とうとうシカゴに来て初めて交通事故に巻き込まれてしまった。こちらが青信号の交差点を通過しようとしていた所に横から飛び出した車にぶつけられてしまったのだ。2車線の右側を走っていた私は咄嗟に左のレーンに入って侵入車を避けようとしたのだが、避け切れず、助手席のドアにぶつけられてしまった。ぶつけた車が当て逃げしないのを確認してから、とりあえずクルマをわきに止めて深呼吸。逃げようとしていたらナンバープレートをチェックしなくてはならない。しかし、相手のクルマは私の止まった後ろに同じように停車した。バックミラーでチェックすると怖そうな人ではないので車を降りて自分の車のダメージをチェックする。ご婦人の場合などはとにかく直ぐに誰かに携帯で連絡を取った方が良いかも知れない。この間も近くの交差点で事故の当事者同士が殴り合いの喧嘩をするという事件が起こったところだった。衝突した部分を見てみるとリアの助手席の扉に穴が開いている。大した事はないが、修理費2000ドルというところだろうか。相手も出て来た。相手のクルマは前のバンパーが落ちかけている。若い男性だ。悪い奴ではなさそうなので、話かけた「何が起こったんだ?私は青信号を走ってたんだ。そしたら君が出てきた。」と切り出した。先制パンチだ。アイムソーリーを言っちゃいけないというのは色んな所で聞いているので、口が裂けても言うつもりはない。向こうも向こうで「俺のも青だった。」と言っているが自信が無さそうなのが目に見えて分かる。「そんなはずは無い。私のが青だった。君がこちらも見ずに入り込んできたんだ。」押し切る事にする。本当の話なので自信はある。もし自分に非があるのが明白であったら相手とは話さず直ぐに警察を呼び、保険会社と連絡を取るのが良いだろう。念の為にもう一つパンチを浴びせておく事にする。「君と私の話が食い違っているようだ。私は警察を呼ぶ。」と言って自分が警察を呼ぶ事をアピールした。後で聞かれた時に好印象になるかも知れない。
携帯で911に掛けた。直ぐにオペレーターが出たので「I want to report a
traffic accident.」と告げる。オペレーターはまず怪我人がいないか聞いてきたので「ノー」と応えた。次に事故の起こった場所を聞かれた。自分の車の止まっている場所から一番最寄の道の名前を2つ告げる。数秒の空白の後オペレーターが5分ほどで警察官が到着するので車の中で待機するように言った。言われた通りにしているとポリスが到着した。呼ばれるまで車で待機した。こういう場合は警察官が自分の車の横にくるまで車内で待っていた方が良い。警察官が横に立った時は窓を開けて「Good Evening, Officer.」。警察官と話す時は常に最後に『オフィサー』を付けよう。「Yes, Officer」と「Thank
you, Officer」という感じだ。ポリスに免許証と保険の提示を求められたので素直に渡す。すると、とりあえずクルマから出るように言われた。3人で少し話す。警察官は怪我人がいないのを確認した後、相手の運転手にバンパーを引き千切るように命じる。確かに既に半分落ちかかっているので、取ってしまった方が良いのだろう。その後メインストリートに止めたままではトラフィックの邪魔なので言われた通りに近くのレストランの駐車場に車を移動する。そこでもう一度3人で話す。私は出来るだけ手短に、しかし自分の信号が青だった事を強調する。ここに来て相手のドライバーは交差点の信号は全部赤だったと言い始めた。動揺している証拠だ。警察官は私達にクルマで待機するように命じる。運転免許証と保険の情報の裏を取っている様子だった。警察官はまず相手のドライバーの所に行き、更なる事情徴収を始めたようだった。その間に自分の中でストーリーを整理しておく。こういう場合スムーズに説明出来た方が印象が良いだろう。
何度か予行演習をしていると警察官がこちらに向かってくるのが見えた。窓を開けて出来るだけのイノセント・ルックでオフィサーを見上げる。そこで、もう一度説明する。終るとオフィサーが「分かった。彼(相手のドライバー)の不注意が原因だと思う。君が希望するのであれば、彼にトラフィック・チケットを書くがどうする?」と聞かれた。安心すると同時にちょっと相手に同情気分になった。どうやらその若い青年は親のクルマを運転していたらしい。こんな事になって、こっ酷く叱られるかも知れない。警察官に聞くとこういうケースの場合相手の不注意は明白なので、チケットを切らなくても問題ないだろう、それにチケットを書くと裁判所に私も出頭しなくてはならなくなると言われる。「いや、チケットは別にいい。しかし、相手に僕が彼にFAVORをしているという事を伝えてくれ。」と言うと警察官は相手を呼び、その事を相手に話す。相手は神妙に聞いており、納得したようだ。一安心していると、今度は3人ともポリスカーに乗るようにいわれる。初めて乗るポリスカーの後部座席は鉄で出来ており、堅くて座り心地が悪い。そこでILLINOIS
MOTORIST REPORT(事故に関するポリス・リポート)を渡され、この後のプロセスについて説明を受ける。ここでも警察官は相手に私がFAVORをしているので、ちゃんと対処するように念を押してくれた。心強い。さて、一通り終ると帰って良いのだが、そこで一つ気が付く。ポリスカーの後部座席は中からは開けられない。ま、当然の事なのだが、変に納得した。その日はそのまま帰宅して終わりだった。既に9時を廻っていたので保険会社に連絡するのは翌日にする。
翌日
早速自分の保険会社に電話をして事故が起こった事を説明する。私の保険会社の場合ケース番号とチーム名というのをくれた。彼らが私のケースの担当になるという。今回の私のように完全に被害者の場合はチョイスが二つある。まず自分の保険会社を通して車を修理してしまい、修理代を保険会社同士で争わせる場合。もう一つは相手の保険会社と直接やりあう場合。勿論後者の方が面倒なのだが、私の保険の種類が$500のDEDUCTIBLEだったので、前者を選んだ場合は先に500ドルを払わなくてはならない。それに前者の場合は保険会社同士で勝手な示談なんかをされてしまうと500ドルが返ってこなくなる場合もあると聞いた事があった。そこで、今回は自分に非が全くない!と思っていた私は後者を選び、全額相手の保険会社に払わせる方向で行く事に決めた。自分の保険会社を通して修理する場合の事は後で説明する。
私は早速ILLINOIS MOTORIST REPORTに記載されている相手の保険会社に電話をしてレポートする意思を伝えた。ここでもケース番号と担当者の連絡先を教えられ、そちらに連絡するように言われる。電話をすると担当者は結構物分りの良さそうな人で、とりあえず私のサイドの話を録音したいので、許可を求められる。勿論許可し、録音が始まった。言葉を選びながら相手の質問に答え、特に自分が交差点に入って来た時の情況を詳しく説明した。事故が起こった後に自分の後ろからまだ数台交差点を通り過ぎて行った事を伝え、信号が決して赤では無かった事を強調した。また、実際にはチケットは切らなかったが、警察が私に切るべきか聞いて来た事。また可哀想だと思ったので切らなかった事などを善人ぶって説明した。一通りの説明が終わり、録音機が止まると担当者はクルマのダメージの見積もりをしたいので、彼らの会社のESTIMATING
FACILITYに行くように告げた。完全に予約制のこの施設は週末も開いているというので、週末の午前中に予約を取る事にした。話はその見積もりが出てからという事になるらしい。満足した私は警察に言われた通りILLINOIS
MOTORIST REPORTの必要箇所を書き込み、スプリングフィールドのDEPARTMENT
OF TRANSPORTATION宛てに送った。
しかし、ここまで完璧に対処したと思って鼻高々だった愚かな私は自分が既に二つの間違いを起こしていた事にまだ気付いていなかった。
(私の車はどうなるのか?!次回後半に続く)