子供を愛する親御さんなら誰しもが願っている事といえば、子供さんの健康でしょう。そして皆さん各々に情報を集めたり相談したりして知識を得て、子育てに反映されています。しかし、世の中に出回っている情報には「根拠の無い」ものが多く散見されます。
医学誌「英国医学ジャーナル」に2004年に掲載された研究では、「たった6%の医薬品の宣伝材料しか根拠がない」と報告されています。
(British Medical Journal, February 28,
2004, p. 485.)この様に、インターネット、TV、新聞、雑誌などでの薬の宣伝広告ですら、僅か6%しか科学的・医学的根拠がないのです。94%は根拠も無いまま宣伝し販売促進をしている事になります。
同様に、健康情報、健康情報なども様々な媒体を通じて配信されていますが、根拠の乏しいものが大半という状況です。インターネットなどでも情報が多すぎて、どれが正しい情報なのかの判断が難しく、正しい情報に辿り着くことが困難です。しかも、医学研究の論文は医学誌や科学誌などに掲載されますが、一般の人がそれらを検索するには困難を伴い、一般向けの新聞や雑誌、TVなどで報道される医学研究結果などは極一部であり、その上、知っても役に立たないものも少なくありません。
そこで、筆者が調べて見つけた「一般の皆さんの役に立つ」と思われる研究報告の中から、子供に関するものを集めてシリーズで紹介して参ります。
▼ 慢性症状を持つ小児が増加傾向
医学誌「米国医師会ジャーナル」2010年303号に掲載された研究では、「慢性症状を持つ小児が増加傾向」であると報告しています。この研究では、2〜8歳の小児の肥満、喘息、その他の身体的症状、行動/学習障害などの慢性症状について、3コホートで前向きに調査した結果、「試験終了時の有病率は1988年から2006年にかけて増加」が確認されました。
科学や医学が発展している筈なのに、逆に病気の子供が増えているということは、近年の医療のあり方や、生活様式、環境などを見直す必要があるでしょう。
▼ 乳児への抗菌薬投与で喘息リスク倍増
医学誌「Chest」に2006年に掲載された論文では、「乳児への抗菌薬投与で喘息リスク倍増」と報告しています。カナダBritish
Columbia大学のFawziah Marra氏らは、生後1年間の抗菌薬曝露と、その後18歳までの小児喘息発症との関係を調べるメタ分析を行い、得られた結果は、「抗菌薬の投与を受けなかった小児に比べ、1コース以上の治療歴がある小児の喘息リスクは2倍になることが判明」と報告、「近年、乳幼児に対する抗菌薬(抗生物質)の使用が増えており、並行して、小児喘息患者も増えている」として警鐘を鳴らしています。
この研究によって、安易な抗生物質の乱用が子供の喘息を増加させることが判明しました。
子供の咳に抗ヒスタミン剤は根拠なし 医学誌「Cochrane Database
of Systematic Reviews 」2008年4月号に掲載された研究では。「小児の非特異的慢性咳嗽に抗ヒスタミン剤を推奨するには十分なエビデンスが得られておらず、同剤の使用は若年小児では禁忌の可能性さえある」と報告しています。
抗ヒスタミン剤は、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、などに使用されるだけでなく、市販のカゼ薬などにも含まれ、よく用いられている一般的な薬品です。それが「若年小児では禁忌」の可能性にまで言及しています。
抗ヒスタミン剤を飲むと、「グラス4杯分のウイスキーを飲むのに匹敵するほどの能率低下をもたらす。眠気を感じていなくても、正常な理解力・集中力が大きく低下している場合がある。その弊害は大きいと認識しなければならない」と指摘する専門家もおり、「抗ヒスタミン剤を利用しているこどもの学力・生活姿勢に問題がある場合には、その原因の1つとして、副作用を疑ってみるべきである」と警告する小児科医もいます。
医薬品の服用は、よく医師と相談し、効果と副作用を認識した上で、本当に必要な場合に限って使用するように心掛けるとよいでしょう。