美味しい中華料理の店を知りたければどうすれば良いか?そりゃあ中国人に聞くのが一番手っ取り早い。そこで5年ほど前に知り合いの中国人にシカゴで飲茶の一番美味い店を教えてくれと聞いたら『飲茶ならフェニックス』と言われた。あくる日早速チャイナタウンに足を運んで以来何度もフェニックスには行っているが、確かにこの店の飲茶は美味い。出てくるものは非常に定番のメニューだが、それだけにゴマカシもきかない。郊外からわざわざ行くとなるとどうしても週末になってしまうが、週末は11時には行列が出来てしまう程なので、人数が揃うのであれば予約を入れるか(意外な事に予約OKなのだ。)、10時頃までに行ってゆっくりブランチを楽しみたい。飲茶イコールDIM
SUMだと思っている人も多いが、実は微妙に違う。DIM
SUMとは『点心』の英訳で、『点心』とは本来、麺・粥・餅・饅頭など食事の代わりになるような食べ物の事を指す。つまりあの蒸篭の中に入って出てくる個々の食べ物が点心であって、飲茶(ヤムチャー)というのはお茶を楽しみながらその点心を食べる『習慣』の事を指す(大辞林より抜粋)。
さて、うんちくはさておき、フェニックスについてだが、フェニックスはワゴン式の飲茶のお店である。飲茶には大きく分けてワゴン式とオーダー式の2種類がある。本場香港でも最近の高級店はオーダー式が主流で、昔ながらのワゴン式はかなり減っている。ワゴン式の良い点はオーダーする前に蒸篭の中を見て好きなものを選べる所だが、その分、人気の点心が自分のテーブルに来る前に無くなってしまったり、折角来たのに冷めてしまっている事がある。そこでワゴン式のお店の場合は出来るだけ調理場の出入り口に陣取りたい。世の中やはり「場所」が命なのだ。
席に着くと多分お茶の種類を聞かれるだろう。無難なのはジャスミン茶。香りの良いジャスミン茶は上海人や日本人に人気がある。周りの香港人達は多分ポーレイ茶(プーアール茶)を飲んでいるだろう。これはカビのような香りのするクセのあるお茶だが、香港の飲茶では定番だ。油を流す効果があると言われており、慣れると結構病みつきになってしまう。
お茶の種類 |
ジャスミン茶 |
香片(発音:ヒョンピン) |
ウーロン茶 |
烏龍茶(発音:ウーロンチャー) |
ポーレイ茶 |
普レイ茶(発音:ポーレイチャー) |
250人からの宴会場としての機能もあるというフェニックスの店内は明るくて広い。そして騒々しい。やはり飲茶はこの雰囲気が一番だ。お茶をオーダーしたら早速戦闘開始。ワゴン係のオバちゃん達は自分の押している食べ物の名前を連呼しながら廻って来る。中には英語が話せる人もいるが、殆どが中国語しか話せない(広東語が多い)。英語で「Excuse
Me. May I?」と言って蒸篭を開けるのも良いが、気分を味わいたければ、広東語で「ムゴイ」と話し掛けるのも面白い。
簡単な広東語 |
ありがとう |
唔該/ムゴイ |
要ります |
要/イウ |
要りません |
唔要/ムイウ |
美味しい |
好食/ホーシク |
ひとつ |
一個/ヤッコー |
ふたつ |
両個/リョンゴー |
中を見てもいい? |
唔該/ムゴイ(厳密にはありがとうという意味だが、蒸篭を指差しながら言えば『見てもいい?』の意味。) |
|
「〜が欲しい」なら我要〜/ンゴ
イウ 〜 |
「一つ下さい」ならヤッコー
ムゴイとなる。 |
醤油やチリ・ペーストなどは頼んでも持ってきてくれるが、面倒な人は入ってすぐの所のバーに置いてあるので、取りに行っても良い。また、この間行った時は8人掛けのテーブルに6人分しかシルバーウエアが無かったので、ウエイターに持ってきてくれるように頼んだのだが、忙しくなったのか全然来なかった。仕方がないので空いているテーブルから二人分を持ってきた。ここでは過剰なサービスは期待しない方が良い。かえって小さい事で眉間に皺を寄せるよりは笑い飛ばした方が飲茶を楽しめるだろう。
さて、肝心の点心の方だが、フェニックスは蝦餃(海老の入った蒸し餃子)、焼賣(シュウマイ)や山竹牛肉(肉団子)等の定番ものの味が非常にしっかりしている。特に日本人に人気のある、もち米を蓮の葉で巻いた「ちまき」や軟らかいライス製のクレープに包まれた「チョンファン(腸粉)」はお奨め料理だ。フェニックスの牛肉腸粉はゆずの味が効いていて本当に美味。人気商品のこの二つはウカウカしていると食いっぱぐれる事もあるほど。待っても来ない時はウエイターに頼んで持ってきてもらおう。ちまきにも色んな言い方があって、普通は「粽」と書く。他にも糯米鶏/ノウマウガイや珍珠鶏/ジャンジュガイなどとも呼ぶ。持ってきてもらう時は紙に書いてウエイターに指差してもいいし、広東語で「我要珍珠鶏
唔該/ンゴイウ ジャンジュガイ
ムゴイ」と言ってもよいだろう。あと、中国名が分からないのだが、サクサクしたカニ肉と魚肉の海苔巻揚げは海苔の香りが香ばしく、中に入ったカニ肉と魚肉がジューシーで美味しい。
点心の種類 |
腸粉 |
チョンファン |
ライスクレープで色んな材料をくるんでむしたもの |
叉焼包 |
チャーシュウバウ |
チャーシュー入りの肉まん |
春巻 |
チャーシュウバウ |
チャーシュー入りの肉まん |
粉果 |
フォンクオー |
普通は蒸し餃子のこと。揚げてある店もたまにある。 |
鳳爪 |
フォンチャーウ |
鶏の爪先を煮た物 |
蝦餃 |
ハーガウ |
点心の王様。エビ入り蒸し餃子 |
鮮竹巻 |
インジュッギュン |
肉とたけのこの湯葉巻き |
山竹牛肉 |
サーンジュッガウヨッ |
牛肉団子(皮には包まれていないタイプ) |
焼賣 |
シウマイ |
しゅうまい |
煎韮菜 |
ジンガウチョイ |
ニラまんじゅう |
排骨 |
パイコー |
あっさりした中華スペアリブ |
牛柏葉 |
ガウパーイッ |
牛の胃を蒸してチリソースなどをかけたもの |
茘芋角 |
ライウゴッ |
タロイモのコロッケ風 |
蘿蔔米羊 |
ローバッゴウ |
大根のお餅 |
煎腸粉 |
チンチョンファン |
腸粉/チョンファンを炒めたもの |
とにかくフェニックスの飲茶は間違いがない。2人で行っても10人で行っても、満腹になって帰る時には必ず満足しているだろう。料金も非常に良心的である。今回は触れなかったが、デザートもマンゴープリンやカスタードタルトなど一般的なものは一通り揃っている。つまり大衆受けする味と品揃えがフェニックスの特徴だ。その分高級素材を使った驚くような点心や通好みの一見グロテスクな逸品に遭遇する事もない。噂によるとフェニックスのディナー・メニューはなかなか品揃えも良くて飲茶とは違った魅力があるという事なので、またディナーも行ってみなくてはならない。いずれにせよ、我々の今後の課題はシカゴにてフェニックスを越える飲茶を食わせる店を探す事にあると言えそうだ。
フェニックスのディナーメニュー
参考文献:地球の歩き方(香港)、Cantonese
Phrase Book、「タムタムのアメリカ中華料理情報」
営業時間:
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ランチ:
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飲茶(Dim Sum):
8:00am-3:00p.m. |
ディナー:
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3:00pm-10:30 |
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定休日: |
なし |
ドレスコード: |
特になし |
駐車場: |
割引駐車場あり |
予約: |
特に必要なし |