名将、智将、闘将、迷将(?)、・・・。スポーツ・チームの監督を例える言葉はいろいろあるが、それらはルーキー監督や負けてばかりの監督には到底つけられることはない。だれもが認める実績を残してこそ与えられる立派な称号なのだ。
メジャーリーグでは今オフ、空前絶後の監督交代劇が予想される。
シーズン中だけでもカンザスシティ・ロイヤルズが5月に日本ハムを日本一に導いたトレイ・ヒルマン監督をクビにしたのを皮切りに、ボルティモア・オリオールズ、アリゾナ・ダイヤモンドバックス、フロリダ・マーリンズ、シアトル・マリナーズ、そして、シカゴ・カブスの6球団が監督を代えている。
そんな中、今最も注目を集めているのは、アトランタ・ブレーブスの名将、ボビー・コックス監督だろう。
1978年にブレーブスの監督に就任。82〜85年にいったんはトロント・ブルージェイズを指揮したが、90年にブレーブスに復帰。今季まで20年連続でタクトを振り続け、91〜05年に地区11連覇という偉業を成し遂げ、95年にはワールドシリーズを制している。
そのコックスがシーズン開幕前に今季限りでユニホームを脱ぐことを発表したのだ。9月27日現在、チームは引退への花道にすべく、熾烈なプレーオフ争いを繰り広げている。同監督の口の悪さは有名で、今年9月18日に審判に暴言を吐いて通算158回目の退場。自身のもつ最多記録を更新し、スタンドから大喝采を浴びた。1週間後には史上4人目の通算2500勝目。ここでも大歓声を受けている。
コックスより1つ年上、現役最年長となる70歳のジョー・トーリ監督との契約を今季いっぱいで打ち切るとロサンゼルス・ドジャースが発表したのは9月下旬のことだ。監督就任3年目。08、09年には地区優勝を飾っているが、今季は振るわなかった。
しかし、トーリと言えば、ニューヨーク・ヤンキースの黄金期を築き上げた監督としての方が有名だ。77年にニューヨーク・メッツでそのキャリアをスタートさせ、82年にブレーブス、90年にはセントルイス・カージナルスの監督を歴任した。その間、地区優勝がわずか1回という平凡な監督が、智将と呼ばれるまでになったのは96年にヤンキースの監督に就任してから。いきなりワールドチャンピオンになり、98〜00年には3年連続世界一、01、03年にもワールドシリーズへ進出し、常勝軍団と呼ばれるようになった。
その実績と手腕からすれば、今オフも監督としてのオファーを受けてもおかしくはないが、年齢的にその激務に耐えられるかは疑問だ。トーリに別れを告げたドジャースは、今季は参謀役だったドン・マティングリーの次期監督を発表している。
闘将と呼ぶにふさわしいのは、カブスのルー・ピネラ監督だ。一説では演技とも言われている“キレ・キャラ”。帽子を蹴飛ばし、一塁ベースを引っこ抜いて投げ飛ばすパフォーマンスは球史に残る。それもすべては1835勝(歴代14位)という輝かしい実績があってこそ。本来なら今季最終戦までチームを率いるはずだったが、病に伏している母親のためにシーズン途中の退任を余儀なくされた。
今季限りの引退が確実なブルージェイズのシト・ガストン監督を含め、現在のところ7球団の監督交代が明らかになっている。微妙な立場にあるのが、セントルイス・カージナルスのトニー・ラルーサ監督。メジャー歴代3位、現役最多の2631勝(9月26日現在)を誇る智将だが、今季のV逸を球団がどう評価するのか。シカゴ・ホワイトソックスのオジー・ギーエン監督もしかり。契約が残っていても何の保証にもならないのはこの世界の常識でもある。
退団確実なのは、前ホワイトソックス監督で現在はニューヨーク・メッツを指揮するジェリー・マニエル監督とミルウォーキー・ブルワーズのケン・モッカ監督ら。ざっと見て、全30球団のうち3分の1の10球団で監督が変わる可能性がある。監督の世代交代と言っていいのかもしれない。
|