ドリームチームが崩壊した。男子バスケットボール米国五輪代表ではない。米プロバスケットボール(NBA)のロサンゼルス・レイカーズのことだ。圧倒的有利と言われたファイナルでデトロイト・ピストンズに惨敗し、その直後にシカゴ・ブルズとレイカーズで9度のリーグ制覇を成し遂げている名将、フィル・ジャクソン監督が退団。さらに、その1カ月後には大黒柱のセンター、シャキール・オニールがマイアミ・ヒートへトレード。予想されたとはいえ、あまりにも呆気ない結末だった。
”夢のチーム“と呼ばれたのには理由があった。ジャクソン監督指揮の下、オニールとコービー・ブライアントの黄金コンビを軸に00、01、02年に3連覇を果たしたレイカーズ。そのリーグ最強コンビに昨年7月、ゲーリー・ペイトンとカール・マローンの2人のベテラン選手が加わったのだ。
リーグを代表するポイント・ガードのペイトンは前年途中にミルウォーキー・バックスへトレードされたものの、それまではシアトル・スーパーソニックスの看板選手として活躍。マローンはユタ・ジャズのパワーフォワードとしてマイケル・ジョーダンを上回る歴代2位の通算3万6374得点を記録していた。ペイトンは13年、マローンは18年ものキャリアがありながら優勝経験はなし。引退する前にチャンピオンリングを―。その一心で2人はロサンゼルスにやってきたのだった。マローンに関しては、年俸が前年の1930万ドルから150万ドルまでダウン。優勝への執念以外、何ものでもなかった。
将来の殿堂入り候補、オニール、ブライアント、ペイトン、マローンの4人が同じユニホームを着てプレーする。想像もしなかった事態に全米が沸き立ったのは言うまでもなかった。
ところが、レイカーズには大きな問題が一つあった。ブライアントとオニールの不仲だ。現に開幕前には地元メディアを通して2人が舌戦を展開。さらに、02年7月に暴行容疑で訴えられたブライアントは後半のため、チームを抜けることもしばしばだった。
公式戦が始まると、今度はけが人が続出した。オニール、ブライアント、さらには、過去6試合しか欠場していなかった
”鉄人“マローンまでもが右ひざ負傷で戦線
離脱。孤軍奮闘したペイトンもトライアングルオフェンスに馴染めず、不満をぶちまけた。
波乱万丈のシーズンだったが、終わってみれば、56勝26敗で西地区2位でプレーオフ進出。苦しみながら2年ぶりのファイナルまでたどり着いた。
ファイナルの相手は東3位のピストンズ。決戦前にNBA公式サイトが実施したアンケートでは、73%がレイカーズ優勝を予想。最も多かった結果予想は4勝1敗。楽勝と見られていた。ところが、どうだ。ピストンズ自慢のディフェンスの前にレイカーズのオフェンスは全く機能せず。精神的支柱のマローンの負傷もあって、チームワークは乱れっぱなし。試合を重ねるごとに弱さを露呈した。1勝4敗の完敗。歴代監督1位となる10度目の優勝を逃したジャクソン監督は試合後の会見で早々と退団を示唆した。
ゴタゴタはその後も続いた。当初は今季限りで契約が切れるブライアントがチームを去り、LAで絶大な人気を誇るオニールがチームの将来を支えると考えられていたが、ジェリー・バス球団オーナーはブライアントとの再契約を優先。一部では、それに対して激怒したオニールがトレードを要求したと伝えられるなど、チーム崩壊に拍車がかかるきっかけとなった。
新監督には、94、95年にヒューストン・ロケッツを連覇に導いたルディ・トムジャノビッチが就任した。ペイトンは残留。ブラディ・ディバッツもライバル球団のサクラメント・キングスから古巣に帰ってきた。98年の2度目の3連覇の後に解体された
ブルズはいまだに低迷している。再建モードに入ったレイカーズの巻き返しが見ものだ。