〜今を生きる〜
私には大好きなおじいさんがいます
おじいさんには大好きな おばあさんがいます
おじいさんは おばあさんの事が大好きで
いつも おばあさんのお話をしてくれます
私もおばあさんが大好きで
おばあさんは私をみる度に『大好きよ』と抱きしめてくれます
おじいさんは毎年 おばあさんと一緒にクリスマスコンサートへいきます
『おばあさんが だいすきだからね』とウィンクして笑います
『今年は君も一緒にいかないかい?』と何ヶ月も前からおじいさんに誘われ
みんな このコンサートを楽しみにしていました
『よくきたね!』とおじいさんが暖かく迎えてくれました
シュガークッキーの甘い香りとともに、おばあさんが奥から出てきました
おばあさんはいつものように私を抱きしめてくれました
クリスマスコンサートに向かう車の中
おばあさんは何度も『どこにいくの?』と聞きました
おじいさんは何度も『今からコンサートにいくんだよ』と教えてくれました
おばあさんは車の中で子どもの時の事を話してくれました
途中で言葉が出てこなくなり、『う〜ん...あぁ...』と流れる景色に助けを求めるように
悲しそうに笑いながら 空を指差し 『星がきれいね』と言いました
おばーと同じ病気だ...幼い頃の記憶が戻ってきました
おばーの家からの帰り道、父に『おばーは、自分の事が好きじゃない。おばーは何回遊びに行っても、
『あんたは誰ね?』って聞く。『みーりだよ。かっちゃんの子どもだよ。』って教えてもまた、『あんた誰ね?』って...』悲しく涙したのを覚えています
『おばーは 歳だからね...』と父がいいました
少しずつ 大好きなおばーの記憶から私が消えていく事が寂しく
悲しかったのを覚えています
コンサートの時、おばあさんはとても嬉しそうな顔をして
クリスマスソングを皆と一緒に歌っていました
おじいさんも嬉しそうに歌うおばあさんを 目を細めて見つめていました
『どの曲が一番好きだった?』と聞いてみました
おばあさんは にこりと笑い『大好きよ』と私を抱きしめてくれました
大好きな人の記憶から自分が少しずつ消えて行く事
おじいさんはおばあさんの手を握り『同じジョークを何回も笑ってくれるからね』ウィンクしていいました
今日の素敵な出来事が 明日まで記憶に残るとは限らない
だから 『今』という与えられた時間を大切に生きるおじいさんとおばあさん
大好きな人を守りながら 支えながら 二人で前に進みます
明日はおじいさんのお誕生日です
おじいさんは おばあさんが毎日めくるカレンダーに
大きな字で『今日は私の誕生日』と書きました
大好きな人と一緒にお祝いしたいから
忘れないように 強く 大きく書きました
明日 幼稚園が終ったら
プレゼント持って会いにいきます
与えられた一時を大切に過ごせますように...
私の大好きなおじいさん おばあさんのお話でした