さる9月1日、オヘア空港の第一ターミナルからANAのNH1011便が成田空港に向けて飛び立ちました。今回はメディアとして同便のビジネスクラスにご招待頂きましたので、その模様をご報告したいと思います。
当日は日本に大型の台風が来ていた上に、シカゴでもサンダーストームの予報が出ていたのですが、蓋をあけてみると驚くほどの晴天に恵まれる幸運。幸先の良い滑り出しでした。出発前には搭乗カウンターで増便の記念式典が行なわれ、ANA支店長の日高氏が乗客の皆さんに向けて日頃からの感謝のご挨拶。そして搭乗の際には、昨年日本にも上陸して話題になっているギャレットポップコーンのANA仕様が乗客全員にプレゼントされました。ANAのロゴと増便日の日付が蓋に入ったあのストライプの缶かんが可愛らしいエコバッグに入っていて、素敵なギフトに居合わせた乗客もニッコリ!ギフトを手渡すANAスタッフの表情にも自然と笑みがこぼれています。
ところで、今回増便されたNH1011便にはどのような特徴があるのでしょう?これまで日系の航空会社はどれも午前中に出発する便だけでしたので、午後の便で帰るには米系の航空会社を使うしかなく、日系航空会社の木目細やかなサービスのファンにとっては寂しいところでした。しかし、NH1011便は出発時間が午後5時半と、シカゴから成田に向かう国際線では一番最後のフライトになるので、ビジネスマンにとっては平日の午後ギリギリまで仕事をしてから飛び乗れるまさに最後の砦。例えば朝一番に日本から「明後日の朝9時の会議に出席せよ」という指示があった場合でもそれを可能にすることが出来るというわけです。また、午前発のフライトではずっとお昼間に飛んでいるようなものなのでなかなか寝ることができないという声もちらほら。特に小さなお子さんが寝てくれなくて大変!なんていうお母さん方の声もよく聞かれます。その点、NH1011便では出発後4時間もすれば体内時計的には就寝時間になるため、ぐっすり寝ている間に成田に到着できるというメリットがあります。
さて、機内に入ってビジネスクラス席に着くと、まず目に付くのが枕とブランケットの上に置いてあるロクシタンのアメニティーキット。これがとってもお洒落なパッケージに入っていてその可愛らしさにビックリ!どうやら9月1日から機内に搭載される色々なアメニティーが一新されたらしく、アメニティーキットの下にあった寝具も枕は中央がうまい具合に窪んでいるので首から後頭部にぴったりフィットする気持ちの良い立体構造。ブランケットは高機能繊維で出来ていて軽い上に羽毛のような温かさのボディーラインキルトコンフォーターと呼ばれるものになっていました。このコンフォーターはとっても優れもので、膝に乗せているだけで体がすぐに温まってきます。その上、今回はこちらも新しくなったカーデガンまでお借りして出発前のスパークリングワインのサービスを受けたので、その時点でもう身体はポカポカ。さっそく眠気がおそってきてしまいました。取材しなくていいなら、このまま寝ても良かったんですけどね。
そうこうしているうちに飛行機は離陸。シートベルトサインが消えるとお待ちかねの食事サービスが始まりました。洋食メニューにも後ろ髪を引かれたのですが、やはり今回は和食をオーダーしました。前菜にはプリプリとしたホタテの素焼きや、肉厚の燻りサーモンの土佐酢掛けなどが、これまた新しいデザインの素敵な器に盛られてサーブされます。中でも、口に入れたとたんに出汁と一緒にとろけてしまいそうなくらい上質な蛸を使った炊きあわせには大感激。同じくダシの味がたっぷり染み込んだ筍や小芋などの野菜と一緒に美味しく頂きました。
この日のメインディッシュは、大きくてジューシーなサーモンの上に椎茸やエリンギ、えのきなど季節感たっぷりの素材がたっぷり使われた鮭酒蒸し茸餡かけ。おそらく酒蒸しにしているからなのだと思いますが、空の上とは思えないほどふっくらと柔らかく、そして上品に仕上がっていました。
デザートはANAケーキセレクション(2種類)のほか、チーズやフルーツなどのセレクションの中から選ぶことが出来るのですが、この日のケーキはレモンタルトとチョコレートケーキだったので、爽やか系が好きな取材班はレモンタルトをセレクト。レモンカスタードの上にモチモチ、プリプリとした球状のレモン・ジェルがのっていて不思議な食感が楽しめます。一緒に出てきたコーヒーもコクがあって美味。飛行機の中で飲む旨いコーヒーって落ち着きますよね。
この後の食事は到着の2時間前までは用意された軽食を自分の好きなタイミングで自由に食べることが出来るようになっています。あっさりした和風だしにホッと一息つける青さ海苔うどんや、玉ネギたっぷりで元気の出る牛丼、アボカドとローストビーフの入った朝食にぴったりのコブサンドイッチなど魅力的なメニューが他にもいっぱい。中でも人気の高いのが有名な一風堂のラーメンで、この日は懐かしいしょうゆ味の中華そば「ふるさと」がサーブされていました。もっちりとした歯ごたえのある麺が香り豊かなコクのあるスープに入っていて、こちらも一万メートル上空とは思えない食べ応えです。
さて、そうこうしているうちに成田空港に到着するわけですが、前出の通り、時間的にもよく寝ることが出来るフライトでした。機内で知り合ったお子さん連れのお母さんにお話を聞いたところ、やはり子供がとてもよく寝てくれて大変助かったとか。そんなNH1011便ですが、成田に到着するのが午後8時をまわる為、アジア方面にトランジットして行く乗客を対象にANAでは全クラスでホテル一泊を無料で用意しているそうです。また、ビジネスクラス以上(Zクラス以上)の乗客には、成田空港から都内/埼玉/千葉/神奈川の一部エリアへのハイヤーサービスを期間限定で行なっているそうですが、航空会社としてはかなりのコミットメントですよね。では、なぜそこまでしてANAはこの増便に踏み切ったのでしょう?
実は業界の事情通の方に聞いたのですが、今回ANAが増便をした理由のひとつとして、ゆくゆくはこのNH1011便を成田ではなく羽田に乗り入れたいという戦略的な狙いがあるのだそうです。ニューヨークやロスなどの大都市からはこぞって羽田便が飛んでいる昨今ですが、9月1日現在シカゴからの羽田に乗り入れている航空会社はありません。つまり、このNH1011便はその為の布石となのかも知れません。もしもそれが実現すれば、羽田を基点に別の国や地方に飛んでいく乗客にとっては選択肢が大幅に増えることになりそうです。是非実現をしてもらいたいものですね。
住むトコ.COM編集部