医学誌「Annals of Internal Medicine」に2017年4月14日に掲載された、The
American College of Physiciansの臨床ガイドライン委員会のAmir
Qaseem, MD, PhD, MHAらによる150件超の疫学的研究をレビューした結果を踏まえて策定された新しい腰痛治療指針があります。
腰痛は成人の80%以上が生涯に一度は経験しているといわれる一般的な傷病ですが、その大部分を占める「非定型的腰痛」に関しては西洋医学では原因不明とされ、決定的な治療法がなく、標準的な治療は鎮痛消炎剤と筋弛緩剤を処方して様子をみるという姑息的対症療法でした。 しかし非ステロイド抗炎症薬はほとんど効果がないことなどが判明しており、有効な治療法を検証して新たな指針を必要としていました。
腰痛治療の新指針では、以下の治療法を強く推奨しています。
発症から12週間以内の急性・亜急性期の腰痛
1. カイロプラクティック(脊椎矯正)
2. 鍼治療
3. マッサージ
4. 温熱療法
万一、上記の療法を試しても十分な効果がない場合は、非ステロイド抗炎症薬や筋弛緩剤を用いることが穏当なオプションとなるが、僅かな効果と副作用の可能性から、それらは第1の選択とはならない。
12週間以上続く慢性的な腰痛
1. カイロプラクティック(脊椎矯正)
2. 鍼治療
3. 理学療法
4. 運動療法(バランスや深部体幹筋の強化、ストレッチ等を含む)
5. ストレスを減少・対処するためのマインドフルネスを基調とした心理療法
その他、太極拳やヨガ、進歩的リラクゼーションテクニックなども助けとなるアプローチの一例であるとしています。
この様に、腰痛の新しい治療指針ではカイロプラクティックによる脊柱調整、東洋医学の鍼(はり)治療などの手技療法、西洋医学の温熱療法、理学療法などが急性期から慢性期の腰痛の標準治療として推奨しています。 そして、鎮痛剤など薬の使用は推奨していません。
医学誌「Spine」に2008年に掲載された論文でも、労働者が腰に傷害を負った場合に、どのような医療を最初に受けたかによって、1年後の慢性的な労働障害の状態に差があるかが判明しています。 一年後に障害が残存する患者の比率は、カイロプラクティックは5%、プライマリーケア(MD)は12%、職業医学(MD)が21%、その他は26%と、カイロプラクティック医師(DC)に最初に受診した患者は、医師(MD)や他の医療を受けた患者より障害が残るリスクが低いことが判明しているのです。
死亡や重大な副作用が起こるリスクでは、100万回の処方に対し脊柱手術は1800件の発生、非ステロイド系鎮痛薬は153件、オピオイド鎮痛薬が53.6件に対し、カイロプラクティックの調整では585万回に1件程度と安全性でも抜群です。
腰痛の場合、安全で効果的なカイロプラクティックを先ず受診するのが最新の標準であり、指針に沿った賢明な方法であると知っておいて下さい。