医学誌「BMJ Open」January 2019 - Volume 9-1に掲載された、コペンハーゲン大学公衆衛生学部のKamma
Sundgaard Lund, MDらの研究で、「鍼治療によって更年期障害の不快な症状が改善する」と報告されています。
この研究では、更年期障害のデンマーク人女性70人の被験者を、36人は鍼治療群、34人は比較群として、鍼治療群には週1回15分の鍼治療を5週間施術して、施術前、施術開始後3週間、6週間、8週間、11週間、26週間の状況を比較検討しました。
被験者が回答する質問表には、主要な更年期障害の症状として、ホットフラッシュ(ほてり)、睡眠障害、記憶の変化、泌尿器や膣の症状、皮膚の変化などを含んでいました。
その結果、鍼治療群の被験者達は施術開始から3週間後にはホットフラッシュの軽減を自覚し、6週間後には体のほてり軽減だけでなく鍼治療群の被験者の80%が発汗(寝汗を含む)の頻発、睡眠障害、感情的症状、皮膚や髪の問題といった症状が改善したと報告しています。
結論として、「鍼治療は中等度から重度の更年期障害の症状に対し、治療処置6週間での迅速かつ臨床的価値のある軽減を提供しており、重度の副作用もない」と研究者らは報告しています。
一般的な西洋医学の更年期障害の治療はホルモン補充療法(HRT)で、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の両方、エストロゲンのみ、時にテストステロン(雄性ホルモン)が投与されるが、2002年、2003年に発表された研究で子宮、乳腺、卵巣の癌のリスクを高めると報告されています。
癌リスク以外にもホルモン補充療法の副作用として、睡眠障害、めまい、吐き気、疲労感などの不快な症状があります。
それ故に、更年期障害の症状に対する非薬物的な治療処置の発見は行動指針の優先課題でした。
これまでにも、医学誌「British Medical Journal」電子版に2008年2月7日に掲載された研究で、「体外受精(IVF)を受ける女性が同時に鍼(はり)治療を受けると、妊娠の確率が65%高くなることが判明」と報告されています。
また、世界保健機関(WHO)は、世界三大医学を西洋医学・カイロプラクティック・東洋医学と認定し、東洋医学の鍼治療の適応症として産婦人科疾患では不妊症、月経不順、生理痛、冷え症、更年期障害、妊娠悪阻(つわり)、胎位異常(さかご)、乳腺炎、乳汁分泌不全などを認めています。
今回の2019年1月という最新の研究論文の発表で、鍼治療が女性の健康管理に有効で安全である証拠がまた一つ増えたことになります。
中国で中医学や韓国で韓医学を学び鍼治療の教育を受けた中医師や韓医師、アメリカで中医学を学び鍼治療の教育を受けた鍼師(Acupuncturist)は全て中国式の教育で中国式鍼を用いた手技を訓練されていますが、日本で東洋医学を学び鍼治療の教育を受けた鍼師は、日本式の教育で日本式鍼を用いた手技を訓練されています。
日本式の鍼治療は大陸のそれと比較して、繊細で柔らかい刺激の手技で効果を発揮させるように発展・進化した日本独自の手法であり、鍼そのものも鍼先が柳葉型で鍼筒を用いて刺入するなど痛みを感じにくい工夫があります。
鍼は受けたことが無いから痛そうで怖いというような方も、日本のはり師免許を持つ施術者による日本式の鍼治療なら繊細な日本人に合うので安心です。