては合併症(心筋梗塞、脳卒中等)を減らす事です。
メタボリックシンドロームの予防、治療の第一は、生活療法です。メタボリックシンドロームの根本は、肥満(体脂肪率の上昇)が原因であり、さらにその根本には、過食、運動不足と言った生活習慣が必ずあるからです。
当院を受診する方々を見ていると、アメリカに赴任してから1〜2年で5〜10kg位太ったと言う方が非常に良く見られます。原因としては歩く生活から車社会に変わったために起こる運動不
足、及びカロリー摂取量の上昇です。アメリカで生活している以上は余程注意していないと摂取カロリーが増えてしまいます。これはとにかく食事のボリュームが多くなる、甘い物が多くなる、野菜、魚が減り、肉食が増える等から起こります。又、今まで通勤でかなり歩いていた方が
車生活になると運動量ゼロに近い生活になってしまいます。運動量が減り、カロリー数が増えれば体重が増えるのは当然の結果でしょう。
何か運動をしているか?と聞くと、よく聞く答えが週末のゴルフのみですね(笑)。残念ながらカートに乗ってゴルフを1ラウンド回り、その後にビールへと流れるようでは運動どころか返って逆効果です。
運動の役割は大きく分けて二つあります。一つは、体脂肪を燃焼させる事。もう一つは体の基礎代謝を高める事です。
余分についた体脂肪を燃焼させるためには、有酸素運動が重要です。有酸素運動とはそれ程力を入れずに、脈拍を上げる運動の事を言います。早歩き、ジョッギング、水泳、自転車、エアロビックス等が当てはまります。有酸素運動を20〜30分ぐらい、少なくとも週3回行う事が理想的です。
又、人は安静時でもカロリーを消費しており、これを基礎代謝といいます。この基礎代謝が高いほどカロリーを消費するペースが速いということです。基礎代謝を上げる臓器として重要なのが筋肉です。筋肉が増えれば安静時でもカロリーを消費する量が増えて、余分に摂取したカロ
リーを有効に消費する事が出来ます。つまり、同じ体重で、同じ物を食べても、筋肉が多い方がカロリーを沢山消耗すると言う事です。内臓脂肪を減らすにはある程度の筋肉を保つ事が重要です。
筋肉を増やすための運動としてはダンベル体操や筋肉トレーニング等の無酸素運動が有効です。
筋肉トレーニングには色々な方法がありますので、一度トレーナーなどに相談して自分に合ったプログラムを作るのが良いでしょう。
まとめとしては、有酸素運動による脂肪の燃焼と無酸素運動による筋肉の増量を組み合わせて行う事が大切です。次回は食習慣についてお話します。