『ごめんね』の心
子育てをしている皆さんも経験した事があると思いますが、子どもって「だめだよ。」と言った直後にだめだって言われた行動をとるんですよね。注意すると、『ごめんね。』とすぐに謝る子どももいれば、なぜ怒られているのはわからずに、逆に怒ってしまう子どももいます。幼稚園でこんな事がありました。
その日はダンスの練習で、子ども達の立場所に使うテープが貼ってありました。さぁ!練習始めてみようか!と気合いをいれて「みんな!頑張ろうね! それと、テープ、はがしちゃだめだよ。」と言った瞬間、耳に入ったビリビリビリッ...の音...ちから君です。
練習中断です...「だめだよって言ったのに。先生、このテープ一生懸命貼ったんだよ。」残念そうな口調で話しかけると、ちから君は黙ったまま口を開こうとしません。好奇心で思わずはがしてしまったテープを指先で黙ってつつくちから君。「ちから君、いけないんだ。先生、だめって言っていたのに。」とお友達からも指摘され、ちから君さらに怒ってしまいました。重い空気の中、「もう、はがさないでね。」と言って練習に戻りました。陽気な音楽が流れる中、ちから君は、じっと動かずにそっぽを向いたまま... その日ちから君は、『ごめんなさい』の一言も『さよなら』も何も言わずに帰っていってしまいました。
翌朝、ちから君はいつものように幼稚園へやってきました。「おはよう!」元気な子ども達の声が飛び交う中、「先生、ちょっときて。」とちから君が手をさしだしました。 「ん?」ちから君に連れられてきたのは朝の静かな職員室。私の手を握ってちから君が言ったのは、「先生、ごめんなさいって言えなくて、ごめんね。」彼の言葉を聞いて、思わず涙が出てきましたね...小さいながらに一生懸命考えたんでしょうね。『ごめんなさい』を聞く事を期待していた昨日の私。でも、ちから君の今日の『ごめんね』の言葉を聞いて気づいたんです。『ごめんね』は大人がただ言わせるだけじゃだめなんです。ごめんという気持ちを子ども達が感じる事、心から『悪かったな...』と思う気持ちがもっと大切なんですよね。『ごめんね』とすぐに気づく子どももいれば、ちから君のように考える時間が必要な子どももいるのです。 正直、ちから君が、「先生、ごめんね。」とその場で言ってくれるのを期待していた私がいたんです。でも、ちから君は私が期待していたタイミングで謝ってくれませんでした。それは、彼なりに落ち着いて考える時間が必要だったんですね。
幼稚園にはいろんな子ども達がいます。「先生〜!遊ぼう!」と腕の中に飛び込んでくる子ども達もいれば、その様子を笑顔で見守る子ども達、優しい子、元気な子、わんぱくな子。みんな違ってみんな素敵な子ども達。 毎日感動を与えてくれる子ども達。本当に大好きです。これからも子ども達と一緒に学び、子ども達の成長を見守っていきたいですね。
大きく育て!子ども達!
元気に育て!子ども達!