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3月17日はセントパトリックスデー。街中が緑色になるアイリッシュを讃える御祝い。国民の約13パーセントを占めると言われているアイルランド系アメリカ人が中心になって行うカトリック教徒のお祭りでは、
クローバーやレパコーンのデコレーションでパレードが行われたり、オフィシャルカラーである緑の服を着たり(シカゴ川が緑になりますね)、緑色のギネスビールを飲んで騒いだり、とアイルランド系でなくてもウキウキわくわくする一日。この日に「緑の物をつけていない人をつねっていい」というおもしろいしきたりがあるのもかわいいですね。
さて、このアイルランド系の人達の名字、以外と面白いのでちょっと説明しておきましょう。ファミリーネームに「O'」がついていたり、「Mc」「Mac」などが見られる場合、これはアイルランドの公用語であるゲーリック語の「〜の子孫、〜の仲間」という意味。たとえばギタリストのGilbert
O'Sulliban (ギルバート・オサリバン)なら「サリバン家の、あるいはサリバンとの仲間」となり、有名タレント司会者、Conan
O'Brain (コナン・オブライアン)は「ブライアン家の、あるいはブライアンの仲間」というルーツになります。このような名字以外であれば、ケネディー大統領の名字(Kennedy)に代表されるファミリーネームなど、アイリッシュ系の中でも高級貴族ご使用、という事になります。
1840年に起きたジャガイモ飢饉では、たくさんのアイルランド人が飢えや病気で亡くなり、未来に希望を持てなくなった人達が「新土地、アメリカへ行こう!」と移民してきたのがアイルランド系アメリカ人のはじまり。飢饉の後も、アメリカに成功を求めてやってくるアイリッシュが増えていき、アメリカ国民数の中でも大きな割合をしめるようになりました。新大陸の玄関であったニューヨークをはじめ、ボストンなど東の都市には仕事を求めてどんどんアイリッシュ・アメリカン達が移住していき、当時は消防、警察などの職に多数のアイリッシュ名を見る事ができたとか。これには“ピューリタンの街であった土地にやってきたカソリック達が得る事のできる職種が少なかったため、身体をはる仕事、危ない仕事しかもらえなかったから”、あるいは“喧嘩ばやい性格がこういった職にあっていたから”などと言われていますが、どうなのでしょうね。
アイリッシュ文化の中でも世界中に知れ渡ってきたのが、アイリッシュダンス。足だけを小刻みに動かしながら、上半身は動かさない直立型で行われるこのダンスには、フィドラー(バイオリン弾き)の音色がかかせません。そしてこのフィドラー達もバイオリンをひきながら思いっきり踊ってジャンプして、、、とまぁ、すごい技なんですね。きれいな足のおねえさん達、ハンサムなおにいさん達がラインを保ちながら一斉に足をあげる所をみて圧倒される方も多いかと思います。実はこのダンスがアメリカのエンターテイメントに強い影響を与えていたのをご存知でしたか?アイリッシュダンスそのものと、アメリカにすでに浸透していたアフリカン・アメリカン達のダンスが重なって産まれたのが、「タップダンス」だと言われています。そういえばなんだか早く動かす足の状態など、似ていますよね。
セントパトリックデーではビールはもちろんの事、アイルランド系のお料理も忘れてはなりません。例えばコーンビーフ。これは日本でいう缶詰のぱさぱさした物とは大違い、しっとりした牛の胸肉がほどよい塩辛さです。通常、茹でたボテトとキャベツと一緒に食べますが、お肉そのものをマスタードいっぱいでサンドイッチにするのも美味。この時期、すでに塩漬けになっているブリスケット(胸肉)がお店に並んでいますので、みなさまもここは「アイルランド系コーンビーフ」をお試しになってみてください。一番簡単な方法は、スロークッカーに入れて1日オン!これだけで最高に柔らかいコーンビーフができあがりますよ。
お料理でもう一品、「羊飼いのパイ」というなんとも心温まる名前のディッシュはいかがでしょう。パイと言っても、パイ生地を小麦粉から作る訳ではなく、もっと簡単に、“忙しい羊飼いの人達でも作れるおいしいパイ”なのです。挽肉をいためて、そこにタマネギのみじん切りやにんじん、グリーンピーズ、トマトソースをいれ、ミートソースを作る。その上にマッシュドポテトをたっぷりとのせて、オーブンでこんがりと焼く。これだけなんですが、お腹によくたまるおふくろの味、という感じでなかなかいけます。
さて、アメリカの政界、エンターテイメント界でたくさんのアイルランド系の名前があがります。そのいくつかをご紹介してみましょう。
ジョン・F・ケネディ |
第35代アメリカ合衆国大統領。カソリックとしてはじめて当選。 |
ロナルド・レーガン |
第40代アメリカ合衆国大統領。 |
ビル・クリントン |
第42代アメリカ合衆国大統領。 |
ジーン・ケリー |
ダンサー、俳優。”巴里のアメリカ人”などで有名。 |
ウォルト・ディズニー |
ディズニー創業者。 |
マライヤ・キャリー |
歌手。7オクターブの声を持つと言われる。 |
ジュリア・ロバーツ |
俳優。父親がアイルランド系。 |
グレース・ケリー |
俳優。ヒッチコックの映画などに出演。モナコ王妃となるが事故死する。 |
カート・コバーン |
歌手。ニルヴァーナのボーカル。 |
ハリソン・フォード |
俳優。父親がアイルランド系。”インディアナ・ジョーンズ”などで有名。 |
ジャック・ニコルソン |
俳優。父親がアイルランド系。 |
マイケル・ムーア |
ジャーナリスト、映画監督。 |
ジュリア・ロバーツ |
俳優。父親がアイルランド系。 |
ベン・アフレック |
俳優。母親がアイルランド系。 |
たくさんのアメリカ人が「自分のルーツ」を探しにアイルランド旅行を企画すると聞いています。新土地アメリカに住んでいても、やはりご先祖様が住んでいた国を知るのは興味深いのでしょうね。アイルランド出身の女性作家、セシリア・アハーンの小説『P.S.アイラブユー』をもとにした映画(ヒラリー・スワンク主演)の中では、アイルランドの神秘的で素朴な自然とともに、人々のあたたさがしみじみと伝わってきます。このセントパトリックスデーの時期におすすめの映画のひとつです。
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