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冬まっただ中、吐く息も真っ白、鼻の上はまっか。早くあったかくならないかなぁ、と思っている頃にやってくるアメリカの伝統行事「グラウンドホッグ・デー」。テレビのニュースでも放送されるし、一応アメリカ人ならなら誰でも知っている行事なのだけれど、いったいこのグランドホッグ(日本語名はマーモットというらしい)が何をするのか、どうしていい歳したおじさん達がとってもフォーマルな格好してこのモグラに似た愛らしい動物を囲んでいるのか、なんとも不思議な絵なのです。
毎年2月2日がグランドホッグ・デー。日本の「啓蟄」のようなもの、つまり「春の訪れを告げる儀式」ですね。日本だと「梅のつぼみが膨らんできた」とか「菜の花が咲いてきた」とか。そうそう、ホクが八ヶ岳の高原に住んでいたときには「ふきのとうが出てきた」っていうのが春到来のサインでした。白い雪の中から、小さな緑色のふきのとうが顔を出す。摘んだばかりのフレッシュなふきのとうをすぐに天ぷらにして、、、あーとっても日本らしい初春の良い思い出。
話は戻ってこのアメリカ行事。ペンシルバニア州パンクスタウニー市。Philという名付けられたマーモット(別名:ウッドチャック)がモソモソと冬眠していた土の中から出てくるのが朝7時半頃。そんな様子を静かに、また誇らしげに見つめるインナーサークルの面々。彼らはこの日の為に選ばれたジェントルマン達で、なんとそのプレジデントは「groundhogese」なるウッドチャック語を理解できるらしい(!)。フィルが土穴から顔をだし、自分の影を地上に見つけたら(つまりお日様が出ていたら)春の到来はまだまだ先の6週間後。もし影が見えなかったら春はすぐそこまで来ている、という言い伝え。
その他「え?本当?」と疑いたくなる「グラウンドホッグ・デー逸話」があるようなので、ここでちょっと紹介。事実かどうかは別として、こんな珍しい行事にアメリカ中が一目おいているのがかわいいじゃぁありませんか?
- このフィル君、118年の間休まず毎年春の到来をアメリカ中に予告している。
- インナーサークルのおじさん達の仕事は2月2日だけでなく、前後のフェスティバル開催の準備や、フィル君のお食事やクリーニングも担当する。
- フィル君の好物は「グラウンドホッグ・パンチ」なる飲み物。これは秘伝のレシピらしい。毎年夏のピクニックの際にこのパンチを飲むフィル君は、それだけで7年間寿命が延びるらしい。
- フィル君の名前は、フィリップ王から来ているらしい。
さてさてこの「西洋的啓蟄」の伝統はアングロサクソン民族の間で行われていた「聖燭祭(Candlemas
Day)」がルーツらしい。これは聖母マリアが天使ガブリエルから受胎告知を受けた日(2月2日。イエス・キリストが産まれたのが12月だから、、、フーム、10ヶ月の妊婦生活の始まり。これからつわりや腰痛がんばってね!と言う事を伝えた日になる?)とされていて、教会関係者はこのお祭りの日にこれから教会儀式で使う1年間分のロウソクをそろえたり、キャンドルを灯して行進したりするらしい。こんな伝統が一般人には「春を伝えるお祭り」と解釈され、ドイツではハリネズミなどを使って影のチェックをして春到来を予言するようになり、後々ヨーロッパからやってきた移民たちがこの習慣を新大陸アメリカに広めていった、という訳。
ちなみに、このグランドホッグ・デーを題材にした映画があるのをご存知かな?その名も「Groundhog
Day」というこの映画、主演は「ロスト・イン・トランスレーション」で日本滞在するガイジンを上手く演じたビル・マーレイ氏。日本語タイトルは「恋はデジャブ」。天気予報士のフィルがグラウンドホッグ・デーをばかにしつつレポートをした日に猛吹雪に覆われ、結局パンクスタウニー市にもう一泊する事に。すると次の日の朝も、またその次の日の朝も、毎日が2月2日で目が覚める!どうなっちゃってんだぁ!というコミカルなお話。あまり肩のこらない、のんびり楽しく鑑賞できる映画なので、寒ーい夜に暖炉に灯を灯しながらホットココア片手に観てみるのもいいかも。
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