すこぶる評判が悪い。ここまで手厳しいと同情さえしたくなる。
「4強1弱」と揶揄する声もちらほら・・・、いや、ちらほらどころではない。周囲のほぼ全員が口をそろえてそう言っている。
メジャーリーグの開幕に合わせて各メディアが恒例の順位予想を発表した。
シカゴ・カブスがナショナル・リーグ中地区の最下位になるらしいのだ。
スポーツ専門サイトのCBSスポーツは、6人の記者のうち5人がカブスを最下位の5位に、1人が4位に置いた。唯一カブスを最下位にしなかった同サイトの看板的存在、ジョン・ヘイマン記者がカブスの下にしたのはピッツバーグ・パイレーツ。昨季まで20年連続負け越しという不名誉な記録を継続している球団だ。
同じくスポーツ専門サイトのESPNは全体順位ではなく、各地区の優勝チームとプレーオフの展開を予想。42人のうち歌舞すの地区優勝チームに挙げた記者はゼロだった。
話は少し脱線するが、シカゴにあるもう一つの球団、ア・リーグ中地区のホワイトソックスの予想順位は微妙だった。CBSスポーツの6人のうち2人が3位、残りの4人が4位。ちなみに、ホワイトソックスと同じ地区にいるデトロイト・タイガースは両サイト合わせて48人の記者全員がそろって地区優勝に挙げ、その多くがワールドチャンピョンを予想していた。昨季のタイガースはワールドシリーズでサンフランシスコ・ジャイアンツに苦杯を飲まされたが、投打のバランスは今季もいい。この予想結果はまったく驚くことではない。
さて、カブスである。
今シーズンの順位予想は、昨シーズンの成績に起因していると思われる。61勝101敗はナ・リーグ中地区6球団のうち下から2番目だったが、カブスの下にいたヒューストン・アストロズが今季からアメリカン・リーグ西地区に移ったことで、自動的にカブスが底になる。
しかも101敗はナ・リーグ全体を見渡しても下から2番目。107敗のアストロズがいなくなったことでナ・リーグ最弱にもなるというわけだ。
「4強1弱」という表現も決して大げさではない。昨季地区優勝のシンシナティ・レッズ。2年前にワールドチャンピョンになっている強豪セントルイス・カージナルス。2年連続勝ち越しのミルウォーキー・ブルワーズ。負け越しの記録は続いているが、この2年はプレーオフ争いに加わっている若いパイレーツ。これら4チームに比べると、確かにカブスのチーム力は落ちる。
しかし、そんなに悲観することはない。
昨季終了後に球団が着手したのは投手陣の強化だ。中継ぎ陣ではご存知のとおり、阪神タイガースから藤川球児を獲得し、フリーエージェントとなっていた高橋尚成投手とも契約した。抑えのカルロス・マーモル投手への不安は残るが、昨季はメジャー最多の80試合に投げたショーン・キャンプ投手とジェームズ・ラッセル投手は体が強く、計算できる。
そして、「悲観することはない」最大の理由は、先発陣の補強を徹底したことだ。新加入の3人、エドウィン・ジャクソン、スコット・フェルドマン、スコット・ベイカーはいずれも過去に2桁勝利を記録している投手ばかりだ。そこに昨季もカブスでプレーした成長著しいジェフ・サマージャとマット・ガーザが名を連ねる先発ローテーションは大きな穴が見えない。ガーザとベイカーがけがで出遅れたのは誤算だが、その2人は5月の復帰が見込まれている。
弱点に挙げられている打線もまるで駄目というわけではない。37歳の主砲、アルフォンソ・ソリアーノ外野手は昨季、32本塁打&107打点を記録し、力の衰えを感じさせなかった。球団の未来を託されているスターリン・カストロとアンソニー・リゾー両内野手はともに23歳でいつ大ブレークしてもおかしくない。個人的にFAでやってきたネイト・シーアホルト外野手を楽しみにしているが、この4人が核となる打線は、右、左のバランスも含め、相手にとっては嫌なはずだ。
そして、なによりも僕をポジティブな気持ちにさせるのはクラブハウスの雰囲気が非常にいいことだ。野球はチームスポーツ。個々の能力が優れていても空気が悪ければ力を発揮し切れない。
4月1日、ピッツバーグで行われたパイレーツとの開幕戦。カブスはリゾーが初回に先制2ランを放ち、先発サマージャが8回2安打無失点と好投した。9回に乱れたマーモルを藤川ら中継ぎ陣がサポートし、チームは今季1勝目を挙げた。
カブスは弱くはない。
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