殆どの子宮頸癌がHPV感染によって発生します。
先月は子宮頸癌について話しました。その子宮頸癌の殆どのケースがHPV感染によって発病すると言う事が最近解明しました。
HPVとはHumanPapillomaVirusの略で、日本語ではヒトパピローマウィルス、又はヒト乳頭腫ウィルスとも呼ばれています。このウィルスは決して最近発見されたウィルスではなく、全世界的に古くから存在していました。しかし、最近になり、このウィルスが子宮頸癌の原因となる事が解り、注目を浴びるようになりました。
HPVは現在100種類以上の型の存在が確認されています。病的関連性があるのはこの1部であり、特に低リスク群と呼ばれる6,11型は尖径コンジロームと呼ばれる性器イボの原因となり、高リスク群と呼ばれる16,18型が子宮頸癌との関連性があります。
HPVは性行為で感染し、多くの場合は自分の免疫力で体内から排除されると考えられます。つまり、感染しても大半は自然消失するのですが、約1割のケースでは感染が長期化し、更にその一部で、細胞に変化をもたらします。
感染後は症状は無く、イボが出来る、又は子宮癌検診で細胞の異常が発見された時点で感染が判明します。
HPVに感染すると、癌化への道程は徐々に進行します。幸い子宮頸癌は進行が比較的遅いので早期発見が可能な病気です。細胞の変化は異形成化(前癌状態)→上皮内癌(初期癌)→癌へと発展していきます。
持続感染したHPVを治療する方法は残念ながらありません。ですので、感染を予防する事、病気が進行しないように、早期発見する事が唯一の治療法となります。感染の予防は、性行為のパートナー数を制限する事、パートナーの多い相手との性行為を制限する事、及びコンドーム使用です。他の性感染症と比べ、HPVの場合、コンドームを使用しても完全には予防は出来ません。これはHPVが皮膚にも発見されるためです。但し、使用すれば感染率は大幅に減少しますので、使用すべきです。また、コンドーム使用している女性の方が子宮頸癌の発病が低い事は明らかです。
もう一つの感染予防法がワクチンです。2006年6月にアメリカ食品医薬品局で承認されました。このワクチンはHPVに感染していない女性を対象にした大規模臨床試験では80%近い予防効果があったと報告されています。すでにHPVに感染した人に対する治験は行われていませんが効果は期待されています。
日本では現在まだ未認可ワクチンであるため、日本で予防接種を受けることは出来ません。
注意しなければならないのは、このワクチンは子宮頸癌等の定期健診を省くものではなく、接種後も、定期健診は重要です。
また、男性、そして9〜26歳以外の年齢層(特に高齢側)の女性に安全・有効であるかの検証は米国で現在進行しているところです。それまでは、適応はありません。
次回はこのワクチンについて話します。