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年齢はただの数字でしかない。
現役生活が長くなればなるほど、選手たちはこの言葉を口にする。年齢に関する質問をした時、必ずといっていいほど返ってくるのがこのフレーズだが、そこにはこんな気持ちが込められているようだ。
「年なんて関係ねぇ!若い選手に負けないプレーをしているのだからいいじゃないか」。
大リーグの世界では、33歳を過ぎれば立派なベテランだ。ただ、このフレーズを使っても違和感がないのは38歳あたりから。40歳になれば、聞いた方は、ただ、うなずくしかない。
今季は、そんな選手たちが大きな話題を集めたシーズンだった。5月号で紹介したヤンキースのロジャー・クレメンスは44歳(8月で45歳に)で3度目の現役復帰を果たし、ジャイアンツのバリー・ボンズは43歳でホームランの大リーグ記録を塗り替えた。元気な40代。5月にその大台に到達したインディアンスのケニー・ロフトンもその一人だ。
4月に史上17人目となるメジャー通算600盗塁を達成した。今季は23盗塁を記録(9月27日現在)し、通算622盗塁は現役選手の中で最多の数字。メジャーで最も足の速い40代であることは、まず間違いない。
「いつだって僕にとっては年齢は単なる数字としか考えていない。みんなは年を取ることが悪いことのように考えているようだけど、そうではない。自分では今も10年前と変わっていないと思っている。いや、30歳の時よりも今の方が肉体的にはいい状態だと感じているくらいだよ」
野球選手では、珍しく、酒もタバコもやらない。無理にストイックな生活を送っているわけではなく、「昔から飲めなかった」という。アルコールもニコチンも受け付けない体。それが現役生活を長く続ける秘訣でもある。
今季のロフトンは、レンジャーズの一員として開幕を迎えた。しかし、チームは黒星に黒星を重ね、前半戦で早々とプレーオフ戦線から脱落。7月に入って再建モードに突入したレンジャーズと、経験豊富な外野手を必要とするインディアンスとの思惑が一致し、トレードが成立したのだった。
インディアンスはロフトンが92〜96、98〜01年の計9年間在籍した古巣でもある。92年にはア・リーグ新人記録の66盗塁、翌年からは3年連続盗塁王に輝くなど、90年代のメジャーを代表する1番打者としてその名を知らしめた場所でもある。地元ファンの歓迎ぶりは相当だ。
実は、ロフトンがシーズン途中に移籍するのは今回が初めてではない。02年はホワイトソックス→ジャイアンツ、03年はパイレーツ→カブスへ。共通するのは、いずれもプレーオフを目指すからチームに要求されていること。95年以降、00、05年を除くすべてのポストシーズンに出場している実績を買われての移籍。いわば、プレーオフ請負人だ。
ワールドシリーズには95年と02年に出場はしているが、いずれも敗退。「僕のモチベーションはワールド・チャンピオンのリングを手にすることなんだ」。ここにロフトンが現役に固執する最大の理由がある。
タイガースを振り切って01年以来、6年ぶりの地区優勝を果たし、プレーオフ進出を決めたインディアンス。チーム最年長、ロフトンに巡ってきた世界一のチャンス。年齢はただの数字でしかない。はつらつプレーで3度目の正直といきたいところだ。
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